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第50話 再会

王城は、

もはや“城”ではなかった。


壁は黒く焼け、

回廊は崩れ、

かつての装飾は灰の中に沈んでいる。


ルクスバリア

中央王城跡。


そこは今、

国家の“残骸”だった。


その廊下を、

二人の影が歩く。


一人は、

黒い外套をまとった女。


エレノア・ヴァレンシュタイン


もう一人は、

疲弊しきった男。


グランツ宰相


再会の場所としては、

あまりに皮肉だった。


かつて国を動かしていた中心と、

かつて国から追放された存在。


今は逆転している。


沈黙のまま、

二人は瓦礫の間に立つ。


最初に口を開いたのは、

グランツだった。


「……ここまで来たか」


声は掠れていた。


エレノアは答えない。


ただ周囲を見ている。


崩壊した行政区。


空になった財務記録庫。


燃え残る議会棟。


そして、

人の気配のない中枢。


グランツは小さく息を吐く。


「あなたが正しかった」


その言葉は、

敗北宣言だった。


王国最高の頭脳が、

初めて全面的に認める。


だが。


続けて言葉を落とす。


「だがな」


空気が変わる。


「急激な変化は人を壊す」


エレノアの足が止まる。


グランツは続ける。


「お前のやったことは正しい」


「効率も、合理性も、数字もだ」


「だがその速度は」


「人間の適応能力を超えている」


沈黙。


崩壊した王都に、

その言葉だけが響く。


彼の視線は鋭い。


敗者の目ではない。


まだ“国家”を見ている目だった。


「貴族は壊れた」


「軍は分裂した」


「民衆は混乱した」


「全て“正しい改革”の結果だ」


エレノアはようやく口を開く。


「それでも、遅ければ死んでいました」


即答。


感情ではなく事実。


グランツは頷く。


「そうだ」


否定しない。


そこが彼の強さだった。


「だからこそ問題だ」


「正しさが、人を救うとは限らない」


空気が重くなる。


二人の間に、

価値観の断層が現れる。


エレノアは少しだけ目を細める。


「では、

どうすべきでしたか」


グランツは即答しない。


長い沈黙。


そして言う。


「段階だ」


「変化には緩衝が必要だ」


「だが今回は、

それが間に合わなかった」


彼は王城の残骸を見上げる。


「私の責任でもある」


その一言は、

敗北ではなく整理だった。


責任を切り分けるのではなく、

引き受ける姿勢。


エレノアは沈黙する。


彼女もまた、

完全な勝者ではないことを理解している。


結果は出した。


だが過程は無傷ではない。


人が壊れた。


都市が壊れた。


国家が壊れた。


そこには必ず理由がある。


そのとき。


背後から足音。


レオン・グレイハルト

レオン・グレイハルト

が静かに立つ。


「議論は終わりか?」


誰も答えない。


レオンは肩をすくめる。


「なら次だな」


グランツが振り返る。


「次……?」


レオンは短く言う。


「国をどうするかだ」


沈黙。


崩壊した王城の中心で。


ようやく、

“再建”という言葉が現実になる。


エレノアは静かに言った。


「国家再建会議を開きます」


それは宣言ではなく、

処理命令だった。

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