↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界焼肉  作者: 天坂 透真


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/48

【第34話】「今を楽しむ日常」

えーさんの作業場で聞かされた秘密、そしてナオさんの旅立ち。

揺れる気持ちを抱えつつも、ルミは「今を楽しむ」という選択を胸に刻む。

姉とポムもまた、それぞれの想いを抱えながら日常を歩んでいく。


えーさんの作業場からの帰り道。

私は胸の奥で、ナオさんの手紙のことと、えーさんの言葉を何度も反芻していた。


「今を楽しむかぁ……」

今いくら考えたところで、何も始まらない。

けれど、私を支えてくれるみんながいる。

お母さんも、お姉ちゃんも、ポムも。

その温かさを思うと、自然と笑みがこぼれた。


——今は今を楽しもう。


⸻


その頃、あーちゃんはポムを抱きながら市場へ向かっていた。

「ねぇポム、この間の休みに何かあったの?」

当たり前だが、ポムは言葉を喋らない。

けれど「ワン」と短く鳴いて、返事のように答えた。


「あぁ……やっぱり、なんかあったんだね」

お姉ちゃんは少し物憂げに呟き、ポムの耳を撫でた。


「……私の記憶がないのも、どうにかならないかなぁ」

小さな声で漏らす。

「記憶がなくても体が勝手に動く。変な感覚だよね。

でも、もしそれを言葉にしたら、私が私じゃなくなる気がして……」


言い終えると、ポムは「ふぅん」と小さく嘆くように鳴いた。

けれど次の瞬間、「ワン!」と力強く吠えた。

「そうだよね。今考えても仕方ない。今を生きるしかないか」

お姉ちゃんは肩の力を抜き、気持ちを切り替えた。


ターザンの八百屋では筋肉ネタに笑い、コージーさんの肉屋ではポムが甘えて癒しを振りまく。

香辛料屋ではナオさんの不在を感じながらも「またすぐ帰ってくる」と信じて、荷物を抱えて帰ってきた。


⸻


その頃の私は、キムチの仕込みを終えていた。

今日はシャキシャキした山芋を漬け込み、ピリッと爽やかな味に仕上げる。

横ではお母さんが、コリコリ食感のチャンヂャを海苔で巻いた「チャンヂャ巻き」を完成させていた。

「お母さんって、本当にすごいなぁ……」

思わず呟くと、お母さんはにっこり微笑んだ。


ちょうどお姉ちゃんとポムも帰ってきたところで、開店の準備が整う。

七輪に炭を入れ、暖簾を掲げる。

「異世界焼肉、本日もオープンです!」


⸻


今日も最初のお客様は、やはりえーさん。

「今日はありがとう」と頭を下げると、えーさんはどこか嬉しそうに笑った。

私は——今を楽しむ姿を、ちゃんと見せられているだろうか。


するとお姉ちゃんがこちらを見て、ふっと眉をひそめる。

「うちの妹に変なことしてないでしょうね?」

「やれやれ」と肩をすくめるえーさん。

その軽いやりとりに、お客たちはクスクスと笑い、店内が柔らかい空気に包まれた。


その後も次々とお客さんが入り、七輪の上で肉が焼ける音と笑い声が絶えなかった。


夜も更け、最後に現れるのは——やっぱりあの男、より坊。

お姉ちゃんに叩かれたり、ポムに吠えられたりしながら、結局ドワーフ腹になるまで飲まされて千鳥足で帰っていった。


片付けが終わると、恒例のシーン。

お母さんが腕をしっかり伸ばし、ポムに干し肉を差し出す。

「今日もよく頑張ったわね」

ポムはしっぽをぶんぶん振りながら干し肉を頬張った。


その姿に笑いながら、私は心の中でつぶやいた。

「異世界焼肉、本日もクローズです」


第34話「今を楽しむ日常」お読みいただきありがとうございました!

揺れる心を抱えながらも「今を楽しむ」という選択をするルミ。

姉とポムの会話を通じて、少しずつ“秘密”の影が深まる一方で、日常の賑やかさが一層引き立った回でした。


次回は、また新しい客や出来事が待ち受けているかも……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。