16.正義の味方 その六 僕と新メンバーと、どきどき火事
-911号室-
放課後にあのマンションに行くと、御門野、新堂、宇梶の他に
知らない人間がいた。
ショートカットの女だ。
なんだっけ、あの外人タレントと同じ髪型。
ブランカ?違うな。
フレンカ?う~ん、なんとかベリー。出てこん。
こないだの戦闘の後遺症かもしれん。記憶障害。
新堂と話しているところを見ると白鞘のメンバーか?
『おっ、君が柊?』
ほぉ~。イキナリ、ため口と来ましたよ。
ナメテやがる。
制服からして草津高校。
同世代なら普通、敬語だろうが!
お前みたいなヤツがいるから、
ゆとり世代はおかしい思われるんじゃボケェ!
と、思いつつ笑顔で返す。
ナイスガイな僕。
『はい。柊です。よろしくお願いします。』
『うち、平田言うねん。今日からメンバー入り、よろしくね。
前回、大変やったらしいね。次からは、うちが守ったるよ!』
『ど、どうも、ありがとうございます。』
なんだこの勢いは?
大阪のオバチャンみたい。僕が圧倒されていると、
『この子は新ちゃんの同期の平田 亜美ちゃんよ。
仲良くしてあげて。
あみ、柊君もナカナカできる子よ。』
御門野が紹介する。
『そうそう、柊君にプレゼント。』
『僕にですか?』
御門野がテーブルにアタッシュケースを置く。
アタッシュケースを開くと中には、
黒い銃、ナイフ、黒い筒、USBメモリが入っていた。
『これ、マジですか?』
『前回、大活躍だったけど、大変だったじゃない。
だから、柊君にも少しは護身術を習ってもらおうと思って。』
『銃は私と同じワルサーPPKです。
サイズも小さく扱いやすいですよ。
その黒い筒が消音器です。』
新堂が続けて説明する。
『霊斧 フクロウの代替で霊剣 ククリ。
ワルサーは、明日から放課後、
新ちゃんに扱い方を習ってちょうだい。』
ん?待て。
待て待て待て。
おい!オイッ!
僕は、サポート役、あくまでサポート役だ。
戦闘には参加しない後方支援のはずだろ!
なぜ、武器を渡す?
つーか、メンバー増員の時点で、
更に前線に投入する気が見えてんだよ!
このアマァ…
僕の笑顔が引きつる。
気を取り直し、USBメモリを手に取る。
『これは何ですか?』
『術の教本。しかも黒連のヤツ。
手に入れるの苦労したんだから。』
御門野が笑う。
なんで?どういう事だ?
『どういう事ですか?』
僕は素直な疑問を口にする。
『柊君、センスあるし。
護身用にいくつか覚えれないかなと思って。』
『新堂さんに教わればいいんですか?』
『私には適性がなくて使えません。
申し訳ありませんが、柊君に独学で学んでもらうしかありません。』
僕は、宇梶と平田の方を見るが2人とも首を横に振る。
『使える可能性があるのは、柊君だけなのよ。』
まぁ、いくつかは使えるし、覚えれるかもしれんが。
独学でできるものなのか?
さて、どーしたものか。
取りあえず、もらっておくか。
『分かりました。やってみます。
USBメモリ、お借りしてもいいですか?』
『霊剣も専用よ。』
御門野がウィンクする。
武器はいらんのだが…
-自宅-
USBメモリのデータをパソコンで開く。
”閃光蓮”、”御堂乱流”、”紫音”。
3つとも記載されている。
これで戦闘中に使っても黒連側のスパイである事が
ばれる心配はなくなったな。
しかし、覚えると言ってもどれからにするべきか。
術の発動方法とだいたいの効果は記載されているが、
難度の記載はなし。
まぁ、名前で選ぶか!
強力そうなやつを。
”閃光蓮”のようにアイテムレスで、
強そうで、中二病をくすぐるヤツは……
僕はマウスを操作し、術のリストを確認する。
よし、まずは、この二つにしよう!
”炎刃”、”雷吼鞭”。
名前の響きがいいね!
使えるといいのだが。
明日の朝一にあの場所で試すとしよう。
-玉川高校裏の森-
早朝、あの秘密基地に僕は来た。
空き地の真ん中で右手を前方に構え、
昨日の晩、何度も繰り返した言葉を放つ。
『”紅紡ぎ、貫け我が剣、炎刃!”』
僕の言の葉に呼応し、前方に炎が噴出す!
『おぉおー!!』
イイ!イイ!
これは良いものだ。
かなり使えそうだ。いいぞ。
ではもう一つの”雷吼鞭”は…
ん?
なんかパチパチ言ってる。
何、この音?
『ゲッ!燃えとる!メッチャ、燃えとる!』
”炎刃”の影響でまわりの
枯れ木、落ち葉がガッツリ燃えていた。
当然、僕は消火器なんて持っていない。
どうしたものか…
『そうだ!』
僕は、閃き、両手を合わせ唱える。
『”乱”、”流”!』
『ブシュー。』
”御堂乱流”の霧で消火だ。
あったまいいな。僕。
切れ者だわ。COOL!
『ブシュー。』
『パチパチ。』
『ブシュー。』
『パチパチ、ボォン!パチパチ!ゴォッ!』
『ブシュシュシュ~。』
『ゴォォォォォ!』
『………』
無理だ!撤退!!
僕は回れ右をし、その場を離れる。
山火事になるか?連絡するか?
でも連絡したら、イロイロややこしい事になりそうだ。
学校、停学か?
何より母さんに殺される。
仕方ない。忘れよう。無かった。
僕は何も見なかった。
世の中、人智の及ばぬ事もある。
知らぬが仏。
『さて、学校に行くか。』
通学の途中、消防車数台とすれ違ったが、
僕は自転車のペダルをこぎ続けた。
『もうあの場所で訓練できんな…』
-学校-
『おい、柊。山火事やて!』
昼休み、林がスマホの画面を見せながら話し掛けてくる。
『どこで?』
僕は当然、すっとぼける。
『玉川高校の近くや。お前んちも近いんちゃうんか?』
『マジか!』
『森で不審火らしいな。』
『どーせ、馬鹿なヤンキーが隠れて
タバコでも吸ってたんだろうよ。』
『やろな~。せめて、消して行けよな。』
『ほんとほんと。』
一応、記事では消火済みとなっている。
ふぃー、良かった。
森の出入りは見られてないだろうし(一応、用心はしていた)、
僕の顔が割れる事はないな。
そもそも火の元が分かる訳がない。
僕の髪の毛が落ちてたとしても燃えとるだろうし。
うむ、OK!
問題なし!今日もいい天気!




