【第23話】「ネバネバと香辛料の帰還」
晴れの日が続き、久々の市場仕入れ。
今日は特別な日——遠征から戻った香辛料屋のナオさんに会える日です。
彼女が持ち帰った“ネバネバ食材”と、ポムがまた巻き起こす騒動。
新しい名物キムチが生まれる一日をお届けします。
◆ 朝のルーティン
最近多かった雨も落ち着き、今日は気持ちのいい快晴。
ここは晴れが多い土地柄だが、遠くの山々が雨を呼んでくれるおかげで、水不足にはならない。
魔法で水を生み出すこともできるが、飲料としては不向きだ。魔力が強すぎて“魔力酔い”するらしい。
——そんな余談を心でつぶやきながら、私はポムを撫でて布団から起き上がった。
いつものように、ポムは私の布団からお姉ちゃんの布団に戻り、お母さんの前で「ワン」と挨拶。
半分だけ開いた扉から「起きなさいよー」と声をかけるお母さん。
変わらない朝のルーティンが今日も始まった。
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◆ 市場へ
今日は私の市場の日。
特に楽しみなのは、遠くへ仕入れに行っていた香辛料屋のナオさんが帰ってくること。
旅好きの彼女は、どこにも行けない私にとって憧れであり、情報の宝庫でもある。
ポムも玄関で散歩を待ちわびていた。
「よし、行こうか」
最初に向かうのは飛脚屋のタッさん。
やっぱり今日も——「ワンッ!」
ポムに吠えられて、タッさんは大荷物を抱えたまま転がり落ちそうになる。
なんとか荷物は無事だったが、さすがに本気で怒っていた。
ポムは涼しい顔をして、しっぽを揺らすばかり。
次に向かった八百屋のターザンさんの店では、恒例の筋肉アピール。
「マッスル! 今日も一緒に筋トレだ!」
ポムもぴょんぴょん跳ねて付き合う。
今日は「野獣の一撃」と名付けられたとうもろこしが収穫されたばかりとのこと。
私は思わずまとめ買いしてしまった。
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◆ 肉屋と香辛料屋
そして、ポムの足取りが一気に早まる。
コージーさんの肉屋だ。
「おー、待ってたぞポム!」
今日もポムに癒されるコージーさんと、奥で笑顔を見せる奥さん。
いつものお肉を仕入れると、ポムにこっそり干し肉を渡してくれる。
「でかしたな、ポム」心の中でガッツポーズをした。
そして、今日一番の楽しみ——香辛料屋のナオさんの店へ。
遠くからでもわかるほど賑わっていて、人だかりができている。
私も人をかき分け、ようやくナオさんと対面。
「ルミちゃん、久しぶり!」
いきなり抱きついてきたナオさん。
ポムにもお土産を差し出す。
「これは犬用の漢方。干し肉ばかりじゃ体に悪いから、これで解毒しなさい」
ポムは嬉しそうに尻尾を振ったが、口に入れた瞬間ちょっと苦そうな顔をした。
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◆ ネバネバ食材
ナオさんは、今回“ネバール国”へ行っていたらしい。
そこにはこの世界で最も高い山があり、薬草や香辛料、そして“ネバネバ食材”が豊富に採れるという。
「体にいいからね、ぜひ料理に使ってみて」
渡されたのはオクラや山芋など。私はさっそくキムチにすることを決意した。
ナオさんは実はSランク冒険者でもあり、空間魔法を駆使して数年分の仕入れを行うのだという。
吟遊詩人として音楽も得意で、街の噴水広場での演奏はいつも人を集めている。
——やっぱり、かっこいい人だ。
少し長居しすぎてしまったので、私は急いでお店へ戻った。
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◆ 開店
オクラを使ったネバネバキムチを仕上げた頃、お母さんの一品料理も完成していた。
七輪に炭を入れ、暖簾を掲げる。
「異世界焼肉、本日もオープンです!」
最初に入ってきたのは、いつものえーさん。
最初は「何これ?」と不思議そうな顔をしたが、一口食べて目を見開いた。
「旨い!」
その声に釣られて、他のお客さんたちも注文し、あっという間に完売してしまった。
私は密かに、より坊の分だけ残しておいた。
閉店間際に現れたより坊に差し出すと、
「健康のためにね」と笑った。
「ありがとな、ルミちゃん」
嬉しそうな顔で食べてくれたが——
結局、姉にレモン酎ハイを無限に注がれて、ドワーフ腹で帰っていった。
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◆ クローズ
片付けを終えると、恒例のシーン。
お母さんが腕をしっかり伸ばし、ポムに干し肉を差し出す。
「今日もよく頑張ったわね」
ポムはしっぽを振り回しながら頬張る。
私はそっと漢方も差し出した。
ポムは「うぇ」と顔をしかめたように見えたけど、健康のためだ。
その姿に笑いながら、私は心の中でつぶやいた。
「異世界焼肉、本日もクローズです」
第23話「ネバネバと香辛料の帰還」お読みいただきありがとうございました!
旅する香辛料屋ナオさんの登場で、新しい食材“ネバネバ”が異世界焼肉に加わりました。
お客さんの健康管理まで気にかけるルミの優しさも、このお話のテーマです。
次回は、また常連たちが新しい一品をきっかけにドタバタを巻き起こします。お楽しみに!




