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ジュピタル王国英雄奇譚  作者: ヤー子
第六章 閑話ークリストフ四天王編

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クリストフ五世の攻略


「リンリンリンって聞こえる」

「うん?ユズ、聞こえないものが聞こえるってことは、魔法世界においてはだいぶ良くないことだぞ」

でもユズには聞こえるのだ。右耳の耳元でリンリンリンと鈴が鳴るような音がする。

「これは世界の希少種、非魔法族なんだろ?魔法世界に当てはまらない」

「まあ、そうか・・・しかし俺には聞こえないし、」

ウィリアムも首を振る。セドリックもナターシャも聞こえないと言う。

「じゃあ、気のせいにする」

ユズはもどかし気に右耳のピアスを触った。


『あ、つながった!ユズ、聞こえるか?アルベルトだよ』 


頭の中に声がする。ユズは目を見開いた。


『ユズ、君にしか声は聞こえないんだ。人がいるならちょっと離れて。魔法世界では、幻聴は禁忌とされているから、理解されない。今居場所を突き止めたら合流する』


これは、禁忌の魔法ってこと?ユズは顔に出てしまっていて、ジェイドは心配そうにこちらを見つめてくる。

「えっと・・・じゃあちょっとお部屋で剣の手入れをしてくるね」

あからさまにユズはおかしかった。この子はアドリブで演技は難しいのだろうな、とジェイドはそう思いながら見送った。


「誰かから連絡があったんじゃない?あたしたちは信用されてないだろうし。」

ナターシャが手を振る。

「なんでユズに?」

ジェイドは単純に疑問に思う。自分は魔石を持っている。必要なら連絡はとれるはずだ。

「ジェイドとユズちゃんなら、ユズちゃんが選ばれるのは道理だろ」

セドリックは何言ってるんだとジェイドを見る。

「は、え・・・う・・・」

ジェイドは納得いくような、いかないような、何とも言えない感覚が残る。

「ピアスじゃない?あれ、アレクとおそろいよね?そういう魔法ってあるの?」

ナターシャが首をかしげる。

「確かに、アルベルトなら、そういうのもできるだろうな。あ、ウィル、パトリオット七世がこっち側なんだよ。」

「パトリオットが?ならかなり優勢じゃないか。良かったな。ヘルメス四世殿の人徳だ。」

ジェイドはウィリアムに勢力図を説明した。ジュリアナ三世もいるし、転移ゲートが完成すれば聖獣の召喚も完了し、だいぶ盤石な軍備にはなりそうだ。

「ユズちゃんの会話、気になるから、聞いてくる」

セドリックが言う。

「盗み聞きって良くないぞ」

ジェイドは止めた。自分も聞きたいのが本音だ。

「聞いちゃいましょ。ユズちゃんがうまく説明できるとは限らないもの。」

ナターシャはパチンと指を鳴らして、ユズの声がその場で聞こえるようにした。



「みんなから離れた」

『そこがどこか分かる?』

「森の中だから・・・使われてない古いお城みたい」

『そういうところは腐るほどあるなー。昨日あったこと、分かる範囲で教えてくれ』

「そうだね・・・ナターシャもセドも知り合いで・・・利害?が一致してるから、また一緒にいようって・・・あ、悪魔とはもう契約してないって」

『ユズって俺と一緒で何でも信じちまうのが、心配だな。』

「え・・・まだ悪魔とつながってる可能性も、ある?お札一個あげちゃった。」

『まあ、いいや、それで?』

『ユズ、簡潔にかいつまんで話せ』

「せかなさいでよ、私だってあんまりわかんないところもあるしっ」

『アレク、会話は俺に任せて。せっかちな男は嫌われるぞ。ごめんユズ、ゆっくりでいい。大体は理解できる。』

ユズは深呼吸して話す。

「えっと、仮面舞踏会に出たの、私は、踊ってないけど・・・」

ジェイドは誘ってくれなかったし、ユズはそもそもダンスにも容姿にも自信はないのだ。壁の花がお似合いである。

「それで、庭を散歩してて、暴漢に襲われている人を助けた。その人が、アルテ、アルテンテミア・・・・」

『アルテミシア?』

「そうそれ、その王子様だって」

『アルテミシアはウラヌスタリアの北にある国だ。王族同士はうまくやっているとは聞いていたけど、俺にはそのくらいの情報しかないな。あとでエルに確認する。アルテミシアの王子、なら戦力にはなるか。』

