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36.悪の手先 アナザー4 Be My Friend

-岐阜県 とある山中-


『私、キレイ?』


 赤いコートを羽織った女が話し掛けてくる。


 さて、どー答えたものかな。

 

 『えぇ、キレイですよ。』


 濵口は、ポケットに手を入れたまま、笑って答える。


 『これでも?』


 女は、マスクを外す。


 噂通り、耳まで口が裂けている。


 だが、口の作りは、一般人と変わらない。


 特に歯が多いというわけでもない。顔の皮膚が裂けているだけだ。


 少々、筋繊維らしきものが飛び出てグロテスクだが。


 まぁ、これまで僕が襲い、殺した人間に比べればかわいいものだ。


 全く動揺しない濵口を見て、”口裂け女”が一歩、身を引く。


 『お前、ただの人間じゃないな。』


 『気付くのが、ちっと遅すぎたな。』


 濵口は鼻で笑い、ゆっくりとポケットから両手を出す。


 『百鬼夜行テラーテイル 首なしライダー。』


 左手がどす黒く光り、奇妙な形をしたリールのような物が出現する。


 『おとなしく”力”を貸すならば、その顔がこれ以上裂ける事もないぜ。』


 笑って濵口は、”口裂け女”に近づく。


 ”口裂け女”は、力の差を察したようだ。


 マスクを付け直し、うつむく。


 『君!何をしてる!?』


 ん?誰だ?


 警察か。しかも、田舎だからか、白いチャリンコだ、ウケル。


 『助けて下さい。この人がイキナリ!』


 ”口裂け女”が叫ぶ。

 

 おいおい、妖怪が一般人に頼るなよ。


 濵口は、ため息をつく。


 面倒だ。他に人影はない。


 濵口は、無言で左手を振る。


 空気が裂ける音、肉が裂ける音に続き、何かが落ちた音がする。


 『さて、返答はいかに?』


 ”首なしライダー”のワイヤーについた血をハンカチで拭い、


 それを投げ捨て濵口は笑う。


 『そ、そんなに強いなら、わ、私なんか…』


 ”口裂け女”が震えながら答える。


 『違う、違う。強いか?弱いかじゃない。


  僕に従うか否か、この二択だよ。』


 ゆっくりと子供をあやすよう、”口裂け女”に濵口は語りかける。 


 ”口裂け女”は、無言でひざまずき、左手を地面につける。


 『そうそう、女は、素直なのが一番だよ。』


 ゆっくりと濵口は、”口裂け女”に近づき、左手を踏む。


 その時!!


 ”口裂け女”は隠していた鋏で濵口の腹部をつき刺す。


 『ガチン!』


 鈍い音が鳴る。


 『残念、その程度は読んでる。』


 濵口は、服をめくりその下の耐刃ベストを見せる。


 『”首なしライダー”!』


 濵口の声に呼応し、ワイヤーが”口裂け女”を縛る。


 『ぐぐぐぐ。』


 『いいね。女のそういう目は、ソソられる。


  カタシハヤ、エカセニクリニ、タメルサケ、テエヒ、アシエヒ、ワレシコニケリ。』


 ”口裂け女”は、灰になり風に流されて行く。


 『相変わらず、僕は女運がない。』


 自嘲気味に笑う。


 『あんたが死んだ時は、千切ってやる!体中ね!


