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33.正義の味方 アナザー3 迷走する正義


 『くそっ!なんで僕がこんな目に。


  正義の味方だぞ、なんで。』


 南は、追われていた。


 ”月影”は、解除され、今は変身できない。


 何でこんな事に。


 息を切らせ、商店街を走る。


 くそっ、”月影”なら、一瞬で走り抜けれるのに…


 そもそも、逃げる必要などない。


 なんで、女子高生が銃を持っているんだ?日本だぞ。


 しかも、ためらいもなく、発砲してきやがった。


 僕は、正義の味方だぞ、くそっ。


 脇腹が痛い、走り過ぎたせいだろうか。

 

 頭痛が、気分が悪い。チアノーゼだ。


 『柊め。』


 南は、走る。


 今は、逃げなくてはならない。


 なんとかして、追っ手を撒き、


 川島のマンションまで辿り着かなければ…。




 『どういう事だ?!』


 南は、川島のマンションに着くなり、食って掛かった。


 『ん?どういう事とは?』


 川島は、コーヒーを飲みながら、平然と答える。


 『フルパワーを出せるんじゃなかったのか?


  変身時間も以前より落ちてる。


  無様に逃げちまったじゃないか!』


 『まさか、負けたの!?』


 川島の顔が曇る。


 『負けてない!引き分けだ。』


 南は、ばつが悪そうに答える。


 『データを確認したいわ。ケーブル繋いで。』


 川島が、パソコンを起動させ、南にケーブルを投げる。


 『あぁ。』


 南は、右手首のコアユニットにケーブルを接続する。


 『ふむふむ。なるほどなー。』


 川島は、モニターを見つめて、一人頷く。


 『なにか分かったのか?』


 苛立つ南は、髪の毛を掻き、爪を噛んでいる。


 『えぇ、結構、十分にね。』


 『早く、理由を!』


 南は、川島を急かす。


 『変身時間の現象について。


  南君、余裕こいてダメージ受けすぎ。


  想定以上の負荷が短時間にかかったんで、強制解除されたワケ。


  しかも、最初に高熱、次に、荷電、冷却、ラストに衝撃。


  敵の”柊 恭一”がどこまで考えていたかは知らないけど、


  ここまでバラエティーに富んだ攻撃を短時間に喰らいすぎ。


  ”月影”はね、金属で南君の全身を覆っているわ。


  ジャストサイズ。


  それは、特殊な金属、合金なの。


  ”負膨張”って知ってる?


  金属が温度の上昇により収縮する現象の事だけど。


  最初の一撃目、炎術を直撃したでしょ。


  それで”負膨張”を起こし、


  南君のサイズを維持するのにエネルギーの大半を浪費した。


  更にエネルギー回復の間もなく、攻撃を受け続けた。


  そこで、南君への生命維持が困難になった為、


  強制解除のアラートを出したワケ。


  お分かり頂けたかしら?


  ”月影”のお陰であなたは無傷でいられた。


  命とプライド、どちらを優先する?


  お望みとあらば、


  強制解除アラートをアンインストールできるけど。』


 川島が意地悪く、問いかける。


 『ちっ。』


 南は、舌打ちをし、明後日の方向を見る。


 『柊め、姑息な手段を使いやがって。』


 『敵を褒め称える気はないけれど。


  今回は、向こうの方が上手だった。


  流石、”月影”、”黒陽”の試験台に選ばれる術者。


  戦闘経験では、南君と比較にならないんでしょう。


  恐らく、”月影”のような近距離パワータイプと戦った事があるか、


  それなりに死線を潜ってきたんじゃないかしら。』


 『あんな劣等生がか?たまたまだ。運が良かっただけだ!』


 『その油断こそが、南君の弱点よ。


  データを見たけれど、勝てない戦いではなかった。


  事前に術者であることも分かっていたはずじゃなくて?


  少なくとも、私の”月影”が負けた訳じゃないわ。』


 川島が釘を刺す。


 『次は…気をつけるよ。』


 ふて腐れ、南は、ケーブルを強引に引き抜く。


 くそっ、くそっ。


 僕が…、俺が正義なんだ。負けてはならないんだ。


 あんなヤツに負けるはずがないんだ。


 『この間、言っていた付属パーツは武器か?』


 南は、川島に尋ねる。


 『武器もあるわよ。』


 『武器も?』


 『いくつかの戦闘状況にあわせて換装できるのよ。


  ”月影”は。


  既存の兵器ではなく、私の特別設計品を!』


 川島は、自信を込め、胸を張る。


 『対陰陽士用は?』


 『もちろん、あるわよ。』


 『すぐに換装してくれ。』


 『換装は今日できるけど、しばらく戦闘は無理よ。』


 『なんでだよ?』


 『だから、さっき言った”負膨張”。


  今、変身したら、南君、”月影”に押し潰されちゃうわよ。』


 川島が笑う。


 『どのくらい空ければいい?』


 『一週間空けて、ディメンジョン…寸法確認してからかしら。』


 『一週間も!?』


 南は、不満を隠せない。

 

 すぐにでもリベンジマッチがしたいのだ。


 『一週間も”月影”を稼動不能にしたのは誰?』


 『分かった、分かったよ。反省してますって。』


 南は、壁に寄りかかる。


 くそっ、覚えていろ。柊め。 

 

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