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異世界焼肉  作者: 天坂 透真


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【第19話】「白のオーラと辛口の夜」

異世界焼肉の一日は、肉の香りと笑い声に包まれています。

けれど時折、不思議な出来事がそこに差し込んでくるのです。

今回は、えーさんが“お姉ちゃんのオーラ”を見てしまう回。

さらに、ヒョウさんの「辛いもの勝負」で大汗を流す姿も。

ポムも大活躍で、今日も笑いに満ちた一日が始まります。

また新しい朝の始まり。

目を覚ますと、ポムが当たり前のように私の布団に潜り込んでいた。

ふわふわの毛に顔をうずめると、温もりに包まれ、ほんの少しだけ二度寝したくなる。


けれど、お母さんが部屋の前に来て扉を半分ほど開ける前には、ポムは必ずお姉ちゃんの布団へ戻る。

そしてお母さんの前にちょこんと座り、「ワン」と短く挨拶。

お母さんはドアを少しだけ開け、「起きなさいよー」と声をかける。

——毎日変わらない、けれど愛しい朝のルーティンだった。


⸻


◆ 市場へ


今日は私の仕入れの日。

そして、ヒョウさんが「三日間通う」と言っていた最終日でもある。

「ちょっと辛いものを仕入れておこうかな」

そう考えながら、玄関で待っているポムと一緒に外へ出た。


八百屋のターザンさんは、今日もタンクトップ姿で筋肉を見せつける。

「ルミちゃん! 今日はミョウガが入ってるぜ!」

サムズアップするターザンに苦笑しつつ、それを仕入れる。

ポムは横で一緒に筋トレしているように飛び跳ね、ターザンも大笑い。


次は肉屋コージーさん。

「おっ、待ってたよ!」

ポムが足早に駆け寄ると、コージーさんは極上干し肉を片手に手を振って迎えてくれた。

ポムは尻尾をぶんぶん振って大満足。


さらに、コージーさんは声を潜める。

「山型龍のシャトーブリアンが入ってる。こっそり入れておいてやるから、三人で味わってみな」

「えっ、本当に? ありがとうございます!」

思わぬ恩恵に、私は心の中で「ポムでかした!」と叫んでいた。


⸻


◆ 仕込みと開店


お店に帰ると、お母さんはすでに今日の一品を仕上げていた。

私はキムチを仕込み、仕上がった頃には開店準備の時間。


七輪に炭を入れ、暖簾を掲げれば——

「異世界焼肉、本日もオープンです!」


⸻


◆ えーさんと“お姉ちゃんのオーラ”


最初に入ってきたのは、いつものえーさん。

カウンターに座り、静かに注文を告げる。


そこへ、お姉ちゃんがずいっと前に出た。

「ねぇ、えーさん。私のオーラも見てよ!」


やっぱり聞いてたんだな……私は内心ため息をついた。


えーさんは困った顔をして、首をすくめる。

「まいったなぁ……本当はあんまり言いたくないんだけど。勘弁してくれないかい?」


「妹には教えて、私には教えてくれないってひどくない?」

食い下がるお姉ちゃんに、店中の視線が集まった。


「しょうがないなぁ……」

えーさんは少し考え込んでから言った。

「白……だけど、ちょっとグレーがかってるな。疲れてるんじゃないか?」


「えっ……あ、当たってる。最近ちょっと体調不良なのよ」

お姉ちゃんは動揺しながらも、どこか嬉しそう。


「白って、いいの? 悪いの?」

「絵の具でいうと、何にでも混ざる色。怒ってる人も包み込めるし、透明な時は共感もしやすい。……けど、流されやすい一面もある」


そこまで話して、えーさんは「ここまで」と区切った。


お姉ちゃんは嬉しそうに「しょうがないわね」と言い、いつもより肉を一切れ多めにえーさんへ渡した。

私は「いいなぁ……」と正直思った。


その後、えーさんは私にこっそり耳打ちしてきた。

「でも流されやすいのは事実だな。怒りに同調することもあるから、気をつけてな」

その顔は悪戯っぽく、私は思わず笑いをこらえた。


⸻


◆ ヒョウさんの“辛くない”


えーさんが満足げに帰った後、一人席に御者のヒョウさんが座った。

「今日は最終日だからな……辛い純豆腐、頼む!」


出てきた鍋を勢いよく食べ始める。

「辛くない! 辛くない!」

そう言いながら、額から汗をだらだら流し、全身汗まみれになっていく。


「大丈夫ですか?」と声をかけると、

「平気だ! これくらい……辛くない!」

と叫びながらビールを流し込む。


けれど最後には、お腹がドワーフみたいに膨れ、ぐったりとしながら「満足だ」と言い残して帰っていった。


⸻


◆ クローズの時間


やがてお客さんが引け、店は静けさを取り戻した。

片付けが終わると、お母さんがいつものように腕を伸ばし、ポムに干し肉を渡す。


「今日もよく頑張ったわね」

ポムはしっぽをぶんぶん振り、嬉しそうに干し肉を受け取る。


その姿に、私とお姉ちゃんは思わず笑い合った。


今日も不思議な話を聞けて、誰かの癒しになれた。

その誇らしさを胸に、私は小さくつぶやいた。


「異世界焼肉、本日もクローズです」


第19話「白のオーラと辛口の夜」お読みいただきありがとうございました!

今回はついに、お姉ちゃんのオーラが“白”だと判明。

人を包み込む優しさと、流されやすさを持つ彼女らしい色でした。

そしてヒョウさんの「辛くない」連発も見どころ。

笑いあり、不思議ありの回でした。


次回はさらにポムが大活躍する予感!?

どうぞお楽しみに!


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