  簡単に死なせるものか!!』


 自らの左手から呪詛の声が聞こえる。


 『はいはい。分かった、分かった。それまでは”力”を貸して下さいね。


  百鬼夜行テラーテイル 口裂け女。』


 左手がどす黒く光り、リールに変わり、大きな鋏が出てくる。


 刃渡りが30cm以上ある、重量感もなかなかの物だ。


 『刃物系は、初だな。』


 濵口は、まじまじと鋏を見つめる。


 そして、警官に…警官だった物に近づき、鋏を突き立てる。


 『よっ!』


 いとも簡単に鋏は肉を貫いた。 


 『切れ味もよし!』




 百鬼夜行テラーテイルを赤マントに切り換え、警官の後始末をし、


 濵口は、来た道を戻る。


 派手な赤いバイクが止まっている。


 RX-7が修理中の為、購入したドゥカティ 999。


 血のような真紅、妖怪を思わせる顔付き、RX-7とはまた違った快音。


 一目で気に入り購入した。無免なのは、ご愛嬌だが。


 鼻歌を口ずさみ、キーをひねる。


 『な、バイクもいいもんだろ?だんな。』


 左手の”首なしライダー”が陽気に話し掛けてくる。


 『悪くないね。ハマリそうだわ。』


 『私もこの色は気に入っております。』


 ”赤マント”も乗ってくる。


 『いや~、俺もカワサキ派だったんだけど、ドゥカティもいい!


  だんな~、帰りは、”俺”を発現させながら走ってくれない?


  久々に走りてぇ~よ。いいだろ?』


 『もう少し、陽が落ちてからね。』


 ヘルメットを被り、濵口は答えた。




 陽も落ち、順調に飛ばしていると、尾行されている事に気付いた。


 『ん?誰だ?』


 サイドミラーで確認する。


 クラウン…じゃない。覆面じゃないな。


 SUVだ。VWのトゥアレグか…旧型だな。


 百鬼夜行テラーテイルを覚えてからか、視力が上がってきた。


 思わぬ副作用だ。まぁ、そりゃ、いいとして。 


 という事は、門脇さんの言っていた白鞘か…黒連か…


 まぁ、いい。


 気分も調子も悪くない。


 陰陽士様の実力とやらを見せてもらおう。


 次のサービスエリア 土山で誘ってみるか… 




-土山サービスエリア-


 中々、大きなサービスエリアだが、平日のせいか


 客はまばらだ。予想通り、トゥアレグも入ってきた。


 駐車場にバイクを止め、サービスエリア内のコンビニに足早に入る。


 車から降りてきたのは、男が2人、女が1人。


 男の一人が運転手、角刈りのゴツイ男だが、こいつは雑魚っぽいな。 


 もう一人の男は、スキンヘッドにグラサン。


 女は、メガネの小柄な10代か?随分と幼く見える。


 スーツを着ているがミスマッチだ。


 あからさまなのは、スキンヘッドだが…さて、どいつが本命の陰陽士だ?


 まぁ、一人づつ、ヤリますか。


 僕は、雑誌を適当に立ち読みした後、コンビニを出て、トイレに向かう。


 3人ともついてきたな。


 よしよし。


 トイレに人もいねぇ。いいねぇ。ついてる。


 ライダースーツの脇に門脇さんからもらった銃、


 グロックを隠し、小便をする振りをする。


 角刈りの男が、僕の左手側に2つあけて、小便をし始める。


 絶好の距離。


 僕は、引き金を絞る。


 『パァン!パァン!パァン!』


 ライダースーツの上から、連射する。


 2発当たり、運転手は崩れ落ちる。


 初めて撃ったが、結構、でかい音するな。


 発砲音に気付き、スキンヘッドが入って来る!


 僕は、反転し、個室の影に身を隠す。


 『おい、大丈夫か、くそっ、血が止まらない。すぐ、本部に…』


 あれ?結構、手間取ってらっしゃる。

 

 もしかして、コイツも雑魚?


 『百鬼夜行テラーテイル 赤マント。』


 スキンヘッドと角刈りの2人を後ろから一気に包む。


 『な、なんだ、これは?う、うわうわぁ。ゴリィ!ベキィ!』


 数秒、抵抗したが、すぐに静かになる。 


 あっけない。


 周りに人もなし。見られてもいない。 

 

 僕は、少々、拍子抜けしながら個室を出る。


 尾行されたと思ったが、僕の勘違いか?


 『和久田さん?竹中さん?大丈夫ですか?』


 トイレの外から女の声がする。


 あの女かな。ついでだ、こいつも消してしまうか。

 

 『すまん、撃たれた。来てくれ!』


 適当に声をごまかして話す。


 『大丈夫ですか!』


 カツカツと靴音を立て、無防備に僕の前を通り過ぎる。 


 阿呆が!


