表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/108

58.悪の手先 アナザー13 sister's noise

-とある建物-

 

 カッカッカッ、静かな廊下にヒールの音が響く。


 『川島少佐!あなたが自ら出向かれなくても。』


 軍服の男が白衣の女性に声をかける。


 『自分の作品の成果は、自分の目で確認したい。』


 軍服の上に白衣を着た女が答える。


 (万が一、”芳子”の邪魔が入る事も考慮するとな…


  量産品では、心もとない。


  私の”真・黒陽”で迎え撃つ。)


 『明日は、記念すべき日になる。


  日本国 国防陸軍 特殊機工 第八小隊 出撃!


  目標、南京街!


  敵を駆逐しろ!!』 




-南京街 深夜-


 黒い影が南京街を縦横無尽に走り抜ける。


 油圧制御なのか、プシュッ、プシュッという音、


 チュイーンというモータの駆動音、


 銃撃音と共に。


 深夜の南京街が赤く染まり、悲鳴が響く。


 『マズイ。一手遅れたか!』




 『翁、早く!』


 春風が月の手を引き、叫ぶ。


 『お前らは先に行け。ここはワシが食い止める。』


 『敵が多すぎるよ。翁、一人じゃ…』


 『行け!お主らがおるとワシの”力”が出せん。』


 『怪我してる。無理だよ。』


 『行けっ!!月まで巻き込むつもりか!』


 翁は、腹部を手で押さえ、春風を叱る。


 『翁…!!』


 春風の声は、爆撃の音で遮られる。


 黒い塊が3つ、屋根を突き破り、翁達の前に降り立つ。


 黒い、大きな人型。


 『最優先目標、確認。排除、開始。』


 『フォーメーション、デルタへ移行。』


 感情が見られない機械音声が響く。


 『行けぇっ!』


 翁の怒声で春風は月をつれて店を出る。


 『目撃者、排除。』


 走る春風に向けて、黒い塊が腕を向ける。


 チュイーンというモーター音とともにその腕に銃が出現する。


 『ゴンッ!』


 春風を狙撃しようとした黒い人型を翁が蹴り飛ばす。


 『貴様らの相手はこのワシじゃて。』


 ちっ、硬い。金属…なにかの合金か。


 翁は、小さく舌打ちする。




 『ガガガッ!』


 『+*>++*#~!!!!』


 店を出て、月の手を引いて走るが、どこに向かえばいいか分からない。


 銃撃と悲鳴が重なる自分の街で、


 春風はパニックになりそうな頭を必死で立て直す。


 『春…』


 『大丈夫。必ず、逃げれる。』


 月の手を強く握る。


 通り慣れた道なのに、小さな街なのに。


 どこへ行けばいいか分からない。


 知ってるはずの道が無残に変わっていく。


 知ってるはずの人が居らず、黒い塊が跋扈する。


 『そこまでだな。チャイニーズ。』


 機械音声とともに春風の前に黒い塊が下りてくる。


 大きい、さっきよりも大きいタイプだ。


 勝てない。自分では勝てない。


 春風が手を出すその前に本能が敗北を知らす。


 足が震える。体が言う事を聞かない。


 月を握る、その手すら震えてしまう。


 瓦礫を砕きながら、更に黒い塊が出てくる。


 2、3…4。


 増える塊が春風の心を絶望で砕いていく。


 『月、走って!早く!』


 春風は、月を奥に突き飛ばし、黒い人型に対峙する。


 『泣けるなぁ、姉妹愛か。』


 『このスーツじゃなきゃ、お楽しみできるんだが。』


 『ははは。あんまり怖がらせるな。震えてるぞ。』


 『やめろ、任務に集中しろ。』


 春風は、震える心と体を覚悟で固める。


 月の逃げる時間を稼ぐ。


 1分でも、1秒でも。


 構える春風に向け、黒い人型がその腕を向ける。


 チュイーンという嫌な音ともに見た事のある銃のような武器が春風を睨む。


 『ガガガッ!!!』



  

