【第41話】「フェンリルの誓い、ポムの日常」
今回は再びポム視点です。
伝説のフェンリルとしての記憶を抱えながら、日常を守ろうとするポムの“誓い”を描きます。
ルミたちとの温かい暮らしと、その裏で蠢く不穏な影――ぜひお楽しみください。
名前はポムとなった。
……なんとなく違和感があるが、ご主人様が決めたのだから仕方ない。
私はポムとして、彼女たちの日常を観察することにした。
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◆ 朝のルーティンと違和感
この姉妹のお母さん――どうやら犬が苦手らしい。
いや、生き物そのものが少し苦手なのだろう。
……隠密は外せないな。まぁ仕方ない。
ある朝、アーちゃんの寝相が悪かったので、私は隣のベッドに潜り込んだ。
ルミが目を覚まし、こちらを覗き込む。
その顔を見た瞬間、胸に懐かしさが込み上げてきた。
「もふもふ……」
ルミはためらわず、私を抱きしめた。
……悪くない。どこか温かい。
だが、パタパタと足音が近づく。
急いでアーちゃんの枕元に戻る。
――やはり、私には危機を察知する力が強く備わっている。
それはフェンリルとして力を抑えた代償に、逆に鋭敏になった感覚。
数秒後に起こることを察して動けるのだ。
ドアが少し開き、お母さんが「起きなさいよー」と顔を出す。
アーちゃんは私を抱きながら眠そうに身を起こし、私は「ワン」と小さく返事。
……お母さんは思わず後ずさり。
犬嫌いを克服するには、まだ時間がかかりそうだ。
だが面白い。少しずつ距離を縮めてやろう。
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◆ 市場での観察
やがてルミが「仕入れに行こう」と言うので、私は護衛のつもりで玄関で待った。
•飛脚屋タッさん:
「ワン」と言ってやると、大袈裟に転がった。……やはり面白いやつだ。
•八百屋ターザン:
筋肉を鍛える奇妙な習慣を持つ。私も付き合って体を動かした。……悪くない。
•肉屋コージー:
おまけに干し肉をくれる。私は尻尾を振ってやった。結果、ルミも喜ぶ。作戦成功だ。
•香辛料屋ナオ:
……気が抜けない。隠密を強めなければ、私がフェンリルだと気づかれるだろう。
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◆ 不穏の兆し
私は何度も「予知能力」の警告を受けた。
特に、お母さんが「温泉に行く」と言った時。
その瞬間、予知はレッドゾーンを振り切った。
胸騒ぎが止まらない。
あの日、私はアーちゃんとルミに昏睡魔法をかけて飛び出した。
――ギリギリ間に合った。
お母さんとコーチンの間に割って入り、最大限の威圧で退けた。
だが、あの魔鳥からは警告色が消えなかった。
「また来る」と直感が告げていた。
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◆ 二度目の襲撃
そして三連休の最終日。
予知は再びムラサキゾーンに突入。
お母さんの前に現れたコーチンは、仲間を引き連れていた。
私は迷わず立ち塞がった。
一体ずつ焼き払い、水で炎を鎮める。
だが数は多い。
その隙を突かれ、お母さんに魔法が飛ぶ――!
「ぐっ……!」
私は身を挺して受けた。幸い致命傷ではない。
だがすかさずコーチンが噛みついてきた。
私は咄嗟に極大魔法を放ち、周囲ごと焼き払った。
延焼を防ぐために即座に水を放つ。……地形は変わったが、仕方ない。
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◆ 感謝と誓い
家に戻ると、私は倒れ込んだ。
ヒールは使えない。……小さな姿では、力が封じられているのだ。
そこへ帰宅したお母さんが私を抱き上げた。
「ありがとう」
そう言って、癒しの魔法をかけてくれた。
犬嫌いのお母さんが……私を拒まなかった。
ただそれだけで、胸が熱くなった。
私はここにいていい。
この場所を守る。
伝説の魔物フェンリルではなく――“ポム”として。
第41話「フェンリルの誓い、ポムの日常」お読みいただきありがとうございました。
今回はポム視点から、コーチンとの二度にわたる遭遇と、お母さんとの距離の変化を描きました。
犬嫌いだったお母さんが、少しずつポムを受け入れ始めた……その小さな変化は、彼にとって大きな救いとなります。
次回からは、再び日常の「異世界焼肉」へ――けれど、嵐の前触れは確実に迫っているかもしれません。