「弱かったよ。すごく怪我をしてて、可哀そうだった」

『丸腰なら弱いかもしれないけど弓があればアレクより強いかもしれないぞ』

「ええ」

ユズは驚く。

『異議あり。』

『俺とユズが話し終わるまでは異議を認めない。』

アルベルトはぴしゃりと言う。ユズの話を促す。

「その人曰く、クリストフには四天王がいて、四天王の城を転々としているって。」

『根城が四つってことだな。そのうちの一つが、仮面舞踏会、昨日で、検索をかけてくれ。・・・ユースタス、ジェイコブ、ハインデリヒ、ウェスパージャ。聞き覚えは?』

「ハインデリヒ卿。」

『了解。四天王の名前って思い出せるか。』

「・・・ちょっと興味深い話だったから、思い出せる。四天王って、強いってわけじゃなくって、ちょーあいされているかだって。ちょーあいってすごく愛されるって意味?」

『ユズ、それは今どうでもいいだろ!』

『アレクは口を出さないでくれって。人間の女の子の記憶の仕方はエピソード記憶なんだ、寵愛はそうだね、上の立場の人が目をかけて、可愛がるって意味で、まあ、そういう意味だろうね。四天王とは名ばかりの愛妾ってとこか。』

「やっぱりそうなのね!」

素敵ね、とユズは笑った。ユズはクリストフの愛妾にされるということの残酷さを知らないのだ。純粋に素敵だとはとても言えないが、アルベルトは言わない。今は彼女から四天王の情報を聞き出したい。もう少しなのだが、アレクシスはいらいらとしている。

『クリストフ・・・エドワードは色を好むからな』

クリストフの本名はエドワード・ハーゲン卿だ。

「そうそうあと三人は女の人の名前だった。アナスタシアとシャーロットとサブリナ」

ほら、目的は達成された。アルベルトは名前で場所を割り出すことができるのだ。

通信相手がジェイドやアルテミシアの王子相手だったらきっともっとスムーズだったことは否めない。しかし手紙ではキリがないし時間がかかる、直接会うか話をしたかったのだ。アレクシスとユズが同じピアスをしているのは幸いだった。

『ありがとうユズ、だいぶ絞り込めた。そして君の居場所も割れた。今合流する』

またリンリンリンと音が聞こえて、プツンと声は途切れてしまう。この音は波長を合わせるための音で、やはりユズにしか聞こえないようになっているらしい。

ユズははっとして部屋から出る。


「ジェイド、アルが来るって!」

「へ!?あ、うん・・・え!?」

ジェイドはユズの話だけを聞いていたから、話を繋げなければいけなくて頭の中が絶賛混乱していた。やはり聞き耳だなんて立てるべきではない。

ドガンと入口が蹴破られた。

「ユズ!無事か!」

「キャー!アレク、久しぶり」

ナターシャが歓迎のハグをしようとして、アレクシスは剣を振り下ろす。

「俺に近づくな!」


ウィリアムは、この男とは、気が合いそうと一度は思う。

「ウィル、アレクの貞淑なのはユズに対してだけでな。ユズがいないところでは奔放だよ。来るもの拒まず、去る者追わず。だからナターシャがつけあがる。」

ジェイドは勝手に暴露した。ウィリアムは、すんとした表情でアレクシスを見て、目を合わせないように背けた。

「ん?じゃあ、あの騎士はあの子を愛しているのか」

「愛しているんだけど、俺が知る限りでは一方通行だな」

「そうか、あの子を射止めていない、ということだな」

何の確認なのだろうか、とジェイドは怪訝に思った。ウィリアムの視線はユズを見ているようだった。アレクシスはユズに駆け寄って、怪我はないかと聞く。

「靴擦れくらいよ!」

ナターシャはキラキラと答える。

「お前に聞いてはない。」

「大丈夫、今日もイノシシみたいなのと決闘して、勝った!」

「・・・ユズ、お前の中の侯爵令嬢の定義ってなんなんだ」

「え・・・わからない」

だけどユズは令嬢でなくて、たとえ公爵でも王族でも、イノシシは狩ると思うし剣は振ると思う、と付け加え、聞いたアレクシスは盛大にため息をついた。


***


「ジェイド、何か考えはあるか。ウィザードランドに来たなら、もうやるしかないな。」

アルベルトは言う。ジェイドは頷く。

「アレクもユズも、休む間もなくすまないが」

「大丈夫だ、問題ない。」

アレクシスが答えて、ユズは頷いた。

「根城になっているところを潰していく、その際、クリストフ本人と交戦になることも考えられる。気づかれないように少数で動くべきだとは思うんだが。」

ジェイドはアルベルトにそう言った。

「そうだな、それと、四つ根城があるなら、同時に攻めるべきだ。」

一つ一つ潰して、こちらの目的をあちら側に知られれば、転移ゲートを別のところへ移される可能性がある。


「俺が昨日脱走してしまったから、ハインデリヒの城周辺は他よりも警備が厳重というか俺への包囲網が敷かれているはずだ。それと王である父がどこにいるのかを割り出し、解放にも協力してもらいたい。俺の逃げ出したことで酷い目に合っているかもしれない」

