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異世界焼肉  作者: 天坂 透真


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【第20話】「嵐の日のホルモンうどん」

嵐の日でも、異世界焼肉の一日は止まりません。

仕入れができなくても、あるもので工夫して作る「雨の日限定メニュー」。

今日は女三人+一匹で挑む“ホルモンうどん”。

雨音をBGMに、七輪の鉄板から立ちのぼる湯気と笑い声。

そんな一日をお届けします。


夜中から降り続いていた嵐のような雨。

ごうごうと吹き荒れる風と打ちつける雨音を聞きながらも、朝はやってきた。


布団の中には、当たり前のようにポムが潜り込んでいる。

ふわふわの毛に顔をうずめ、もう少しこのままでいたい……そう思っていたが、やがてポムは布団から抜け出し、お姉ちゃんの寝床へ戻る。

そして、お母さんの前で「ワン」と短く吠え、いつものルーティンが今日も始まった。


⸻


◆ 嵐の日の提案


「今日は嵐だから、買い出しは行かなくていいよ」

お母さんがそう言って、キッチンへと向かう。


「あるもので一品作るから、手伝ってね」


その言葉に、ポムは散歩が中止になったことを察したのか、窓の外に向かって吠えまくっている。

「この子、人間の言葉わかってるんじゃない?」

私は苦笑しながらキッチンへ足を運んだ。


お姉ちゃんもグズグズ言いながらもついてくる。

そしてポムも、結局は吠えるのをやめて台所へやってきた。


⸻


◆ 雨の日限定メニュー


「今日は肉と野菜、それに小麦粉があるから、うどんを作るよ」


お母さんの提案は“雨の日ホルモンうどん”。

鉄板で肉と野菜とうどんを焼き、七輪の上に置いてお客さんに自分で焼いてもらうスタイル。

普段はやらないが、嵐や大雨の日限定で出している人気メニューだ。


「雨の日目当てで来る人もいるくらいだからね」

お母さんがそう言って笑う。


うどん作りは女三人でも重労働。

けれど今日は“ポム”も参加する。

足で踏む工程に加わり、ちょこんと乗ってはふみふみ。

「ポムも一人前ね」

笑い声が絶えず、嵐の日なのに台所は晴れやかだった。


⸻


◆ 開店


うどんが仕上がると、ちょうど開店準備の時間。

七輪に炭を入れ、暖簾を掲げる。


「異世界焼肉、本日もオープンです!」


外は大雨。

それでも傘やカッパを着込んだ人々が、この“雨の日限定ホルモンうどん”を目当てにずらりと並んでいた。


もちろん先頭は、いつものえーさん。

店内はすぐに満員になり、外にも列が続く。


「今日はひとり一人前までです!」

食材が限られているので、私は並んでいる人たちにそう伝えた。


⸻


◆ 大盛況


七輪の鉄板でジュウジュウと焼かれるホルモンうどん。

香りが立ち上るたびに「うまい!」という声が響き渡る。

普段は食べられない特別感もあり、店内は熱気と笑い声であふれていた。


雨の日の限定メニューは、いつしか嵐の日の楽しみとしてすっかり定着していた。


⸻


◆ より坊の一幕


閉店間際、のれんを押し分けて入ってきたのはより坊。

「なぁ、ホルモンうどん、もう無いのか?」

残念そうに尋ねる顔が印象的だった。


「もう売り切れよ」

アーちゃんがピシャリと答える。


けれど、代わりにレモン酎ハイを差し出し、

「あてはこれしかないけど」と私のキムチを出してあげると、

より坊は嬉しそうに「ありがとよ!」と受け取った。


……結局そのまま、ドワーフ腹になるまで飲まされて帰っていった。


⸻


◆ クローズ


やがてお客さんが引け、店は静けさを取り戻す。

片付けを終えると、お母さんが腕をしっかり伸ばし、ポムに干し肉を渡した。


「今日もよく頑張ったわね」


ポムはしっぽをぶんぶん振り、嬉しそうに干し肉を受け取る。

その姿に、私とお姉ちゃんは思わず笑い合った。


食材はほとんど使い切った。

明日も嵐が続くらしいから、久々に休みになるだろう。

「どこにも行けないけど、ゆっくりできるなぁ」


そんなことを思いながら、私は心の中でつぶやいた。


「異世界焼肉、本日もクローズです」


第20話「嵐の日のホルモンうどん」お読みいただきありがとうございました!

今回は“雨の日限定メニュー”がテーマ。

普段は出さない料理があると、常連さんも新鮮な気持ちで楽しんでくれる。

そんな雰囲気を描きたかった回です。


次回は休業日——でも、休みの日にしか見えない景色が待っているかもしれません。

お楽しみに!


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