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20.正義の味方 その八 ブルマおばさん(後編)

-週末-


 両親には、友達の家に外泊すると嘘をつきマンションに向かう。


 エントランスに平田と御門野が居た。


 横にある黒いバイクに乗るのだろうか?


 B・A・L・I・U・S?バリウス?


 単車には疎いので良くわからない。


 『こんばんは。』


 『おっ、早いやん。今日は頼むで。うちがライダー。


  柊がアタッカー。はい、ワルサーのマガジン、落とさんようにな。


  あと、住宅地に入ったら、あんましバカスカ撃ったらアカンよ。』


 『了解です。平田さん、免許いつ取ったんですか?』


 『大丈夫!和歌山まで一人で行った事あるから!』


 おい、質問に答えろ!


 無免だな!お前、無免なんだな!!


 親指立てて笑うんじゃねぇ。


 『はい、柊君。』


 御門野、あんたもスルーでヘルメット渡すんじゃねぇ。


 大丈夫か?戦闘、以前に問題あるんじゃねぇか?


 転倒して事故るとかマジ勘弁してくれよ。


 くそぉ、来るんじゃなかった。脇汗が酷い。


 『ドドドドド』


 すぐ隣に2ケツのバイクが来た。


 こっちは赤い。DN-01って書いてある。


 デザイン的にはこっちの方が好みだな。


 ガンダムっぽいし、何より赤いのがいい。


 『準備OKです。』


 赤いバイクのライダーは新堂だ。


 後ろが宇梶か。ギターケースを背負っている。


 中に霊剣を入れているんだろう。


 『じゃあ、捜索を開始するわ。


  各自のヘルメット内にレシーバーとマイクを搭載しているから。


  ターゲット発見までは、こちらから指示を出します。


  接敵後は各自でコンタクトを取りながら頼むわね。


  チームαは、瀬田市北部から。


  チームβは、瀬田市南部から。


  GO!』


 『了解!』


 『ドドドドドド』


 2台のバイクは二手に別れ、出発した。




-瀬田市捜索中-


 知っている道がバイクだと違って見える。


 景色がどんどん流れていく。


 『初めてバイク乗ったんですけど、結構、風が強いんですね。』


 僕は、純粋に驚いた。


 『まだ、この季節はええけど、冬はキツイで。


  寒くて寒くてイヤんなるよ。』


 平田が笑いながら答える。


 『でしょーね。』


 『そうそう、ドサクサに紛れておっぱい触ったら、


  みんなに言いふらすから覚悟しいや。』


 『触りませんよ!』


 『えっ?柊、ゲイなん?ヒクわ~。』 


 『ゲイじゃない!純粋なノーマルですよ!!』


 『じゃあ、おっぱい好きなんちゃうん?』


 『まぁ、嫌いではないですね。』


 僕は、努めて冷静に答える。


 『何、話してんのよ。』


 冷たい宇梶の声が聞こえた。


 しまった!この回線、全員に通じてんのか!!


 トラップか!


 『今のは、ちょっとヒキますね。』


 新堂も追撃してきた。


 『イヤ、その、アレですよ。僕はゲイじゃなくて、


  普通の健全な一般的な男子高校生だと、言いたかったワケで…』


 『見苦しい。』


 更に体感温度が2度下がった宇梶の声が聞こえた。


 『ケケケケ。』


 前で平田が笑ってやがる。


 こいつ…ハメやがった。


 女を殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ。 


 僕、悪くないじゃん、ハメられたんだよ。


 冤罪だ!


 『柊君も男の子だから仕方ないのよ。若いもんね!』


 御門野まで!


 『そー言えば、この間、ワザワザ、家から離れたコンビニでHな本


  買ってましたね。しかも、先生に見つかってるし。』


 『宇梶!余計な事を!』


 『『『うっわぁ~。』』』


 御門野、新堂、平田が見事にハモる。


 『もう、ヤダ。僕、帰りたい。ここで降ろして下さい。』


 僕のライフポイントはもうゼロよ。


 このままじゃ戦えない、もう戦えないよ。


 母さん、女は怖いです。


 僕は15歳で早くも女性不振です。


 『みんな、レーダーに反応有りよ!


  国道2号線を西に移動中。月輪町付近。


  新ちゃん、あみ、位置情報を送るわ!