最悪は死んでいるだろう、とアルベルトは言わなかった。

「もちろん、一番はゲートの破壊だ・・・嘘だよ、ユズ、アルテミシア王の救出は最重要事項として念頭に入れておこう。」

こういうとき、人間と組むのは多少厄介だ。ユズのように情で動く性質を持っていることは美しくはあるのだが、それが目的の妨害になることもある。

「こいつは俺が面倒を見る、なんならその救出とやらは別で動けばいいだろ」

「アレク、そんなに人は割けないし、四か所もあって、魔法を使えないお前とユズを一緒にはできないだろ」

アルベルトは正論を言う。

「そこの人間じゃないやつらは頭数にいれていいのか」

「俺がユズちゃんにつこうか?」

にやにやとセドリックが笑う。アルベルトとはまともに話す気はないようだ。

「あたしもユズちゃんが良いわ」

ナターシャもこの中なら、アレクかユズちゃんかな、とわがままに言う。アレクシスはナターシャは断固拒否で頼む、と意見を言う。

「分け方については一任してくれないか。ウィル殿下には俺がつく。アレクシスは一人でも大丈夫だ、ナターシャさんが勝手についていってくれ。」

「おおおい!!」

アレクシスは怒ったが、ナターシャは笑って了承した。

「ユズにはジェイドがついてくれ、お前は聖魔法が使える。意味はわかるな」

「分かる。」

ジェイドは頷く。怪我をした場合のことを想定して、ということだ。

「で、君は一人で問題ないだろ」

アルベルトはセドリックに微笑みかける。心なしか冷たい風が吹いているような気がする。セドリックも妖精王となれ合う気はないと一瞥に留めた。

「それぞれ位置の共有をしよう、自分の場所が制圧し終わったら他箇所に向かうように。」

アルベルトは地図のようなものを渡す。ユズとジェイドはサブリナと書かれた紙を渡された。この紙に書き込みをすれば、全員に状況が伝わるようだ。

「あ・・・俺だけ転移は使えないけど」

ジェイドは魔法使いのくくりにされたが、ウラヌスの剣がなければ魔法は使えないし、魔力量も多くないし、転移魔法なんて高度な魔術を使いこなすことはまったくできない。

「まあ、誰かしらが迎えに行くってことで」

アルベルトが言えば、セドリックもナターシャも頷いた。

アレクシスは一通り異議ありとアルベルトに抗議していた。ナターシャがついてくるくらいなら、一人で行くし、自分はユズの護衛をするのがグリフォン頭首の命令なので、納得できないと。

「わがままいうなアレク、そりゃあ、俺に任せられないのは道理だが。」

ジェイドは不甲斐なくてすまない、と落ち込んでいる。剣技も体術も魔法も秀でたものはジェイドにはない。

「アレク大丈夫だよ、ジェイドは私が守るから」

ユズは頓珍漢な心配をしている。

「アレク、これ、万病治療薬。アレクが持ってて」

「・・・これがあるならジェイドはいらなくないか。」

「グサグサと言葉の刃が突き刺さるんだが」

「あの男はお前がグリフォンの娘といるのが気に入らないのか?」

接して数分と経っていないウィリアムにもその顕著さが分かるようだ。

アレクシスはユズから薬を受け取り、ポケットに押し込む。

「もう行く。」

こうなったら一刻も早く片付けて合流するしかない。アレクシスは開き直った。

彼はシャーロットのところを充てられた。アルベルトはウィリアムとハインデリヒのところ、セドリックはアナスタシアのところだ。

「アレク、女相手なら、お前は無双だ。色仕掛けで聞き出せ」

「どんなアドバイスだよ!!」

アレクシスはユズに切れる。

「セドはそうやるって。」

ウィリアムはハインデリヒの館は大方知っているので、その場所まで早くたどり着けるとアルベルトは踏んだ。彼の弓もどこかに保管されているはずである。

「ジェイドとユズのところが意外に策がないな」

「・・・今日ってすげえ貶される日だな」

ジェイドは落ち込んだ。顔も特に秀でてはいないからだ。

「大丈夫、ジェイド!私はジェイドの全部が好きだよ!」

「うん・・・あ、ありがとう」

「気持ち悪い」

せっかくユズが気分を治してくれたのに、アレクシスはジェイドを蹴っ飛ばす。

「ナターシャ、お前ユズにつけ、ジェイドと二人きりは認められない。」

「アレク、そんな嫉妬深いとユズちゃんに嫌われちゃうわよ?」

アレクシスも今日は、せっかちやら嫉妬深いやらユズに嫌われるというワードをよく聞く日である。


一行はそれぞれに別れ、領地、または居城に飛んだのだった。


***


「さて、まずはどうやって潜入するかだな。ナターシャが来てくれたなら、手っ取り早く変装か。」

ユズたちが来たのはサブリナの屋敷がある領地のカフェだった。

「わかったわ、まずはあたしがお屋敷潜入して様子を見てくるから、お二人さんはここで待ってて!」

ナターシャはいったん消えていく。とっても便利なのに、アレクシスは本当に一人で大丈夫なのだろうか。知らない土地での動き方は慎重にならざるを得ない。


「ジェイド、私、包帯とか当て布とか結構使っちゃったの、補充しに行きたい。」

「ああ、行こうか。」

二人きりになったのは、あの別れた日以来だな、とジェイドは少しどきどきした。本当なら、昨日は、エルドラドの希望でささやかな結婚式を挙げていた・・・なんてことはユズの知らないことである。