 『百鬼夜行テラーテイル 口裂け女。』


 鋏で後ろから串刺しにしてやる。


 力を込めた僕の一突きは、女に当たる。はずだった。


 『ヒュン!』


 一瞬で女と僕との距離が空いた。


 文字通り、一瞬で。


 『な!?』


 『何者ですか。』


 女は、こちらを振り返り、僕を睨みながら話す。


 こっちが聞きたい。なんだ今のは?


 こいつが陰陽士?これが陰陽術なのか? 


 こんな僕より若い女が?陰陽術っつーから、


 もっと、じじいか、ばばあを想像していたんだが…


 『ブン!ガチン!!』


 女は、警棒のような物を取り出し、こちらに構える。


 ヤル気か。いいぜ。やってやる。


 僕も両手で鋏を構える。


 上段から頭、砕いてやる。


 『オラァッ!』


 体重を乗せた僕の一撃が、女の頭を捕らえたと思った瞬間!


 また、さっきの高速移動で右に避けられる。


 『ゴッ!』 


 女の警棒の一撃が脇腹に刺さる。


 『ぐっ。』


 痛ってぇ~。くそっ!


 横に鋏を薙ぎ払うが、これもかわされる。


 なんだそれ!?ブリーチみたいな動きしやがって…


 間合いは、3~4m。


 いかん、不慣れな重量物の鋏では分が悪すぎる。

 

 『和久田さんと竹中さんはどこですか?』


 女は、冷静に問いかけてくる。


 『あ?さっきの男達か?そこの個室で寝てるよ。』


 僕は、女の斜め後ろの個室を指す。


 女がそっちを向いた瞬間!


 『百鬼夜行テラーテイル首なしライダー!』


 ワイヤーを一閃する。


 『ガコッ、ガコン、ガチャン!!』


 いくつかの個室ごと薙いだ。


 が、これもかわしやがった。


 信じられねぇ。


 しかし、女は、左手を力なく垂らし、膝を着く。


 左足元に血溜りができている。


 辛うじて、当たりはしたか。 


 『汚い真似をするのですね。黒連の手先め。』


 恨めしそうに女は僕を睨む。


 ふふふ、やべぇ。


 あんまタイプじゃないけど、勃起してきた。


 最近、抜いてないしな。まぁ、いいか。


 『首なしライダー!!』


 僕の声に呼応し、ワイヤーが女を縛り上げる。


 『この、卑怯者。恥をしれっ、こっ…』


 罵詈雑言を放つ口を押さえ、障害者用の個室に女を引き摺り込む。


 『さてと…』


 僕は、個室の鍵を掛け、ゆっくりとズボンのチャックを降ろす。




 小一時間程、楽しんだ後、


 ”赤マント”で女を始末すると体に異変が起きた。


 左手が痛い。筋肉痛とも違う。なんだこれ。


 一日に4人も喰った事なかったしな。


 やべぇ、なんだ、これ??


 イテェ、なんか出そう。左手、千切れそう。


 『がぁぁぁぁぁっ!』


 ”力”が暴走する。


 けたたましい音とともに、何かが個室のドアを吹き飛ばした。


 左手が赤く変色している。いや、変形か…


 昆虫を思わせる、節くれが僕の指を覆っている。


 その輝きは妖しく、切れ味も鋭そうだ。


 腕にも篭手を思わせる物が装着されている。


 篭手の先からは、赤い繊維状の物が出て、左肩まで覆っている。


 一応、僕の意思通りに動くようだが…


 『どういう事だ?』


 『主が新たなる力を手にしたのですよ。私の主として。』


 僕の疑問に”赤マント”が答える。


 『新たなる力?レベルアップって事?』


 『そう取って頂いて構いません。』


 『そういえば、最初に言ってたね。ふさわしい力を貸すってこういう事か!』


 『えぇ、日頃のご愛顧に感謝を。』


 なんとなく”赤マント”が笑った気がした。


 いいぞ。今日はツイてる。

 

 『ふっ、はははははは。』


 瓦礫まみれのトイレに濵口の高笑いが響いた。

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