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異世界焼肉  作者: 天坂 透真


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【第28話】「星空と厄災の気配」

丘でのBBQは、楽しい笑い声と肉の香りに包まれたひととき。

けれどその夜、満天の星空の下で、思いがけない緊張が訪れる。

ナオさんが放った一言——「厄災が来る」。

今までの日常とは違う空気が流れ始めた夜を描きます。

BBQの火が落ち着き、みんなが思い思いにくつろいでいた頃。

ナオさんがふと口を開いた。


「そろそろいいかな……火は、少しだけ残しておくれ」


その言葉に従い、焚き火は小さな明かりを残すだけとなった。

周囲には誰もいない。今夜は、このヨルゼンの丘を独り占めできている。


「ルミ、上を見てごらん」


促されて空を仰ぐと、そこには満天の星が広がっていた。

昼間は気づかなかったが、街の灯りが届かないこの場所だからこそ、暗闇の中でひときわ輝く星々。

私は思わず「綺麗……」とつぶやいていた。


古代から輝き続ける夜空。

その景色を前に、心が澄み渡っていく。

「ここまで来てよかった」

心からそう思えた瞬間だった。


⸻


◆ 野営と見張り


夜も更けて、風雷のメンバーが交代で見張りを買って出てくれた。

ヒョウさんも周囲を気にかけ、私はナオさんと共にテントに入った。

「おやすみなさい」と小さく声をかけ、眠りに落ちようとしたとき——


「……まずい」


ナオさんの低い声が空気を震わせた。


⸻


◆ 厄災の気配


普段なら盗賊や野生の魔物程度、ナオさん一人でも余裕だと言っていた。

けれど、そのナオさんが「焦っている」。

私は胸の奥が冷たくなった。


「ルミ、これを持って隠れていなさい」


手渡されたのは、藁で作られた人形だった。

「身代わりの藁人形。もしもの時、これが君を守る」


ナオさんは続けた。

「これから“厄災”が来る。私たちがピンチになったら、迷わず逃げるんだよ」


私は息を呑んだ。

ヒョウさんや風雷のメンバーにも同じ藁人形を渡し、彼らも馬車と共に隠れるよう指示される。


だが、彼らでさえ気配を感じていない。

「まだなのに……ナオさんはもう感じ取っている」

私はただ、息をひそめて見守るしかなかった。


⸻


◆ 咆哮


空気が変わった。

重く、冷たく、肌を刺すような圧が広がる。


——私にも、わかった。


まだヒョウさんも風雷も気づいていない。

けれど、ナオさんだけが、すでにその“存在”を見据えていた。


そのとき、丘の向こうから轟くような咆哮が響いた。

夜空を震わせる雄叫び。


「……っ!」


私は藁人形を握りしめ、ただ祈るしかなかった。

異世界焼肉、今非常にピンチです——。


第28話「星空と厄災の気配」お読みいただきありがとうございました!

楽しいBBQから一転、ナオさんが放つ「厄災」という言葉で一気に緊張が高まる回でした。

次回はついにその“姿”が現れるのか……ぜひ続きを楽しみにしていただければ嬉しいです。

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