45.正義の味方 その十四 ALONE
-車中-
今日は、白鞘の任務だ。
一本だたらという妖怪の退治が目的らしい。
いつものメンバー、新堂、平田、宇梶、僕の4人で出撃している。
今まで通りに目的地まで車で移動している。
だけど、僕は、落ち着かない。
先日の電話の声が頭から離れないからだ。
”『僕はね……君の前任者だよ。
まぁ、正確には、前々任者かもしれないし、もっと前かもしれない。』”
”『警告だ。君の事は、もう白鞘にバレてる。そして、黒連もそれに気付いている。
早めのトンズラを勧めるよ。』”
”『シンパシーだよ。同じ境遇で同じ結末を辿ろうとしている。
直接は無理でも”トカゲのしっぽ”になるのはやめさせたい。』”
ずっと、頭の中をぐるぐると回り続ける。
本当にバレテいるのか。
新堂も平田も宇梶も、もう知っているのか?
なんで今まで通りに接してくるんだ?
これは、本当に白鞘の作戦なのか?
もしかして、このまま、どこかに拉致されて、拷問されるんじゃないか?
いつもなら、このミニバンの最後尾、3列目に座るのだが、今日は、2列目。
助手席に新堂。僕の右には宇梶がいる。左に平田がいる。
なぜ、わざわざ、2列目に3人も座る…。
連行されている気分だ。
心なしか、作戦の指示もおざなりだった気がする。
僕が集中して聞いてなかったからか…。
もう、ダメなのか…
僕は、こぶしを強く握る。
『柊?あんた、大丈夫か?』
平田の声で我に返る。
『ん?あぁ、大丈夫、普通、いつも通り。』
『顔色悪いで。』
平田が顔を覗き込んでくる。
僕は、つい目を逸らす。
『無理でしたら、作戦…延期しましょうか。
柊君抜きというのは苦しいですし。』
新堂も心配してくれているのだろうか。
『ホント、大丈夫ですって。作戦前の集中です。
あと、新装備がまだしっくりこないんで。』
僕は、右手の”赤銅の篭手”をさすりながらとっさに嘘をつく。
『なら外しとく?柊君の術が不発では困るし。』
宇梶も僕を気遣ってくれる。のか?
芝居じゃない…よな。
大丈夫、まだ、バレテない。
ばれてない…、引き際を考えるのはまだ先だ。
”『嘘つき坊や(ライヤー)。』”
また、あの男の声が頭をかすめたが、僕は強引に振り払った。
-とある 廃棄されたゴルフ場-
『ゴルフ場、結構大きいですよね。目標見つけられますかね?』
僕は、まわりを双眼鏡で見渡しながら新堂に話しかける。
『そうなんで、私と陽子、あみと柊君でまずは探索。
見つけ次第合流、戦闘としましょう。深追い、単独行動厳禁です。』
『『『了解。』』』
『ほんまは、何かあったやろ?』
平田が話し掛けてくる。
『何もないって。』
『柊、嘘下手やねん。顔に出取るよ。
”心配な事があります。僕、戦えません”って。』
『んな、馬鹿な。』
ワルサーを構え、辺りを伺いながら僕は答える。
『エミと陽子には内緒にしとくで。お姉さんに話してご覧。』
『いつからお姉さんになったんだ!
プライベートだ。そっとしておいてくれ。』
『隠し事がある事は否定せんね。』
平田が意地悪く笑う。
しまった。つい、ボロが出た。
『頼むから、探らんでくれ。任務に支障が出るだろ。』
『あんたがうろたえてる時点で任務に支障は出とる。』
平田が僕の肩を掴み、真面目な顔で僕を見る。
話せる訳がない。
理解してもらえる訳がない。
許してもらえる訳がない。
話した先は、侮蔑と決裂だ。
僕は、下向き、少し考え、呟く。
『白鞘と直接関係ないんだ…』
『ええよ、聞いたる。』
『他には…』
『言わん。』
『…………』
どうしても、一言目が話せない。
嘘をつくのには慣れているはずなのに。
平田の顔が…目が見れない。
『あんたがそんな状態やと背中、預けられん。
柊、あんたが思っている以上に、あんたはうちのチームの要や。
もっと、言うたる。わたしやエミ、陽子の代わりは効く。
けど、あんたの代わりは効かん。』
『そういう言い方はやめてくれ!』
僕の肩を掴む、平田の手を払う。
『事実や。治療かてあんたしかできんやろ。
頼りない先輩達ですまんね。
あんたの怪我や死が、うちらチームの全滅と同義やで。』
『…それは…』
反論できない。
もう話すしかないのか…、いや、話す訳にはいかない。
最悪、新堂、平田、宇梶、御門野にまで迷惑をかける。
でも…どうしたら…
『…そんなにうち、信用できん?』
『そうじゃない!』
僕は、声を上げて否定する。
『…そうじゃないんだ…』
僕は、下を向いたまま、話すことができないでいる。
『撤退やね。あかんよ。これじゃあ。』
平田は、スマホで新堂に連絡を取る。
『エミ、今回は、戻ろう。柊がテンパったままや。』
『………』
『戻るで。』
平田は、僕の手を握り、来た道を戻る。
僕は、その手を振りほどく事すらできなかった。
白鞘のマンションからの帰路、僕は、泣いた。
惨めで、情けなくて、怖くて泣いた。
誰かに助けてほしくて、誰にも話せないで。
誰も信用できなくて、誰にも信用されなくて。
世界でたった一人。
雷が使えても…無敵の盾を手に入れても…
僕は一人だ。




