35.悪の手先 その十三 No, thank you!
今日は、学校の課外授業で名古屋行きだ。
ところが、僕は、バスが苦手。
吐きそう。
窓際の席で遠くを見てもダメ。
なぜだ、このシートの臭いなのか…。
早く、次の停車場所へ、サービスエリアへ。
出ちゃう、出ちゃう。
バスが止まると、口を両手で押さえダッシュでトイレへ。
『+*?><#$%~!!』
………
いやぁ~、やばかった。
ギリギリだったね。まじで。
『キィン!』
ハンカチで口元を拭う左手が急に痺れる。
何かいる!
何だこの感覚?
こんな昼間から、しかもサービスエリアに妖怪?
グロックがあるから、丸腰ではないが…マズイ。
流石にこんな場所で、多くの学生、客もいる中で…
どこだ?どいつだ?
左手の痺れが増してきた。
近づいてきている?
宇梶か高橋に連絡を…
その時、サービスエリアに一台のバイクが入ってきた。
『ドドドドドド…』
真っ赤なバイクだ。
アレだ。アイツが…間違いない。
バイクはゆっくりと駐車場の端に止まる。
どうする?戦闘になるか?
僕は、ゆっくりと制服の内側にあるグロックに手を伸ばす。
バイクに乗っているライダーも僕に気付いたようだ。
ヘルメットを被ったまま、こちらを見ている。
『柊!早く来い!集合や、バス出るで!!』
林が大声で僕を呼ぶ。
今は、退く…か。
大型のバスが4台。
サービスエリアを出て行く。
赤いバイクのライダーは、それを見送りヘルメットを脱ぐ。
『なるほど。彼が柊君ね。
勘が鋭い。
こんな場所で出会うのはびっくりだが。』
ライダーが笑う。
『主程の”力”の持ち主であれば、妖気はどうしても洩れますからな。』
『人気者はツライな、だんな!』
自らの左手から声が聞こえる。
『この感覚…彼も百鬼夜行という事かな?』
バイクにもたれ、景色を眺めながらライダーはつぶやく。
『恐らくは…』
『門脇さんの情報だと陰陽士だったはずだが…成長した…のかな?』
まぁ、いい。
”口裂け女”を探しに来たが思わぬ収穫があったな。
ライダーは、首を鳴らし、伸びをした。
-自宅-
なんも収穫のない課外授業を終え早めに帰宅する。
隙を見て、例の騎士を高橋に相談したが見た事もないと言われた。
逆に情報収集して連絡しろと余計な注文が入った。
本当に人使いが荒い。
あぁ、もう。
『ヤッホーッ。』
陽気な声でカラスがやって来る。
人の苦労も知らんと…
『なんじゃい?』
『アルバイトのお知らせ!』
『間に合ってます。では、失礼します。』
僕は、カラスに背を向ける。
『ちょっと、冷たくない!』
カラスが嘴で僕の肩をつつく。
『痛い!痛い。本当にもういっぱいいっぱいなんだよ。
これ以上、仕事増やすんじゃねぇ!』
『そこをなんとか、新進気鋭の柊様に!』
『それ、この前も聞いたし、もうマジ無理、なんだっつーの。』
僕は、まとわりつくカラスを手で払う。
『非常事態なの。お願い、助けてプリーズ。』
カラスは、器用に羽を顔の前で合わす。
だが、どことなく余裕があるような気がするのは、なぜだ。
僕の悪意か、被害妄想か。
『聞くだけでも、なんとか~。』
カラスは、僕の肩に乗り離れない。
『聞くだけな!』
僕は、念を押す。
『あのね、抗争。黒連vs白鞘&黒連vs例の中国人グループ。
被害甚大。要治療術者。』
『僕、スパイ。顔広めてどうする。』
僕は、鋭くカラスの額を指でつつく。
『そこは、覆面でオケ。』
『白鞘とダブルブッキングするかもしれんし。
そもそも、体力的に限界なんだって。』
『黒連特製の滋養強壮剤がございます!』
『僕、まだ、15。こんな年からドーピングしたくない。』
『大丈夫!若いんだから!』
『物には、限度がございます!』
『若い内は、買ってでも苦労しなさいよ!』
『なんでお前が、キレてんだよ!普通、僕だろ!キレるのは!』
『いつやるの?今でしょ!!』
『無理でしょ!!』
お互い一歩も譲らない。
『仕方ないじゃない!治療術者ってレアなんだから。
私の知り合いだと柊君しかいないの!
女の子のお願いくらいどんと受け止めなさいよ。』
『どんな理論だ!つーか、お前が女なのも今日初めて知ったわ!』
『あら、そう?自分で言うのもなんだけど、結構、カワイイわよ。』
『女の言う事は信用しない事にしている。』
『もう、いい加減にしなさいよ!時間は、別途指定するわ!』
カラスは、言い放ち飛び立った。
『えっ?』
僕は、その場に呆然と立ち尽くすしかなかった。




