59.正義の味方 アナザー5 月超えし、月
-川島宅-
『南君!情報が入ってきたわ!
明日、黒陽が動く。
場所は、兵庫県 神戸市 南京街。』
川島が興奮した声で告げる。
『マジか!ついにだな。』
南は、右手で拳を作り、左手に打ち付ける。
『明日は、私の車で神戸市まで移動。
その後、南君は月影で、出撃。
OK?』
『合点承知!フルボッコにしてやるぜ!!』
-南京街-
人の悲鳴が聞こえる。
無抵抗な人々を黒い人型が無慈悲に蹂躙していく。
『てめぇらが、”黒陽”か?』
南は、パーカーを目深にかぶり黒い人型に尋ねる。
『何者だ、貴様?』
黒陽のグループが、南を取り囲む。
『正義の味方だ!』
南は叫び、右手首のコアユニットを押す。
そして、光に包まれ、月影が現れる。
『なっ!何者だ!』
黒陽達が動揺し、陣形を崩す。
『もう一度だけ言うぜ、正義の味方だ!
行くぞ!』
月影は、地を蹴り、黒陽達に飛びかかる。
黒陽は、右手を月影に向け、その手から銃のような物を出し攻撃してくる。
『ガッガガッガガ!!!』
数十発の銃弾が月影を襲うが、月影の装甲はビクともしない。
『貧弱、貧弱ぅ!!』
月影は、一体目の黒陽を飛び膝蹴りで吹き飛ばす。
黒陽は体をエビ反りさせ、壁に頭から刺さった。
問題ない!つーか、弱い!全然、楽勝!
『二体目ぇ!』
体を捻り、回し蹴りで次の黒陽を弾く。
次は、地面に土下座の格好で沈黙させる。
ほとんど、街のチンピラと変わらんw。
仲間の敗北に恐れをなし、黒陽達が後ずさる。
『一人たりとも逃がさん!』
手を合わせ、指を鳴らしながら月影は、一歩づつ、歩を進める。
数体の黒陽を稼動不能にした後…
『やれやれ、やはり来たか…
あまり、非科学的な”勘”という物は信じない方なのだが…
嫌な予感は当たるものだ。』
ため息をつきながら、
月影の前に白衣の女が立ちはだかる。
黒髪のショート、年は、30ぐらい…か?
女性にしては、素っ気無くて、野暮ったい。
更に、はっきり言ってダサいメガネをしている。
男物のメガネじゃないのか、アレ。
『あんた、誰だ?
女を殴るのは…遠慮したいんのだが…』
首をコキコキ鳴らしながら、月影は次の黒陽を探しに向かう。
『”月影”は破壊したつもりだったが…
芳子が、コピーを持っていたのか?
いや、量産するような性格ではないな。
教えてもらえるかな?
どうやってそれを手に入れたのか。』
芳子…?
川島の事か…。こいつ、黒連の関係者か。
でもなぁ、女に手を上げるのは…
『もう一度、言うが…
女を殴るのは趣味じゃない。
邪魔しないで欲しいんだが…』
『残念ながら、君はここで削除させてもらう。
転送。』
女が静かに告げると、光に包まれ、光の後に出てきたのは、黒い…月影!?
黒いボディに真紅のライン、目の部分が赤く発光している。
黒い月影は、ゆっくりと近づいてくる。
『なっなぁっ!ど、どういう事だ?』
驚きの余り、月影は、一歩後ずさる。
『見ての通り、これが事実。
私はあなたの上位互換。
全てに置いて、あなたを上回りし者。』
黒陽だけじゃないのかよ。なんだコイツは…
『ガッ!』
アスファルトを削り、黒い月影が突進してくる。
『チィッ!』
大きく舌打ちし、月影は、迎撃に右ストレートを繰り出す。
直撃コース!
南が、確信した、次の瞬間!
黒い月影は、姿を消した。
月影の拳が空を切る。
『ど、どこだ…』
辺りを見回す月影に上から衝撃が襲う。
『ぐぅ!』
『反応速度、想定内。』
月影の上から覆いかぶさり、黒い月影は、抑揚のない機械音声を発生する。
『にゃろぉ~。女だと思って手加減したら…』
『世の中ではそれを負け惜しみというのよ。坊や。』
『おらぁッ!!』
月影は、力任せにまわし蹴りを放つ。
『残念。』
後ろに大きく飛び、黒い月影が笑う。
『こっからだ。”アクセル・ライダー”!!』
回し蹴りの後、地面を蹴り、月影が距離を一瞬で縮める。
『!!!』
『もらったぁっ!』
月影の左ボディブローが黒い月影の脇腹を直撃する!