 『”シルキー・ハート”!』


 白い雪のような壁が出現、路地を完全に塞ぎ、銃弾、黒い塊と春風を分かつ。


 『!!!』


 『何だ、コレは?大尉、データにないぞ!』


 『ガガッガガガガッ!』


 黒い塊の一人が壁に向かい、発砲するが壁はビクともしない。


 『不注意に触れるな!距離を取れ!!』


 黒い塊達が白い壁から離れる。


 『???』


 春風は、何もできず、その場に立ち尽くす。


 『大丈夫か?』


 後ろから聞いた声がして、春風は振り返る。


 『……カド?』


 『お待たせ。』


 門脇が月をおぶった状態で立っている。


 春風は、走って近づいていく。


 『大丈夫じゃない!心配した!大変!すごく!』


 春風が顔を真っ赤にして抗議する。


 『すまん、悪い、ごめんな。色々あってな。』


 門脇が春風の頭を優しくなでる。


 『いない……困る……』


 春風は、門脇の胸に顔を埋める。


 『翁が…』


 『僕が行く。


  もう大丈夫だ。この道の先にレガシィを置いてある。


  色は、シルバーだ。前と同じ車だ。分かるね?


  僕が翁を連れてくるまで、月とトランクで待っててくれ。』


 門脇は、来た道を指差し、春風にレガシィの鍵を渡す。


 『分かった。でも、カド…』


 『必ず、帰ってくる。迎えにいく!


  イイ子にしててくれ。』


 春風の、おでこに軽くキスをして、門脇は白い壁に通り抜け、走る。




 『貴様、何者だ?』


 ”黒陽”達が門脇に対峙し、腕に仕込まれた銃を構える。


 『悪いが、女を待たせていてね。


  答えてる暇はねぇんだよ!』


 門脇は、黒陽達に目もくれず、突進する。


 『ガガガッ!!』


 黒陽達が発砲するが、


 『”プレパ・レイド”!!』


 淡い紅色の壁が苦もなく、銃撃の進行を止める。


 『貴様、術者か!』


 門脇は、戸惑う黒陽の懐にもぐり叫ぶ。


 『”衝動”』


 空気の炸裂音、そして、吹き飛ばされる黒い塊。


 『!!!』


 『撤退しろ、一時撤退だ。』


 黒陽達は、仲間が瞬殺されたのを見て、即座に撤退する。


 『ヒュー、ホントに若返ってんだな。』


 門脇は、左手でスマホをいじり、吹き飛ばした黒陽を見て笑う。




 『なかなかしぶとい。』


 『金属の人形風情にくれてやる程、安い命ではないのでな。』


 血まみれの体をなんとか壁に預け、翁は毒づく。


 『敵ながら、見事、そして、さよならだ。』


 黒陽達が、その腕を翁に向ける。


 『一斉射…』


 『少佐!なにかの煙が!!電波障害も……ガッ!』


 白い煙が黒陽達と翁を包み始める。


 『!!!!』


 『少佐!何か白い塊が飛んでいます。蜂!?何だ!これは!!』


 『チッ!目標を囲みつつ、距離を取れ!』


 ゆっくりと身を引く黒陽は反対に、身を低くし、翁に近づく者がいる。


 『合金蜂(ハイガネバチ) 行けぇ!』


 『少佐!何者かがッ!』


 音声は途中で途切れ、破砕音が響く。


 『少…佐!!指示……誰か…ガン!』


 『撤退!!中距離より爆撃する!』


 モータ音を残し、黒陽達は、翁に背を向け、その場を後にする。


 『翁、大丈夫か?』


 『貴様、生きていたのか?』


 『詳しくは後で、撤退だ。』


 吹き飛ばした黒陽を足蹴にして、門脇が翁に囁く。


 『そういう訳にはいかん。我々は、マフィアで、私は、長だ。


  この街と共に生き、この街と共に死ぬ。』


 満身創痍だというのに、翁は拒む。


 『もう十分、責務は果たしただろ?


  アンタには恩もある、義理もある。…敬意も払う。


  だが、ここは、春風や月の願いを優先する!』


 『子供達は…お前が…頼む。』


 『マフィアなんだろ?


