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32.正義の味方 その十二 正義の味方vs正義の味方

-学校-


 う~ん、よく寝たぜ。


 僕は、6時間目が終わり、チャイムを聞きながら、思いっきり伸びをする。


 遠藤の事件以降、怖くて学校以外で熟睡できない。


 家でもグロック片手に数時間置きに目が覚める。


 枕元に銃って、どこのボンドだよ、ホント。


 相変わらず、白鞘激務、吉井のイキナリ献血。


 忙しい事、この上ない。


 ちょっと前まで、暇を持て余していたのに。


 人生分からんもんやね。


 さて、今日は、白鞘も吉井も連絡ない事ですし、


 閉校ギリギリまで図書室で寝ていこう。


 鞄を肩からぶら下げ、上履きを引き摺り移動する。


 ん?何か嫌な予感が…、


 というか誰かに見られている感じがする。


 誰だ?辺りを見渡す。


 いつものクラス。宇梶も吉井もいない。


 誰だ?クラスメイトが好き勝手に話しているだけだ。


 いかんな。被害妄想気味かもしれん。




-図書室-


 寝れん!


 絶対、誰かに見られてる。


 誰だよ、もう!


 人のささやかな安眠タイムを邪魔すんのは!

 

 図書室、クラス以上にいろんな学生がいる。


 こっちを見てるのは…いろいろいるけど…


 わからん。くそっ。


 イライラしてきた。


 仕方ない。家に帰るか。




-通学路-


 確実に誰かに見られている。


 確信した。


 しかも、尾行されてる。


 黒連か?それとも、あの中国人グループか?遠藤か?


 どれかわからんが…


 スマホで宇梶にメールする。


 『誰かに尾行されている。あの廃ビルに誘いだす。


  戦闘の可能性あり、フォロー頼む。』


 自転車のスピードを上げ、


 遠藤との一件以来、行かなかったあの場所へ。




-廃ビル- 


 『そろそろ、出てこいよ。僕も暇じゃないんだ。』


 僕は、見えない何者かに声をかける。


 返事は…ない。


 だが、なんとなく気配はする。


 確実にこの廃ビルまで付いて来ている。


 『ふぅ~ん、本当に陰陽士なんだな。』


 どこかで聞いた事がある若い声。


 変な訛りもない…日本人だな。


 誰だ?


 柱の影からパーカーを目深にかぶり、サングラスをかけたヤツが出てきた。


 体格からして多分、男。


 遠藤じゃない。僕と同じか、ちょっとでかいくらいだ。


 『なんの用?つっても、僕にちょっかいかける以上、黒連かな?』


 僕は、カマをかける。


 『知る必要はない。』


 男が笑う。  


 男は、素手だ。武器を携帯している様子もない。


 宇梶達とは違うな…


 僕と同じ陰陽士か?それとも、百鬼夜行テラーテイルか?


 間合いは、ざっと10m。


 踏み込んで来たら”炎刃”で迎撃しよう。


 その後、”鋭針装”で距離を稼ぎつつ、宇梶の援護を待つか。


 頭の中でざっと、そろばんを叩く。 


 『あんたは、悪か?』


 イキナリ、男が切り出してきた。

 

 『なんだ、いきなり?


  自分では、犯罪もしてない一般人だと思っているけど。』


 僕は、大げさに手を広げ、答える。


 『ははは、陰陽士が一般人な訳があるか。


  だが、いいよ。殺さないでやるよ。』 


 男は、無造作に、一直線に僕に歩いてきた。


 こいつ、バカか?


 距離、8m。


 相変わらずの素手、術等の詠唱をしている節もない。


 真っ直ぐ歩いてくる。


 どうする?


 ”炎刃”を撃つべきか?


 どんな能力だ?攻撃されても効かない自信があるのか?


 遠藤の時のような装置があるのか?


 距離、5m。


 くそっ、読めん。


 仕方ない。先手必勝!


 右手を構え、詠唱する。


 『”紅紡ぎ、貫け我が剣、炎刃!”』


 炎が男を覆う。


 『やった…か?』


 が!


 炎の中から手が出てくる。


 とっさに、右へ飛ぶ。


 『”鋭針装”!』


 術を自身にかけ、次の手に備える。


 炎の中から、騎士が出てきた。


 鎧をまとう…術…なのか。


 中世の騎士っぽいから、陰陽術とは違う…か?


 『残念だが、俺に陰陽術は効かん。


  貴様らを倒す為に造られたんでね!』


 騎士がゆっくりこちらを向きながら話す。


 先程とは違い、声が機械音だ。


 術が効かない?