と、思われたが、寸前で受け止められている。
『この程度?』
『こ、この野郎…』
月影は、左手に力を込めるがビクともしない。
『ぐぐぐ…』
『どうしたの?もう少し出力を上げてみなさいな。
以前、見た時よりも劣化しているわよ。』
黒い月影が、見下し切った口調で話す。
『オラァッ!』
月影は、左手と対角に当たる右ハイキックで黒い月影を迎撃する。
『スロリィw』
黒い月影は、月影の左手を掴み、合気道のような動きで月影を地面に叩きつける。
『ぐぅっ!!!』
アスファルトに顔面から突っ込み、月影は空気をこぼす。
なんなんだ?”アクセル・ライダー”で加速してんのに…
黒陽は量産機じゃなかったのか?
この差はなんだ?
生身では、女。僕が負けるはずがない。
体格だって負けてなかった。
なんでだよ?
左腕が極められており、動けない。
なんだよ、こいつ!
『もう終わり?それでは、コアユニットごと壊してあげましょう。
切開♪』
黒い月影が右手を捻ると、その手は大きく二つに分かれ、中から大きな刃状の物が出てくる。
ガリガリと嫌な音を立て、黒い月影の刃が震え始める。
これは…チェーンソーか!!
『くそっ、くそっ!』
月影は、なんとか脱出を試みるも動けない。
『ふ、無駄なあがきを。』
黒い月影が鼻で笑う。
やばい、なんとかしないと。
やばい、チェーンソーが来る。
やばい、やばい、やばい。
どうする?
!!
一か八か!
月影は、右手を捻り、自らの手首を地面に叩きつける。
その瞬間、光に包まれ、月影は南に、変身が解除される。
『はぁっ?』
黒い月影にとっても、南の行動は想定外だったのだろう。
月影の変身が解除され、サイズが一回り小さくなり、極めていた腕が外れる。
『次は、倒す!』
南は、捨て台詞を吐き、近くの河川に飛び込んだ。
『川島少佐、無事ですか?』
一体の黒陽が近づいてくる。
『問題ない。』
『あれは…何者ですか?』
『失敗作さ、ただの時代遅れ(ローグレード)。』
黒い月影は、素っ気なく言い放った。
夜が明ける頃、
『くそっ!くそっ!』
南は、河川を南下し、神戸港に流れ着く。
なんなんだ、アイツは?
くそっ!腕が痛ぇ。
完全に右腕がいった。
河川に飛び込んだ時か、左足も負傷している。
血が出ていない為、切り傷ではないが、ろくに歩けない。
ひねったか?
『くそっ!くそっ!!』
川島の位置まで戻れそうにない。
しまった!川島の携帯番号が分からん。
ここまで、呼べない。
悉く、ボロボロだ。
畜生、こんなはずじゃあ…黒陽は倒せたのに…アイツはなんなんだ?
南は、ジーンズのポケットに手を入れ、スマホを取り出す。
一応、スマホは生きてる…
仕方ない。アイツに頼むか。
『ピピピピ…』
出ろよ~、頼むぜ。
『……はい、もしもし?柊ですけど…』
『悪りぃ、柊、南だ。助けてくれ!』
『ん?こんな時間に…どういう事だ?どこにいる?ほえっ?』
柊は、寝起きなのか、少々、頼りがない。
けど、コイツしか今は頼れん。
『神戸市、多分。港っぽい。動けねぇ。スマホのGPSで探査してくれ。』
『んん?……分かった。人には言えんから、僕一人で行こう。
スマホの電源は、切るなよ。』
『あぁ、スマン。頼む。』
『身を隠してろ。』
なんだかんだ言って、アイツは悪いヤツじゃないな。
いや…きっといいヤツなんだろう。
一息つき、南は、物陰に移動して座り込む。
うわぁ~、どっと疲れが来た。
あの黒い月影モドキ…ほんと、馬鹿げた強さだったな。
川島に言って、月影を更に強化してもらわんと…




