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異世界焼肉  作者: 天坂 透真


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【第22話】「久々の雨、もつ鍋の日」

異世界焼肉には、雨の日だけ出す“特別なメニュー”があります。

前に嵐の日に誕生した“もつ鍋”は、その時は家族だけの試作品でした。

そして今日、久々の雨にあわせていよいよお店で登場します。


しばらく続いた晴天の日々。

常連たちも焼肉を楽しみに来てくれて、毎日賑やかだった。

だが、今日は朝からしとしとと雨。

久しぶりの雨音に、ポムは窓辺で「ワン」と吠えて、しっぽを揺らしていた。


お母さんは嬉しそうに微笑む。

「よし、今日は“雨の日限定もつ鍋”を出そう」

試作品として作ったあの日の味を、ついにお客さんへ。


⸻


◆ 仕込み


ホルモンを丁寧に下処理し、にんにくと唐辛子を効かせたスープに投入。

さらに私の漬けたキムチの汁を少し加えてコクを出す。

お姉ちゃんは大量の野菜をざくざく切り、ポムは足元で“うどん踏み”の真似をして遊んでいた。


ぐつぐつと煮え立つ香りに、胸が高鳴る。

「これなら絶対に喜ばれる」

そんな確信が湧いてきた。


⸻


◆ 開店


七輪に炭を入れ、暖簾を掲げる。

「異世界焼肉、本日もオープンです!」


雨なのに、いや雨だからこそ、店の前にはずらりと行列。

噂を聞きつけて“雨の日もつ鍋”を目当てに来た人たちだ。


もちろん先頭はえーさん。

「やっと食べられる日が来たか」

一人席で鍋を待ちながら、目を輝かせている。


⸻


◆ 大人気の雨の日限定メニュー


熱々のもつ鍋が運ばれると、店中に立ち上る香りに誰もが目を丸くした。

「これは旨い!」

「雨の日にぴったりだな!」


えーさんは大汗をかきながらも、幸せそうに箸を進める。

「ルミちゃん、これは元気になるね」


お姉ちゃんは鍋奉行を気取って、常連たちの席を回る。

「こっちは火が弱いよ、肉は沈めて!」

その姿に爆笑が起こり、より坊がまた余計なことを言いかけた瞬間——

「ワンッ!」

ポムが吠えて場を止めた。

「お前よりポムの方が空気読むじゃん!」

みんな大笑い。より坊は苦笑しながらレモン酎ハイを煽った。


⸻


◆ クローズ


夕方まで、雨の中でも満席。

限定数のもつ鍋が完売し、最後のお客さんを見送ったときには、心地よい疲労感でいっぱいだった。


片付けが終わると、お母さんはいつものように腕をしっかり伸ばして、ポムに干し肉を渡す。

「今日もよく頑張ったわね」

ポムはしっぽをぶんぶん振りながらご褒美を受け取り、満足げに丸まった。


私はそんな光景を眺めながら、心の中でそっとつぶやいた。

「異世界焼肉、本日もクローズです」


第22話「久々の雨、もつ鍋の日」お読みいただきありがとうございました!

ついに雨の日限定メニューとしてお披露目された“もつ鍋”。

嵐の日に生まれたアイデアが、こうしてお客さんの笑顔につながるのは、なんだか感慨深いですね。


次回はまた、常連さんたちのちょっとした人間模様が描かれます。

お楽しみに!


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