  チームβの方が近い!』


 『柊!』


 『あいよ!ガチャン。』

 

 僕は、ワルサーを構える。


 黒いBALIUSは加速していく。




 『見えた!』


 平田が叫ぶ。


 小太りのおばさんがマジでチャリこいでる。


 ブルマで。ブルマで。


 しかもママチャリ。


 『うわぁ~。』


 視界に映った汚物に萎えそうになる心。


 なんとか気を取り直し、


 『ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ!』


 『カン!』


 3発撃つが、2発外れ、一発は自転車に当たった。


 くそっ、やっぱ移動中は当てにくい。


 すると、”ブルマおばさん”がこっちを睨んだ。


 『『うげぇっ!』』


 僕と平田は、思わず悲鳴を上げてしまった。


 すげぇ顔。


 ボッサボサの髪にたるんだ顔のシワ。


 顔中に吹き出物、こめかみに浮いた血管、そして、黒目。


 くぼんでいるのか、白目がない。


 『平田さん、もうちょい近づいて下さい!』


 『えっ?本気?うち、嫌や。この距離で当ててよ。』


 『平田さん!!』


 『分かったよ!』


 ”ブルマおばさん”を追走する形になった。


 風が更に強くなる。


 『平田さん、もう少し、姿勢落として!狙います!!』


 『次は倒してや!』


 狙いを定め、僕が引き金を絞るその時!


 『ドン!』


 ”ブルマおばさん”が消えた。


 『えっ?えっ?』


 僕は目を疑い、うろたえる。


 『柊!後ろや!飛びおった!!』


 平田の声で我に返り、振り返ると、居た。


 口からあぶく飛ばしながら自転車こいでやがる。


 『野郎!!』


 舌打ちし、素早く狙いを定める。


 『ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ!』


 『カン!カン!カン!』


 発砲するが、ママチャリのかごに阻まれる。


 『平田さんヤバイ!近づかれてる!』


 『もう140kmやで。なんやねん、こいつ!』


 怖えぇ、怖えぇよ。


 『あみ!チームαがもうすぐ追いつく。


  逃げ切りなさい!挟撃に持ち込んで!』


 御門野の指示が飛ぶ!


 ”ブルマおばさん”との距離がどんどん縮まる。


 もう、10mもない。


 どーする?


 7-6で、残弾1。ワルサーで仕留められるか?


 多分、無理。


 距離5m。

 

 ”炎刃”は?この高速で当たるか?


 ”雷吼鞭”は、論外!


 距離2m。


 ”ブルマおばさん”が口を開く。噛む気だ。


 ならば…


 『”見ろ風の動き、聞け草木の響き、鋭針装”。』


 僕は、僕自身に術を施す!


 来い!!


 『ガキャッ、ゴン!』


 ”ブルマおばさん”が噛み付こうとするのをワルサーで防ぎ、


 僕は、左手の霊剣 ククリを眉間に突き刺す。


 『びぃぃぃぃぃ~!』


 気持ちの悪い叫び声を上げ、”ブルマおばさん”は後退していく。

 

 『陽子!』


 『はい!!』


 『ザシュッ!』


 後方から追跡していた宇梶の一閃で、”ブルマおばさん”は両断された。


 『ガチャンッ、ガガガガガガー!』


 けたたましい音を響かせ、 ”ブルマおばさん”と乗っていた


 自転車は転がっていく。


 『ギャッ、ギャギャギャー。』


 2台のバイクはスピードを落とし、合流する。


 『手応え、有りです。』


 『柊、ナイス。』


 『どうもです。』


 『新ちゃん、死体の確認を。』


 『了解です。みんな、行きましょう。』


 ゆっくりと来た道を戻る。


 自転車は、ガードレールに突き刺さっており、後輪がからからと回っていた。


 ”ブルマおばさん”は、酸でもかかったかの様に白い泡を飛ばしながら、


 体が溶けていく。


 『びぃぃぃぃぃ。』


 相変わらず、気色の悪い声を発している。


 心なしか僕を睨んでいるような気がする。


 いや、睨んでいるんじゃなく…なんだこの感じ?


 『あばぁっ!』 


 断末魔の叫びを残し、完全に”ブルマおばさん”は消滅した。


 『ターゲットの消滅を確認しました。これから戻ります。』


 新堂が報告する。


 『お疲れ様。安全運転でよろしく。』


 御門野が労いの言葉をかける。


 『ほな、帰ろか。ほんま、心臓に悪いわ。』


 『夢に出てきそうですね。』


 『やめて下さい。僕なんか間近で直視したんですよ。』


 『ドルゥン!』


 2台のバイクは並走し、マンションに向かっていく。




 『あっ!』


 『どーしたんすか、平田さん?』


 『コンビニ寄らん?アイスとか買って打ち上げしようや。』


 『いいですね。』


 『エミと陽子、買ってきてや。』


 『なんで私達だけなんですか。』


 宇梶が不平を口にする。


 『柊、コンビニ寄ったら余計なモン買うで。』


 『うるせぇ!!』


 『それは困りますね。』


 『新堂さんまで!!』


 酷い一日だ。


 僕は断じてこんなイジられキャラじゃない。


 紳士なんだ。


 本当だ。


 本当なんだ…


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― 新着の感想 ―
[良い点] そういや昔自転車漕いでるブルマおばさんに道端で遭遇したことありますね…あまりのインパクトにしばらくそのことが頭から離れませんでしたね…。ちなみに頭にでっかい黄色の花飾りもついてましたわ…
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