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第43話 王都の限界

王都は、

まだ華やかだった。


夜になれば灯りが輝く。


貴族街では舞踏会。


高級店には音楽。


豪奢な馬車が行き交う。


だが。


中身はもう、

崩れ始めている。


ルクスバリア

中央議会。


怒号が飛び交っていた。


「増税しかありません!」


「これ以上税を上げれば地方が爆発します!」


「軍予算を削減しろ!」


「辺境が攻めてきたらどうする!」


机を叩く音。


罵声。


責任転嫁。


議論ではない。


崩壊だった。


財務院は赤字続き。


商会は辺境へ流出。


物流はノルディア依存。


さらに。


地方税収まで落ち始めている。


老貴族が青ざめた顔で呟く。


「何故こうなった……」


誰も答えない。


いや。


答えは全員分かっている。


時代に取り残された。


それだけだ。


王都は変われなかった。


だから衰退した。


下層区では、

さらに空気が悪い。


失業者。


値上がりした食料。


荒れる治安。


兵士たちが抗議デモを警戒している。


「税を下げろ!」


「仕事を返せ!」


「貴族だけ贅沢するな!」


怒声が響く。


兵士の表情も疲弊していた。


彼ら自身、

家族を養えなくなり始めている。


その混乱の中心で。


ただ一人。


まだ国家を支え続けている男がいた。


グランツ宰相


宰相執務室。


机には報告書の山。


財政赤字拡大

地方暴動

商会離反

軍規律低下

外交悪化


どれも致命傷だった。


側近が震える声で言う。


「……限界です」


グランツは答えない。


静かに資料を閉じる。


疲れていた。


誰よりも。


彼は無能ではない。


むしろ逆。


恐ろしく有能だった。


現状分析。


法律。


外交。


財政。


全部理解している。


だからこそ、

絶望も理解していた。


もし。


数年前に改革できていれば。


もし。


旧貴族たちが変化を受け入れていれば。


王都にも未来はあった。


だが。


もう遅い。


グランツは窓際へ歩く。


外では、

王都の灯りが揺れている。


かつて世界の中心だった都。


今も美しい。


だが。


流れが止まっている。


人も。


金も。


技術も。


未来も。


全部、

北へ流れた。


彼は静かに呟く。


「本来、

変えるべきだったのはこちらだ」


側近が息を呑む。


王国最高権力者が、

敗北を認めている。


だが。


グランツはまだ折れていなかった。


彼は最後まで、

国家維持を諦めない。


「地方との再交渉を進めろ」


「食糧備蓄を再配分」


「軍部統制を急げ」


次々と指示を飛ばす。


速い。


正確。


この男がいたから、

王国はまだ崩壊していない。


側近は思う。


もしグランツがいなければ。


王都は半年で終わっていた。


だが。


時代の流れは、

個人では止められない。


その時。


執務室の扉が乱暴に開いた。


軍務官が飛び込んでくる。


顔面蒼白。


「宰相閣下!」


「第三軍の一部部隊が、

命令拒否を開始しました!」


空気が凍る。


軍の分裂。


それはつまり。


国家崩壊の始まりだった。

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