ユズの包帯とか当て布は何に使ったのかを思い浮かべれば、昨日ウィリアムの怪我は適切に処置されていたことに気が付いた。そういえばジェイドが怪我した時もユズは包帯を巻いてくれていたような気がする。

「でも、ウィルが良く手当させたな」

目を合わせることもさることながら、女子とのふれあいにも彼は過剰に反応する。ユズを女子とは思わなかったのだろうか。

「あー、嫌がってたけど。最後のほうは大人しかったよ」

ユズは無理強いはしないけれど、怪我はほっとけないと押しが強いところもあるので、ウィリアムが折れたのかな、とジェイドは思うことにした。だって見るからに酷い怪我だったことは治療したジェイドも知っている。

「殿下は結構腕の筋肉が良かったよ!弓の名手?なんでしょ」

「ああ、そういうところはしっかり見てるわけ」

「うん、いい筋肉は興奮するよね」

「あ、じゃあユズは、アレクの身体には興奮するのか」

「うーん、あんまり考えたことない。」

アレクシスをそういう目で見たことはそういえばなかったような気がする。ユズはなりたくてもなれない身体だな、と何の邪心もなく小さいころから彼の裸を見てきたから、いまさら興奮、はしないのか、と思い浮かべる。こないだドキドキしたのは、たぶんジェイドのせいだ。二人で密室にいたらそういうことになるのではないか、アレクシス相手に迫られたら抵抗できるのか・・・だけどアレクシスはユズ相手にそういうことは絶対しないのだ、と愛情のような忠誠を示してくれた。それに心底ほっとして、彼への信頼が強くなったことは紛れもない事実だ。

ユズには何の他意もないことなのだが、いちいちジェイドは傷心であった。今日に至っては何もかも中途半端だと言われている気がするのだ。ユズはジェイドに何でもできるとは言ってくれるが、卒なくできるだけで、特別得意なわけではない。武術趣味の彼女の好きな身体はきっと彼女の師匠や兄のような武人の身体なのだろう。腕っぷしも弱いし、胸板が厚いわけでもないし、腹筋が六つに割れているわけでもない自分の身体はどこにもユズが好きになる要素は見つからない。さっきは全部好きだとフォローしてくれたけれど、逆に悲しくなってきた。

「ユズってさ、俺のどこが好きなんだ、あれ、そういえばユズって俺のこと好きだったっけ?もうなんか自信がどっか行っちまったんだけど・・・」

「どうした?」

ジェイドがマイナス思考だ。女々しいことは結構あるし、珍しくはない。

ユズはだけど改めて言葉でジェイドに気持ちを伝えたことはなかったかもしれないと思った。言おうとしたらキス、みたいなことが多かった。

「なんか全然、お前のタイプの男ではないな、と」

「うまく、言えないんだけど・・・」

ユズは薬局で包帯やカーゼや絆創膏を物色しながら、言葉を探した。

「ジェイドが前に言ったじゃない?尊敬し合ったり、思いやり合ったりする関係が大事だって。そのときはよく分からなかったけど、だんだん分かって来たっていうか。あとは理由は、あんまりないもんなんだって思うんだよね、好きというのは、本能で感じるもの?なのかな」

だから、たとえタイプでなくとも好きになることはあるのだと思うのだ。それにジェイドは思い違いをしている。ユズは別にアレクシスみたいな朴念仁が男として好きだったことは一度もないし、筋肉隆々な男は苦手だ。妖狐の里でのあのとき、アレクシスだって本意ではなかっただろうが、力でユズをどうにかしてしまえる人なのだと思ったら、やはり少し怖いのだ。彼は精神の強い人だ。ユズがやめてと言えば自分の欲など擲ってきっとやめてくれる、それは信じられるのだが。

「アレクが?怖いのか」

ジェイドはびっくりしたように聞き返した。

「うん。え、知らなかった?」

確かに、最初の彼女の彼に対する怯え方は恐怖が適当だった気はするが・・・

「アレクに限らない、兄上も怖いしセドも怖い。なんなら、殿下も腕にあんなに筋肉あったら、私は負けちゃうかなって思うから」

グリフォンの加護があっても、すべて女性はそういう恐怖を抱えているものなのだろうか、とジェイドは初めてユズの心に触れた気がした。

「あ・・・なら俺、ひ弱で良かったのか」

「ジェイドは私が守ってあげる」

ユズはにこっと笑ってくれた。ぽかぽかと心が温かくなってくる。なんて、現金な心なのだ、とジェイドは自分自身にため息をついた。だけど自分が他の男に敵わない、と思っていたところが実は逆だったと知れば、ジェイドは嬉しかったのだ。