  ”ゴッドファーザー”でも言ってたな。


  ”家族を大事にしないヤツは男じゃない”。


  悪いが、力づくでも連れて行く。


  ”バニラ・ソード”!!』


 門脇が、吼え、自らの周辺に白いつららを出現させる。


 『あのパワードスーツ小隊、プラス僕を相手に喧嘩するか?


  万全ならともかく、今のアンタの、そのケガで?』


 『…腰抜けのひよっこが吼えよるわ。』


 『どうする?時間も限られてる。まだ、春風や月も狙われてる。


  僕達が揉めている場合か?』


 『………逃げ切れるのだな?』


 『”不死身”と”逃げ足の速さ”は僕の専売特許でね。』


 『ふ…ふはは。』


 門脇がウィンクすると、翁は苦笑する。


 『よかろう。』


 『OK、これで少しは治癒できるはずだ。車まで走るぜ。


  あの子達が首を長くして待ってる。』


 門脇が、蜂蜜を固めたようなカプセルを翁に渡す。


 『なんじゃこれは?』


 『回復薬だよ。出所はまた教える。』

 

 『貸し…という事にしておこう。』


 『気にすんな。あんたの娘にゃ、世話になってる。』


 『手を出した以上、当然、責任は取ってもらうぞ。


  浮気は許さん。勝手に死ぬことも許さん。


  今後、”死んだフリ”も許さん。』


 『おい、目が怖えぇよ。』 


 『父親なのでな。』


 『さっき、親権を放棄したろ!』


 門脇が、ツッこむ。


 黒陽の気配、銃撃音を避け、二人は走る。


 密告がうまくいっていれば…もう一人、”助っ人”が来ているはずだが。




 『ここだ。後部座席に!身を低く!』


 ダンボールとゴミでカモフラージュしたレガシイに門脇と翁が乗り込む。


 『娘達は?』


 後部座席に座り、翁が尋ねる。


 『トランク!まだ、出せない。


  真ん中の席がトランクスルーになってる。


  そこから確認してくれ。』


 レガシイのエンジンをかけ、門脇が矢継ぎ早に話す。


 翁が、少し、真ん中の席を開くと中に春風と月が丸まっていた。


 顔に疲れが見えるが、翁の顔を見ると二人とも笑った。


 『やれやれ。日本人は、女の扱い方も知らんのか?』


 翁は、ほっとして、門脇に皮肉を言う。


 『命、救ったんだ。ほんの少しぐらい我慢してくれ。


  ケガも大丈夫だ。』


 門脇は、目立たぬ様、ゆっくりと車を出し、南京街から離れていく。


 『これからどこへ?』


 『まずは、僕の隠れ家。


  滋賀県の北部にある。


  田舎だから見つからんだろうし、追っ手が来たらすぐ分かる。』


 『あやつらは何者だ?』


 『通称、”黒陽”。


  黒連が開発した対陰陽師の兵器、パワードスーツだな。


  悪いが、詳細までは現時点で不明。』


 『黒連か…』


 翁が顎に手をやり、考える。


 『恐らく、開発は黒連だが、実行部隊は軍の人間だろうな。


  さっきの戦闘で、何人かが”大尉”やら、”少佐”やら言ってたからな。


  更に”あんた”を不意打ちできたつー事は…』


 『……身内に恥さらしがいるようだな。』


 翁が、顔をしかめる。


 『多分な。』


 『身内が裏切り、赤の他人。


  しかも、日本人に助けられるとは…時代が変わったな。』


 『昔の事情は知らんが、


  僕はアフターサービス万全のナイスガイよ。』


 門脇は、左手の親指を立てる。


 翁は、自分のポケットを探り、何かを探す。


 『煙草、あるか?』


 『悪いが、禁煙車でね。』


 『飲み物は?』


 『僕の飲みかけのコーヒーでよければ。』


 『サービスが悪いぞ。』


 『………』


 『『ふははっははははは!』』


 神戸を抜けたレガシィの車の中で男達の笑い声が響く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