 僕らを倒す為に造られた?


 いろいろ聞きたい事があるが、騎士は先程とはうってかわって


 鋭い動きで距離を詰めてくる!


 迅えぇ。やばい、”鋭針装”でも追いつかれる。


 腰に構えている霊剣 ククリで切り払うが、


 騎士はなんの躊躇もなく、刃を掴み、砕く。


 『マジかー!』


 つい、弱音が出る。


 『おいおい。もう、種切れか?芸がないぞ。』


 騎士が笑う。


 一瞬、騎士の姿を見失う。


 その後、襲ってくる浮遊感と足の激痛、


 足払いか!


 『ぐぅっ。』


 地面に叩きつけられ、騎士に足蹴にされる。


 一応、手加減されているのか。かろうじて息はできる。


 『ホントにこれだけなのか?準備運動にもなりゃしねぇぞ?』


 騎士が嫌味を込めて、足に力を入れる。


 『ぐぅぅぅ。野郎!”紫音”!』


 バチチチィ!


 電撃が騎士の鎧を伝導する。


 足の力が弱った隙に僕は転がり、なんとか脱出、


 近場の柱の影に身を隠す。


 はぁー、はぁー。埃まみれになっただろうが!


 『金属には、電撃か。


  アイディアはいいが、RPGとは違うんでね。』


 騎士は余裕だ。


 カチャン、カチャンと甲冑のかかとを鳴らしながら近付いてくる。


 マジで効かないのか?


 このままじゃ、”雷吼鞭”も怪しいな。


 くそっ、切り札、一枚ドボンか。痛いな。


 宇梶は、まだかよ。


 もう、毎回、強敵ばっか。マジで嫌になるわ。


 グロックも…多分、ダメだろうな。


 ならば…


 両手の手のひらに模様を素早く印す。


 『乱』、『流!』


 両手の手のひらから霧が発生する。


 『ん?なんだこの霧は?』


 初めて騎士が戸惑いらしき物を見せる。


 ”炎刃”、”紫音”は、知っているが、”御堂乱流”は知らないのか…


 黒連関係者じゃないのか?


 しばらく、”御堂乱流”で姿を隠し、僕は次の手を打つ。


 『行くぜ…百鬼夜行テラーテイルテケテケ。』


 僕の左手がどす黒く光り、鎌が出現する。


 日頃の訓練のお陰か、見た目も凶悪になった、切れ味も上がっている。


 カチャン、カチャンと鳴る金属音を頼りに騎士の背後へ。

 

 姿勢を低くし、僕は、両手で鎌を構える。


 喰らえ!


 騎士の背中を鎌で切り裂く。


 『ガイン!』


 『ぐっ!』


 効いた!わずかだが、甲冑に傷が入った。


 すぐさま、僕は、柱の影に身を隠す。


 『どうした?僕の術は、効かないんじゃなかったのか?』


 僕は、笑いながら、”御堂乱流”を再発動させる。


 このルーチンワークでハメてやる。


 『姑息な手段を!』


 騎士が吼える。


 カチャン、カチャン。


 騎士の弱点だ。動くと絶対に音がする。


 僕は、ゆっくりと、焦る心を静めつつ、騎士に近づく。


 もう一丁!


 『ガイン!』


 騎士の後頭部に鎌が直撃。なかなか、硬い。


 斬る度、鎌に衝撃が伝わってくる。


 『くそがぁ!!』


 出鱈目に騎士が暴れる。


 カチャカチャ、カチャカチャ、うるせえな。




 僕の一方的な攻撃がしばらく続いていたが、


 『ピピピ!リミットです。解除して下さい。』


 急に電子音が響く。


 『ちぃっ、消耗が早い。勝負は預けたぞ。』


 騎士は、身を翻し、ビルの窓から消えた。


 リミット?変身時間でもあんのか? 


 僕も百鬼夜行テラーテイルを解除する。


 ふぅ、やばかった。


 額の汗を拭いつつ、僕は立ち上がる。




 『大丈夫か!?柊!


  今の何や?変なコスプレ野郎。』

 

 平田がフロアに入ってくる。


 『知らないよ。僕の熱心なストーカーみたい。宇梶は?』


 『エミと2人でアイツを追ってる。怪我ない?』


 『なんとか無事。』


 僕は、胸をさすりながら答える。


 くそぉ、これからアイツも相手せにゃならんのか…


 人気者はツライよ。


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