↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界焼肉  作者: 天坂 透真


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/48

【第32話】「えーさんの誘い」

いつもの日常の中に、少しだけ違う風が吹くことがあります。

今日も異世界焼肉は仕込みから始まりますが、最後には思いがけない“えーさん”からの誘いが…。

物語はいよいよ、新しい局面へ。


朝。

今日もいつも通り、ポムが私の布団に潜り込み、お姉ちゃんの布団へ戻ってからお母さんが半開きのドア越しに「起きなさいよー」と声をかける。

すっかり馴染んだ、我が家のルーティン。


けれど今日は少し違う。

仕入れはお姉ちゃん担当、私はキムチを仕込む番。

そしてお母さんは「今日は腸詰ウインナーを仕込むから、しっかり見ておきなさい」と台所に立った。


私は横からじっと見つめる。

粗挽きの龍肉を香辛料とよく混ぜ、腸に詰める。空気を抜くための細かい作業、火を通したときに弾けないようにするための仕込み…。

ひとつひとつの手順に、熟練の技が光る。

「すごいなぁ、お母さん」

つい口から感嘆がもれる。

お母さんは「毎日続ければ誰だってできるさ」と笑ったけど、やっぱり真似できない。


そこへ、眠そうに目をこすりながらお姉ちゃんが帰ってきた。

「ふぁぁ……ただいまー」

「おかえり。いいところだから急いで着替えて!」

そうしていつものように準備が整い、七輪に炭を入れ、暖簾を掲げる。


「異世界焼肉、本日もオープンです!」


⸻


最初のお客さんは、やっぱりえーさんだった。

一人席に腰を下ろすと、今日の一品――腸詰のウインナーを見て、満面の笑みを浮かべた。

「これは大好物なんだよ」

そう言って、ハフハフしながら頬張るえーさんの顔は、まるで子供のようだった。


さらに今日はタンとサムギョプサルも注文。

肉を一枚一枚、丁寧に焼き、唐辛子とニンニクをのせ、野菜で折りたたむようにして食べる。

食べ方に人柄が出るとはよく言うけれど、えーさんの姿はどこか慎ましく、そして力強かった。


そんなとき、ふと目が合った。

「ルミちゃん、明日……私の作業場に来るかい? 少し話をしてあげよう」

「えっ?」思わず声が裏返った。


すぐさまお姉ちゃんが割り込む。

「私も行く!」

するとえーさんは首を横に振った。

「何も取ってくやしねーよ。真剣な話だ。嫌ならやめとく」

少し困ったような笑みを浮かべるえーさん。

けれど私は即答した。

「行きます!」


その場で作業場の住所を聞き、胸の鼓動が早まるのを感じた。

お姉ちゃんは横で「なによー」と唇を尖らせていたけど。


⸻


えーさんはその後もエールを傾け、大好物の腸詰をすべて平らげ、お腹をドワーフ腹にしながら「ごちそうさん」と帰っていった。


私は気になって仕方がない。

けれど、目の前の現実も待ってくれない。

次々と訪れるお客さんの笑顔に応えながら、今日も店は賑わっていった。


最後はいつものようにより坊が現れ、ポムとお母さんの掛け合いでひとしきり笑いが起こる。

「異世界焼肉、本日もクローズです!」


けれど私の胸の奥には、明日への期待と少しの緊張が静かに灯っていた。


第32話「えーさんの誘い」お読みいただきありがとうございます!

ついにえーさんがルミに「作業場に来い」と誘う展開になりました。

これまでの“見守る存在”から一歩踏み込み、いよいよ物語が動き出す予感です。


次回は、その作業場で何が語られるのか――。

どうぞお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。