「やっと笑ってくれた、あまり悩まないで、私はちゃんと好きだよ」

「俺も好き、大好き、愛してる。」

ちょっとうざくなったから、それは困るけど、ユズは買い物を終えて、公園のベンチに彼と二人で腰を下ろす。ここから、サブリナの屋敷が見えた。城ではないが、ここらでは一番大きな屋敷のようだった。

町で聞き込みを少しして、戻ってきたナターシャと情報をすり合わせる。

「サブリナは二十代女性、ウィザードランドヴェストフィーナ領の伯爵令嬢。エドワードとの出会いは16のデビュタント。二十歳で四天王入り、ここに屋敷を構える。滅多に訪れないエドワードに腹を立て、豪奢な買い物や遊興にはまる。エドワードのほかにも多数の男妾がいたが、久しぶりに訪れたエドワードにすべて殺され、今彼女自身が幽閉状態にある・・・なかなかヘビーな案件だな」

「このクリストフって男はだいぶ女関係がやばいわね。自分の浮気はオッケーだけど、相手は一切逃げるのも許さないような執着ぶりだわ。サブリナはまだましなほうよ、アナスタシアのほうは婚約者がいて、その婚約者の首を目の前で刎ねたってさ。狂乱したアナスタシアが自殺しようとしたけどそれも叶わない。人形のように生かしているそうよ」

「・・・だいぶやばいやつだ。ということは、女の人たちも救出しなきゃならないんじゃないか」

ナターシャは頷く。

「でもアナスタシアのほうはどうかしらね、救出したとして、生きていく気力もなさそうに感じだってセドは言ってるけど。」

「アレクのほうは?シャーロットさん」

ジェイドは聞く。

「シャーロットは聖女。彼女は回復魔法、治療魔法要因でひたすら働かされている感じ。もう傷ついた魔法武装兵がとめどなく来るわ来るわ・・・あのままじゃあの子出がらしになっちゃうわよ。早く助けてあげないと。」

ナターシャは言いながら、ユズにメイド服を渡す。サブリナの屋敷のもので、ここは使用人の入れ替わりが激しいから同じ服を着ていれば問題なく潜入できるとのことだ。

「とりあえず見てきたのは三か所だけ、ハインデリヒのとこは妖精王がいるでしょ。ジェイドは姿消せるよね。ユズちゃん、潜入よ!」


***


メイド服に着替えたユズは剣をいったんナターシャに預けた。

「そのメイド服・・・いや、なんでもない」

「わかるわよ、ジェイド。クリストフの趣味かもね、メイドにも手を出してるとか、ありがちじゃない?」

「え」

フリルの丈が短いし、ガーターベルトが見えてるし、決して仕事用の服ではない。一体メイドに何をさせるつもりなのか。

「ユズ、やっぱり脱がないか。」

「丈が短いドレスはありだよな!動きやすい!」

ユズは普段はスラックスで上半身は帷子にシャツという軽武装だから、スカートは滅多に着用しない。ドレスは丈に寄ったら邪魔で動きにくいから好まない。これは良い感じに足が出るので、まあまあだ。

「ユズちゃんってペチコートパンツぐらいは見せても何にも気にしないタイプよね」

「俺が気にするんだわ!頼むから着替えてくれ!」

ユズはジェイドを無視して屋敷に入れば、使用人がそれぞれ仕事をしている。ここを管理しているのはクリストフの側近のアドガー卿だ。喫緊はサブリナ嬢の救出に目途をつけて、ゲートのありかを割り出し、破壊するのがいいだろう。屋敷をきょろきょろと探索している。ユズは一応侯爵令嬢なので、使用人の動きは大体わかる。貴族服を着た人が歩いてくれば隅に控えてお辞儀をしていれば通り過ぎていく。

屋敷は平屋建てで一階の部屋はくまなく見て回ったが、ゲートがあるところは見当たらないし、幽閉されているというご令嬢らしき人も見当たらない。

ここは書斎だろうか、書庫なのだろうか、たくさん本がある。ウィザードランド独自の言語なのか、読めない。ジェイドに貸していた妖狐の眼鏡は帰って来たので、それをつければ字が翻訳された。なんて便利なメガネなんだ。この本はどうやら妖精の研究がされている本のようだ。ユズには難しい内容である。他にも移植術、聖魔法など大魔法使いに関係するような内容が集められているような印象だ。

