【第27話】「馬車の旅と丘の昼食」
街を出て初めての本格的な旅路。
ナオさんや風雷のみんなと一緒に、ヨルゼンへ向かう馬車の中で交わされる会話は新鮮で、少し心が弾む。
今回は、馬車の中のにぎやかな時間から、丘の上でのお昼、そして夕方のヨルゼン到着までを描きます。
街の門を出てしばらく進むと、往来する人や馬車もまばらになり、静かな道が続いていた。
車輪が小石を踏む音と、風の音だけが響く。そんな中、ナオさんがいろいろな国の話をしてくれた。
遠くの砂漠の国、山岳地帯でしか採れない香辛料の話、そして各地の食文化まで。私は耳を傾けながら、馬車の窓から広がる景色を眺めた。
御者席に座っていたヒョウさんの隣に、風雷のリーダー・エイトが腰を下ろした。
「僕は攻撃魔法が得意なので、先手は任せてください!」
そう言うエイトに、ヒョウさんはにやりと笑って答える。
「頼もしいねぇ。ここはかっこいいとこ見せるチャンスだな。でも油断するなよ。わしも探知魔法は常に張ってる。撃ち漏らしは任せな」
その掛け合いを聞いて、私は安心した。二人が守ってくれるなら、この旅は安全に違いない。
馬車の後方では、シオンが相変わらず軽口を叩いてレイナに拳骨を食らい、チュンは「じっとしてられねぇ!」とばかりにモソモソと体を動かしていた。
そんな光景に笑いながら、ナオさんも「若いなぁ」と楽しそうに目を細めていた。
⸻
◆ 丘の上の昼食
昼頃、私が用意してきた弁当を広げた。
実はナオさんと私の二人分しか作ってこなかったので、風雷の4人はよだれを垂らしながらこちらを見ていた。
「ぐぅぅ……」「いい匂いだ……」
冒険者の常食は干し肉や硬いパン。焼肉弁当なんてそうそう口にできるものじゃない。
「ごめんね、今日は二人分しか……」
私がそう言うと、エイトたちは「仕方ないさ!」と笑って干し肉をかじった。
横目で見ながら、ナオさんと私は龍焼肉弁当を美味しく平らげた。
昼を食べた場所は、小高い丘の上。
振り返れば、遠くに暮らしている街が見えた。
「やっぱりみんなで食べると美味しいね」
私がつぶやくと、風雷のみんなも同意するように干し肉を頬張っていた。
青空の下、笑い合いながら食べたご飯は、格別の味がした。
⸻
◆ ヨルゼン到着
夕方。
ようやく目的地のヨルゼンに到着した。
観光客が多い場所だが、人が少ない時間帯には盗賊が出ることもあると聞いている。
けれど今回は心配なかった。風雷が主導して野営の準備を進め、私はヒョウさんとナオさんと一緒に夕食の支度をした。
私の空間魔法からは、BBQ台や薪、調理道具を取り出す。
「すごいなぁ! まるで屋台じゃないか!」とシオンが歓声をあげる。
「ちゃんと野菜もあるよ」と私が笑うと、レイナは「野菜も必要よね!」と頷き、チュンは「肉! 肉はまだか!」とせかしてくる。
お肉は多めに持ってきていたので、みんなで分けても十分な量があった。
そしてナオさんが「これもあるぞ」と懐から酒瓶を取り出したとき、風雷の4人の目がさらに輝いた。
「さすがナオさん!」「最高だ!」
こうして焚き火とBBQ台の煙が夜空へと立ち上り、楽しい夕餉が始まろうとしていた。
異世界焼肉本日はBBQ
第27話「馬車の旅と丘の昼食」お読みいただきありがとうございました!
街を離れた初めての旅。仲間たちとのやり取りや、外で食べるご飯の美味しさを描いてみました。
いよいよ夜の野営。次回は焚き火を囲んでの一幕をお届けします。




