17.正義の味方 その七 レベルアッパー
-学校-
ブブブ。
授業中にメール。
宇梶からだ。
『今日、訓練。草津市水道局センターに行きます。
放課後、案内するからついて来て。』
『了解。』
と返信する。
よし、”雷吼鞭”が試せるぞ。
心の中でガッツポーズする。
放課後、宇梶と自転車で現地に向かう。
水道局センターに着くと正門には警備員がいた。
『あっ、宇梶さん、お疲れ様。』
『お疲れ様です。』
宇梶とは知り合いのようだ。当たり前か。
『彼が例の?』
『そうです。』
『なるほど、では、どうぞ。』
話が通っているのか僕もすんなり入れた。
水道局センター、名前から察するに公共の施設だよな。
周りを見ても普通のボロイ施設だし。
白鞘が買収したのか?
そもそも、白鞘、黒連ともに公共の団体なのか?
黒連はこの事を知っているのか?
できるだけ内部を探った方がいいのか?
『あんまり、キョロキョロしないで。恥ずかしい。』
『あ、ごめん。』
宇梶に注意される。
こいつと行動を共にしている以上は黙って従っておくか。
階段を下りて地下に行く。
段々、施設が新しくなっていくな。
なるほど、地上の施設はダミーか。
階段の隅には監視カメラもある。
しかし、随分と静かだな、人とすれ違わないし、声もしない。
地下6階の68倉庫という所に着いた。
『これからは、ここで訓練するから。攻撃予定ない時はここに来て。』
『分かった。』
中に入る。
おお、ずいぶんと広い。
左端にはドラマで見た事がある射撃場もある。
『いらっしゃい。』
『あ、お疲れ様です。』
新堂が待っていた。
『では、射撃訓練しましょう。』
『お願いします。』
2~3時間、つきっきりで新堂に指導してもらった。
これで少しは、敵と当たっても大丈夫だろう。
できれば、撃ちたくないけど。
視線を移すと、いつの間にか平田が来ており、
宇梶と柔軟運動をしている。
平田もこちらに気付き話し掛けてくる。
『おっ、少しは当たるようになった?』
『新堂さんのお陰で。』
『柊君、割となんでもソツなくできるんですよ。』
『勉強、ひどいけど。』
宇梶が水を注す。
『何、柊、アホなん?』
平田が笑う。
盛り下がるだろうが!
新堂、てめぇも下向いて笑いを堪えるんじゃない!
『あの、術の方、試していいですか?』
僕は、切り出す。
『どうぞ。』
新堂は笑顔で返す。
『あまり、慣れてないんで、できれば距離取って下さい。』
3人がさっと倉庫の隅に移動する。
おい、おい!!
そこまではいかない。
平田なんかヘルメットかぶってやがる。
僕を爆弾魔か何かと勘違いしてないか?
なんか納得いかない。
まぁ、いい。
『”紅紡ぎ、貫け我が剣、炎刃!”』
『ゴォォォゥン!』
紅い炎が噴出する。
『うっわ!』
平田が驚き、声を上げる。
よし、前回より火力が上がっている。
『もう一丁!”紅紡ぎ、貫け我が剣、炎刃!”』
『ゴォォォォゥン!』
いいね。見た目も派手で威力もありそうだ。
こういうのだよ、やっぱり術というのは。
ちんけな”閃光蓮”、”御堂乱流”よりこういうのが欲しかったんだよ。
確か”紫音”の時、大阪が言っていたな、訓練次第で詠唱不要になると。
これが、僕の一言で発動するのか。いいね、実にいい。
なんか胸の中が満たされる。
これが”力”ってやつか。
『ははは』
自然に笑いがこぼれた。
もう一つの”雷吼鞭”をと。
『”流れる白光、薙ぎ払え、雷吼鞭!”』
し~ん。
アレ?発動しないぞ。
詠唱間違えた?
僕は、携帯で詠唱を確認する。合ってる。一字一句。
なんで発動しない?
『”流れる白光、薙ぎ払え、雷吼鞭!”』
やっぱり発動しない。
『あんたには使えんのちゃうか?』
平田が口を挟む。
仕方ない。
”炎刃”を繰り返すか。
再度、右手をかざす。
『”紅紡ぎ、貫け我が剣、炎刃!”』
し~ん。
あれ?
”炎刃”まで発動しなくなった?
なんで?
つーか、汗だく、だるいな…
そうか!発動可能回数!マジックポイントだ!
”御堂乱流”の時、水分限界があったように、
”炎刃”、”雷吼鞭”にも今の僕には発動可能回数があるんだ。
”炎刃”なら一日2回が限度という訳だ。
ん?どうやったら回復するんだ?
寝ればいいのか?リポビタンDとか飲めばいいのか?
今までの戦闘で術を連発した事がなかったからなぁ。
恐らく、”鋭針装”、”慈恩”に比べて、
攻撃系の”炎刃”は消耗が激しいんだろう。
まぁ、そういう事が分かっただけで収穫としよう。
『なに、一人でうんうんうなってんのよ。』
宇梶が絡んでくる。
『いや、何、大した事じゃないよ。術者特有の悩み。』
『言い方がむかつくんですけど。』
後日、試すと見事”雷吼鞭”は発動したが、
① 雷(電撃)という特性上、直進せず、湾曲してしまう
(射撃場で的を狙ったがかすりもせず、倉庫の天井を焦がした)
② 一日一発しか撃てない
(発動後、”炎刃”は使用不可)
③ 発動させた手にダメージを負う
(”慈恩”に換算し、3度で完治するレベルの火傷)
という問題を抱えている訳有り術である事が判明した。
割に合わない。
もっとも、僕の術者としての練度が上がれば、改善されるかもしれないけど。