「ここで何をしている?」

「あ、すみません、迷ってしまって」

声をかけられたらそう言うことに決めておいたからすんなり出てきた。

「若いな、新しいメイドか?」

「はい、今日から配属になったものです」

ユズは深々と頭を下げた。

顔を上げるように言われて、慎重にその男を見た。騎士の服装は一般のものよりもかなり厳かに飾り付けられていて、かなりの身分なのだろう、と推測する。年は三十代くらいか。体躯が鍛え上げられていて、力勝負は相手が油断している第一手しか使えないか、とユズは思考回路をまわす。グレーの髪にアメジストをはめ込んだような紫色の目の、容姿の整った男だった。

「ほお、若いな、いくつだ」

「16です」

「そろそろ若い娘をとメイド長に言うつもりだったが、あいつは良く分かっているな」

これは・・・私はハニートラップを仕掛ける立場にある・・・?ユズは大役を預かっている気がする、とごくりとつばを飲み込む。

「何かご所望ですか、ご主人様」

「マシロ!こんなところにいたのね!すみませんご主人様、まだ教育も行き届いておらず。」

マシロって誰だ!とユズは思ったが、メイド長のような初老の女性が、恭しく頭を下げ、その男に近づいた。女性はいきなり魔法で弾き飛ばされ、ユズは駆け寄る。

「醜いものは見たくない。俺の前に面を晒すなと言われたことを忘れたのかマチルダ」

「・・・申し訳ありません、」

その女性はユズの頭を一緒に男に下げた。

「お前なぞに使う魔法も惜しい。マチルダ、若いメイドを広間に集めろ。」

「はい、仰せのままに」

ユズは連れ攫われるようにその部屋から出る。

「あら、いけない、ジェイドを置いてきちゃった・・・ま、いっか」

「ん?ナターシャ?」

「そう。あいつひっどいねぇ、何歳からアウトなのかしら、この子まだ40代くらいじゃない??」

マチルダと呼ばれた女性をナターシャは言っている。彼女はもう986歳なので、だれでも年下、のようなイメージなのだろう。とりあえずマチルダ本人の印象操作をして、若いメイドを招集させた。

「ユズちゃんも行って。・・・ガーターベルトメイド・・・勢ぞろい、圧巻ね。それにしてもみんな青ざめて・・・」

震えている。

男が闊歩してくる。そばには側近らしき男もいた。マチルダは顔を見せないようにベールをかぶっていた。

執事長が「ハーゲン卿、アドガー卿、ようこそおいでいただきました。サブリナ様の準備は整っています。」と言った。

「サブリナ付きのメイドを新しく見繕いたい。」

これに選ばれたら、サブリナに会えるのか、とユズは思った。みんなメイドは頭を下げてとくにハーゲンと呼ばれた男には怯えているようだ。こいつが、例のクリストフ?ユズは頭を下げながら彼の靴が目の前を通り過ぎるのを見る。

選ばれなくても選ばれたメイドについて行くのはどうだろう。靴は何度か、通り過ぎていく。もう隣の女の子が緊張と怯えで目をまわして、倒れるのをユズは支えてやった。選ばれることは死を意味するのだろうか。ユズも怖がった方が良いのかもしれない。

「今日来たばかりだと言ったな。噂も何も知らないようだ。無垢でよいじゃないか」

「この子になさいますか?」

靴がユズの目の前にあって、彼はユズを見下ろしているらしかった。手が伸びてきたのを、とっさに抑え込むのを我慢する。武骨な手が顎をつかんで上を向かせた。酷く、乱暴だ。

「勝気な目だな、気に入った」

思わず睨んでしまった。

「素性をちゃんと確かめたほうが・・・」

アドガー卿は警戒している。このウィザードランドでここのメイドになる意味を知らない女がいるはずがない。

「今朝方、奴隷商人から引き取ったばかりです。なんでもクラウディアからの商人だと。」

執事が説明する。あ、執事がナターシャっぽい。ユズはそっちを見ればウィンクされた。

「なら、ハーゲンの洗礼を受けさせなければな。」

ユズの二の腕をつかんで、クリストフが引きずるように連れて行く。屋敷の奥の執務室から、隠し階段があり、地下へ降りて行けば、ベッドルームがある。お国も部屋があるようだ。

「サブリナの支度をしろ。終わったらお前も可愛がってやる。」

「・・・は、はい」

奥の部屋に彼女はいるのだろうか。


そのまま襲われなくて、よかった。ユズはバクバクバクと危ない橋を渡っていたのではないかと思い至り、ひとまず解放されて胸をなでおろした。

「あたしも一時どうなるかと」

「俺は気が気じゃなかった・・・」

「いい、ユズちゃん、いざってときは入れ替わって、あんたはジェイドと逃げるの。まさか本人がここにお出ましとは悪いくじをひいた気分よ。」

ナターシャはユズに変身した。

「ちょっと双子みたいだ、やめてくれ」

ジェイドはユズ本人を抱き寄せる。ピアスと指輪があるほうが本人だ、とすぐに見分けた。

「本人がいるとなると・・・作戦の遂行は可能なのか。」

ゲートの破壊は転移魔法陣にアルベルトの魔法敷布を組み込む、というものだ。なるべく本人に気づかれないように転移ゲートの所有権をこちらに移す。この敷布を組み込むことでいつでもこちら側からゲートが破壊できるのだ。

