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異世界焼肉  作者: 天坂 透真


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【第46話】「二週間の勘違いと、鈴の準備」

“あーちゃん探偵”の暴走は止まらない──。

川に流した人形札の効果を確信した彼女は、さらに真相(のつもり)へ踏み込みます。

けれど実際は、えーさんが取材で街を離れているだけで……周囲はみんな事情を知っていて静観中。

コミカルに少しだけスリリング、そんな一週間+休みの日のお話です。


■ 一週間、来ない理由


「あの霊能力者、ただもんじゃないわね……」

店の片隅で、あーちゃんは腕を組んだ。

川に流した“人形のお札”から一週間。えーさんは本当に姿を見せていない。


(やっぱり効いてる……!)


――が、当のえーさんは、取材で二週間ほど街を離れているだけだった。

その事実を知っているのは、お母さんとルミ。

一週間前、旅支度のえーさんが店の前を通りかかった時、二人は笑顔で見送っている。


「二週間ほど出てくるよ」

「いってらっしゃい。……で、えーさん、あーちゃんが最近“探偵ごっこ”に凝っててね」

「あぁ、聞いた聞いた。ちょっと面白いことになってるねぇ。戻ったら、ひと騒動あるかも」

「常連さんには“内緒の内緒”で共有しとくね」

「助かる。帰還のサプライズ、みんなで盛り上げよう」


ヨリ坊や常連たちにも“あーちゃん以外に”事情は回っている。

店の空気はいつも通り。……知らないのは本人だけだった。


■ 休みの日、再び占いのはしご


次の休みの朝。

あーちゃんは小袋の小遣いを握りしめ、いそいそと家を出る。

向かう先はもちろん――タロット占いのガチャ子の店だ。


■ ガチャ子のタロット(今日も絶好調にコミカル)


「はい、いらっしゃい。今日も一枚引いてって~」

「今日は“真実”が知りたいの。ズバッとよ」

シャッ、シャッとカードが切られ、机に三枚、裏向きで並ぶ。


一枚目、オープン。

「カップの9(逆位置)。……飲み過ぎ注意」

「それ、ウチの“レモン酎ハイ男”のことを言ってる?」

「いや“あなたも”ね。試飲のエール三連発は“ちょっと控えめに”」

「むぅ」


二枚目。

「ソードの2。選択とバランス。包丁の切れ味には気を付けて、あと“言葉の切れ味”もね」

「(ぐさっ)」


三枚目。

「タワー(塔)。不意のアクシデント。七輪、ひっくり返さないで」

「ひっくり返さないわよ!」

「念のため、消火の水壺の位置は“3歩で届くところ”に」


ガチャ子はいたずらっぽく笑って、最後にもう一枚、サービスで引かせる。

「ペンタクルの6。与える・与えられる。今日のあなたは“もらう側”より“渡す側”。

鈴やお札を“渡される”より、誰かに“笑い”を渡す方が運気が上がるよ」


「……誰かに笑い、ね。なるほど(でも今日は“鈴の最終確認”に行くの)」

あーちゃんは肩をすくめ、次の目的地へ。


■ 霊能館、二度目の“指南”


街外れ、二階建ての古い館。

鈴がチリンと鳴り、薄闇の室内へ通される。


「戻りました。例のお札、効いたみたい」

女主人は静かに頷く。

「見えております。あなたの“障り”は薄れつつある。だが――帰還の影が近い」


(帰還の影=えーさん帰ってくるの訳。だが本人には“当たりすぎて”聞こえる)


「対処の最終儀式を授けましょう」

「お願いします!」

女主人は、黒い紐で綴じられた小さな包みを取り出す。

中には小鈴と、丸い護符、細長い白い紙片――そして塩。


「鈴は三度。相手の胸元に向け、**“シッポニ・レモン・シュッ”**と唱えるのです」

「……しっぽに? レモン? しゅっ?」

「音に力が宿る。言い切ることが肝要。恐れと怒りは禁物」

「わ、わかったわ」


女主人は続ける。

「塩は左肩に二度、右肩に一度。護符は肌身離さず。白紙は“名を書かずに結ぶ”。

名を記さぬ結びは“縁を解かず、毒だけを祓う”」


(名を書かせて川に流させた一回目から、一気に“それっぽい難度”を上げてきた!)

あーちゃんはすっかり信心の目つきで頷き、小袋の小遣いをざらりと卓へ。


女主人の指先が、わずかにほころぶ。

「最後に。その男は“敵”ではありません。あなたの“問い”を映す鏡です」

「え?」

「鏡は、覗く者の顔を映すだけ。……あなたが“怖い”と感じるのは、実は“あなたの中の何か”」

「…………」


(この一言だけ、なぜか胸に刺さった。けど今は、勝利の鈴が先!)


「準備を整えなさい。帰還は“七日以内”。決戦は近い」


あーちゃんは包み一式を抱えて、上機嫌で館を後にした。

路地の角では、いつの間にか付いてきていたポムが、こちらを見上げて首をかしげている。

「ワン?」

「ふふん、作戦は万全。帰ってきたら鈴“シッポニ・レモン・シュッ”よ!」

(※どう考えても、レモン酎ハイの呪文)


■ 店の裏側は“準備万端”


その頃、店の奥では――。

「えーさん、帰還日“だいたい明後日”ですって」

「了解。『おかえり、えーさん祭』、仕込みOKね」

「鈴に合わせて、レモン酎ハイ三連タワー出しましょ」

「ポム、合図で“わん!”ね。……よし、完璧」


ルミとお母さんと常連一同、いたずらっぽく笑いを交わす。

あーちゃんには内緒の“おかえりサプライズ”は、静かに仕上がりつつあった。


第46話「二週間の勘違いと、鈴の準備」お読みいただきありがとうございました。

川札→不在→“効いた!”の誤解から、さらに鈴と護符で武装するあーちゃん。

一方、周囲は“おかえりサプライズ”の準備でニヤニヤ……次回、えーさん帰還で小さな大騒ぎに!

鈴は鳴るのか、呪文は決まるのか(レモン……?)、どうぞお楽しみに。

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