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異世界焼肉  作者: 天坂 透真


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【第18話】「緑のオーラと夢の言葉」

異世界焼肉の日常は、肉の香りと笑い声に満ちています。

けれど時折、不思議な出来事がその中に紛れ込むこともあるのです。

今回は、えーさんが語る“オーラ”と、夢に響いた「生まれてきた理由」の言葉。

少しだけ胸の奥がざわつくような、そんな一日を描きます。


また新しい朝の始まり。

目を覚ますと、ポムが当たり前のように私の布団に潜り込んでいた。

ふわふわの毛に顔をうずめると、温もりに包まれるこの瞬間がたまらなく愛おしい。


けれど、お母さんが部屋の前に来て扉を半分ほど開ける前には、ポムは必ずお姉ちゃんの布団に戻っていく。

そしてちょこんと座り、「ワン」と一声。

お母さんは相変わらず少しだけドアを開けて「起きなさいよー」と声をかける。

——最近、すっかり当たり前になった毎朝のルーティンだった。


⸻


◆ 夢の中の言葉


今日は少し違う。

なぜか——夢の中でえーさんの言葉を思い出していた。


「人はなぜ生まれてきたと思う?」

「……何かを成すために、生まれてきたんだよ」


その後の記憶はない。けれど、この言葉だけが鮮明に焼き付いている。


私は最近の記憶しかない。

でも、身体は自然に動き、料理も接客もこなせる。

まるで以前からやっていたかのように。


えーさんは——私のことを全部知っているのだろうか。

そんな気がして、少し胸がざわついた。


⸻


◆ 仕込みと開店


お母さんは今日の一品を仕上げていた。

私はキムチを仕込み、仕上がるとちょうど開店準備の時間。

七輪に炭を入れ、暖簾をかける。


「異世界焼肉、本日もオープンです!」


⸻


◆ えーさんとの会話


一番にやってきたのは、やはり常連のえーさん。

いつものカウンター席に座り、今日は塩たんを注文。

一枚一枚を丁寧に焼き、塩胡椒をきかせて楽しむ姿は落ち着いていて、見ていて安心する。


やがて他の席も埋まり、店内は活気に包まれる。

私は忙しく走り回りながら、えーさんの注文した今日の一品「いりかす」と青梗菜のキムチを運んだ。


「ありがとう。やっぱりこれがあると嬉しいね」

柔らかな笑みを浮かべるえーさん。


私は勇気を出して聞いた。

「えーさん……私のこと、見えてるの?」


えーさんは一瞬気まずそうに視線を落としたが、静かに答えた。

「んー……わかってるよ。でもね、今じゃないんだと思う。それは段々わかってくるはずだから。

今は今を楽しんで、自分を探してごらん」


私は黙って頷くしかなかった。


「じゃあ、私のオーラって見える?」

「オーラか。そうだね……今は緑だね」


「えっ?」思わず声が出る。


「ルミちゃんは爽やかで優しい雰囲気だけど、芯はしっかりしてる。これからどんどん伸びていくよ」

そう言い残し、えーさんはエールを飲み干し、軽く手を上げて帰っていった。


私はその背中を見送りながら、胸がいっぱいになった。

緑のオーラ——それは希望の色だろうか。


⸻


◆ 姉の悪だくみ?


そのやり取りを、でっかい耳で盗み聞きしていたお姉ちゃん。

「ふーん、緑オーラねぇ……」

ニヤリと悪い顔を浮かべる。

何か企んでいるに違いない。私はじっと睨んだが、お姉ちゃんはしれっと笑ってごまかした。

……嫌な予感しかしない。


⸻


◆ ヒョウさんの独り言


その後、一人席に御者のヒョウさんがやってきた。

「やれやれ、まだ疲れが抜けないぜ……」

肉をつつきながらエールを飲む。


「なんか……身体が何かに乗っ取られたみたいな気分だよ」

ぼそりとこぼす声は、旅の疲れか、それとも別の何かか。

けれどすぐに「ま、明日も来るさ」と笑い、帰っていった。


⸻


◆ クローズの時間


やがてお客さんが引け、静かになった店内。

片付けを終えると、お母さんがいつものように腕をしっかり伸ばし、ポムに干し肉を渡した。


「今日もよく頑張ったわね」

ポムはしっぽをぶんぶん振り、嬉しそうに干し肉を受け取る。


その姿を見て、私とお姉ちゃんは思わず笑い合った。


今日も不思議な話を聞けた。

そして、誰かの癒しになれた。


誇らしい気持ちを胸に抱きながら、私は小さくつぶやく。


「異世界焼肉、本日もクローズです」


第18話「緑のオーラと夢の言葉」お読みいただきありがとうございました!

今回はえーさんの言葉に少し深みが増し、ルミの中に“何かを成すために生まれてきた”というテーマが芽吹きました。

同時に、お姉ちゃんの悪だくみが新たな波乱を呼びそうです。


次回は、ヒョウさんの不穏な一言が鍵になるかもしれません。

どうぞお楽しみに!


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