「セドはもうアナスタシアさんを保護、ゲートも完了だって。ということはこっちも気づかれるのは時間の問題ってことね。ここにクリストフがいるって情報は流しておいた。」

「やるしかない、か。俺はナターシャと転移魔法陣のありかを捜索する。ユズはサブリナさんと接触してくれ。」


鍵が無造作に捨てられていったから、その鍵で奥の南京錠のかかっている部屋を開けろということなのだろう。ユズはいったんジェイドと別れて、その鍵をもって、南京錠を外す。部屋の真ん中で手をつながれ、裸で吊るされている女の人がいる。髪は乱れて、身体中に情痕とは言い難い、怪我と言った方が適切な傷が無数にあった。

「・・・また時間・・・早く死にたい」

女はユズを見て、そうとだけ言って、ユズから目をそらした。彼女の股からは精液の残滓らしきものが垂れていた。

「新人?そこのノートにやることの手順、書いてあるわよ。」

ユズは促されるままにノートを見て、彼女の拘束をまず解いてやる。

「刃物持ってない?今日こそあいつの寝首を掻いてやる。刺し違えてもね」

ユズはオニキスからもらった小刀は忍ばせていたけど、彼女に渡すのも違う気がして何も答えない。サブリナの目はギラギラしていて、生きることを諦めていないような意志があった。

ノートには傷を治す薬があると書いてあって、それを塗ってから、彼女を風呂に入れることになっている。それから、避妊の薬を飲ませる。なるほど、本当にそういうことをするためだけに幽閉されているのか・・・いつかナターシャに聞いた性奴隷、なんて言葉が思い浮かんで、ユズは恐怖なのか怒りなのかよくわからないもので身体が震える。

サブリナは拘束を解いたらいつもの手順で身を清めて、閨用の下着を身に付ける。

「若いメイドさんね、もしかしてそういうことも初めて?初めてなら、きっとあの人も高度な要求はしないと思うよ」

「高度・・・」

閨ごとに高度も中度も低度もあるのだろうか。

「今日はどんな気分なのかしら、痛いのは、いやだなぁ。アナが狂っちゃったから、あたしのところに来る頻度が多くて困る。メリッサとかともよろしくやってればいいのに。」

サブリナはメイドのことは話し相手だと思っているようだ。ユズは口下手で申し訳なく聞いているだけだが、それでも気晴らしになると饒舌に話す。

「ユズちゃん、ゲート、どこのあったと思う?」

ユズとそっくりなメイドが一人入ってきて、サブリナは目を丸くした。

「双子?あ、今日はそういう趣向?」

「あなたがサブリナちゃん?」

「ナターシャ、彼女に変わってあげるのはどう?」

「即席の変身じゃ、大魔法使いは欺けないのよ、ユズちゃんみたく血をくれなくっちゃ。」

ユズはナターシャに血をあげたわけではないけれど、セドリックが悪魔に渡したユズの血は全部ナターシャが取り込んだのだという。おかげで肌艶がすごくよくなった。

「ゲートってどこに?」

「寝室のベッドの掛布団カバー」

「・・・やってるときにやるしかないってこと」

「それが確実、かなァ」

サブリナはユズとナターシャの言っている内容を聞いて、目を輝かせる。

「もしかして、助けに来てくれた?私ここから出られるの?亡命先は!?ここから出てもあの人がいるんじゃ、ウィザードランドにはいられない・・・それこそ、パトリオットに亡命しなきゃ」

