37.悪の手先 アナザー5 門脇の憂鬱
-兵庫県 神戸市-
『ヤバイ、マズイ、ひっじょーにマズイ。』
門脇は、秘密裏に調査させた報告書をテーブルに投げ、頭を掻く。
甥の”濵口”に力を授け、開花させたまではいい。
問題は、その後だ。明らかにやりすぎだ。
力に酔ってる、魅入られている。暴走ってレベルじゃない。
確定している”だけ”で20人は殺している。
この間に会った時は、成長レベルが予想をはるかに凌駕している事に喜んだ。
が、ここまでは、マズイ。
しかも、白鞘、黒連、おかまいなし。無差別に殺しまくってる。
一応、公共の情報、新聞、ネット等では、”神隠し”となっているが、
バレるのは時間の問題だ。
更に追い討ちをかけるのが、”中国人”も殺してしまっている。
近いうちに”翁”の耳に入る。いや、もう入っているかもしれん。
そして、一番マズイのが、”もう、僕の手に負えないレベル”に
達している可能性がある事だ。
どうする?
どうしようもないな、ははは。
マズイ……マズイ。
これに比べれば、親父の借金、持病の鬱病が霞む。
つーか、鬱病は、悪化しとる。
寝れん。
睡眠薬使って、眠れないってどーよ。
ぐぁー、頭痛が酷い。下痢も止まらない。
体重が50kg切った…
今更、やめろと言ったところで濵口が聞く耳を持つはずがない。
うぁー。
門脇は、リビングを忙しなく歩き回りながら、頭を掻きむしる。
いかん、いかん。お薬、お薬。
安定剤、抗鬱剤を麦茶で流し込む。
ふぅー。どうする?
主犯が僕なのがバレたら…マズイ。
濵口は、証拠を消したつもりでいるが、残るもんは残るんだ。
既に黒連内では面が割れている。容疑者候補のようだが…
討伐隊なるものも編成されているようだ。
普通に倒されてくれればBestだが…
下手に捕まって、いろいろゲロされると…マズイ。
どうする?
1.遠藤と僕で濵口を暗殺する。
2.黒連の討伐隊に暗殺させる。
3.”翁”に素直に泣きを入れて助けてもらう。
4.海外にトンズラ。
僕が一番期待するのは、2だが、現実的には、1か4だな。
よし、1を実行してみて、無理だったら4だ!
やるしかない、もう、やるしかなし!
やる以上、黒連の介入が入る前にやる。偶然を装い殺す!
そんで、黒連の地位と中国人の信用度upを狙う。
ピンチをチャンスにだ。
結構な綱渡りだが…自分のケツは自分で拭かねば。
ここまで酷くなるとは思わなんだ。
もぉー、なんなんだ。
手近な馬鹿をまず、濵口に仕掛けよう。
現在の実力とどんな能力を持っているか確認せんと。
”赤マント”だけって事は、まず有り得ないしな。
まさか、”プレパ・レイド”を破られるとは思わないが念には念をだ。
最悪、遠藤ごと吹き飛ばす!
決めた!
我が甥っ子ながら、ゆとり世代がここまで手が付けなくなるとは…
南無三。
くそぉー、普通にサラリーマンになれば良かった。
あのクソ親父のせいだ。
いかん、いかん。
過去を振り返るな、現実を見るんだ。
『ピピピピ』
携帯が鳴り、門脇は、画面を恐る恐る見る。
光田だ。
良かった。”翁”や”春風”だったら居留守使わんと…
『はい、門脇です。』
『お疲れ、光田だ。今いいか?』
『どうぞ。』
『既に知っているかもしれんが、香川県の暴走している能力者の件だ。』
ぎくっ!
門脇の背中に脂汗が吹き出る。
まさか、もう黒連は動いたのか?
『あ、あぁ、何か、討伐隊を編成するとかなんとか聞きましたね。』
『黒連の一大プロジェクトでな。
”黒陽計画”というものがある。
俺も詳細は知らないが。それの試験台にするそうだ。
来週の週末に実行予定。巻き込まれたくなかったら香川県には行くな。
との通達だ。』
『来週ですね?』
門脇は、念を押す。
『あぁ、来週だ。以上だ。』
そこで光田の電話は切れた。
早い!予想以上に動きが早い!
何だよ”黒陽計画”って?
香川に立ち入るなって、どんだけ兵力注ぎ込む気だよ。
もう、後がない。ゆうちょな事、やっとられん。
今週、暗殺決行だ。