でも一年位前から行方不明って聞いている・・・と悲しんだ。サブリナはクリストフの相性にされてしまったが、元来はパトリオットの大ファンである。

「アルベルトはジェイドが解放したの。」

「ユズちゃんはパトリオットの手のものよ。あたしがあなたの血を吸って、あなたに化けて敷布を魔法陣に組み込むのが一番確実と思うけど、血、くれる?」

ナターシャはにっこり笑う。もうここから出られるなら血なんていくらでも持っていけとサブリナは言う。ナターシャは彼女の腕に採血用の針を刺して血を摂取した。

「彼女、吸血鬼ってやつ、初めて会ったわ」

「私も。ナターシャ以外は知らない。」

「ノースランドに生息してるかな。さて、時間が迫ってきたわね。」

ナターシャはユズの姿からサブリナに変わって、サブリナにメイド服を渡して、少し容姿を変えてやる。ナターシャはそっと部屋のドアを開けた。

「ぎゃ!着替え終わったらよべっつったろ!」

ジェイドはサブリナの容姿ですごくエッチな格好のナターシャから目を背けた。

「ああ、ガウンとか羽織る派?」

「うんん、いつもこの恰好で行くわ。」

「お前、ナターシャか?ならしょうがない」

「ジェイドって、あたしを破廉恥の権化とでも思ってるのね。ジェイド、サブリナちゃんと姿を消していったん退避。メイドって付き添うのね、ノートを見れば」

サブリナは頷く。

「いつも端で控えて、セカンド要員よ。」

「・・・だ、大丈夫なのか」

「す、すりーぷれ」

ジェイドは何かを口走りそうになったユズの口をそっと塞ぐ。

「安心して、あたし、床上手なのよ♡クリストフぐらい骨抜きにしてやるわ」

百戦錬磨ならぬ千戦以上は経験している吸血鬼様である。骨抜きならぬ血抜きにされてしまうかもしれない。

「ユズ、目をつぶってるんだぞ、決して見てはいけない。」

「オッケー」

軽く返事をするユズにジェイドはため息を吐く。自分の役割を考えれば、ここを出て、アルベルトに連絡を取るのが最善だ。

「気をつけろ、いざとなったら作戦なんて気にせず動いてくれ。クリストフだって分身は出来ないんだ、ここに留めて、捕獲も視野に入れよう。」

ジェイドはそう小声で言って、ユズの頭を撫でてサブリナと一緒に消えてしまう。


ユズはサブリナに扮したナターシャと部屋を出た。一緒にきっとジェイドたちも出たはずだ。向こうの階段に続く扉は閉まっていて、そこを開ける時が至難である。騎士も二人ほど立っているらしい。逃走手段という手段を封じられている。この徹底ぶりが恐ろしい。情事に乗じるしかないようにも思う。ならばナターシャの手腕だ。

しかしユズは徐に入口を開けた。

「どうした?」

「物音がして。あら、大変、騎士さまが倒れています」

ユズは扉に隠れて一人の騎士のみぞおちに拳をぶちこみ、もう一人を絞め落とした。ものの三秒である。

「悪いものでも食べたのでしょうか、誰か別の人を呼びますか。」

しれっとユズはそういう。クリストフは訝しげには思ったようだが、サブリナがぴたっと身を寄せてきて、上目遣いで見てくるので、気がそれたようだ。

「どうした、サブリナ、今日は気分なのか」

「そういう気分のときだってあるわ」

ジェイドと本物のサブリナはうまく部屋を抜けられた。ユズとナターシャは打ち合わせでもしていたのかというくらい鮮やかな連携であった。

「え、あの子何ものなの」

「まあ、強い子だよ、危なっかしいところもあるんだけどさ」

サブリナの驚愕に、ジェイドはさらっと答えて、彼女を屋敷の外まで促した。


ナターシャはクリストフと濃厚なキスをして、ベッドに倒れ込んだ。ベッドは薄いミラーレースのようなカーテンがかかっていて、ユズは見たくても見ることはできないようだ。だけど生の情事というものがすぐそこで行われていく事実に心の準備は出来なくて、目は心配ないなら耳を塞いだ方がいいのだろうか、とそわそわした。

「あ、サブリナっ、ど、どうしたんだ、え・・・・そ、そんな・・・あ、」

なんか思ったのと違う。女の人の喘ぎ声とかじゃなくて、男の喘ぎが聞こえる。

「ええ、もうなの、あたしまだ濡れてもないんだけど。」

「あ、だめ、だめだよ、サブリナっ、まだ敏感でっはぅうう!」


しばらくしてナターシャが出てきた。


「さ、ユズちゃん、行きましょうか」

「・・・・え、始末した?」

「出枯らしにしてやったわ」

ニコリ笑うナターシャに連れられ、ユズも脱出した。


「は!?もう終わったのか」

そんなに驚いたらクリストフが早い、みたいな言い方のようでユズは不憫に思った。

ナターシャは元の姿で戻ってきて、サブリナに初めましてーと挨拶をする。

「ナターシャが終始攻めでね、すごかった!」

「見ちゃダメと言っただろ!」

ジェイドはユズを叱る。見てはいない。聞いていただけだ。

「物足りなかったわ、挿入までいかなかったし。ああいうタイプって自分が女を痛めつけることで征服欲を満たしてるみたいだけど、攻められたことがないのね。」

ナターシャはついでにクリストフの杖を持ってきたと言ってユズに渡す。ユズはその杖を見事半分に折れば、ついていた宝石やらなんやらが割れてはじけた。

「生々しいことは言うんじゃない!ユズの教育に良くないんで!なんか俺が教えてるみたいにお兄さんに思われてるし!!違うのに!!」

まあとにかく、交戦はせずにすんだが、杖がなくなったのも、サブリナが脱走したのも、ばれるのは時間の問題だ。

「とりあえず、ハインデリヒの館へ行きましょう。セドはアレクの方に行ったみたい。」

ナターシャは転移の術を使って、サブリナも一緒にハインデリヒ邸へ飛んだのだった。




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