↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界焼肉  作者: 天坂 透真


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/48

【第17話】「えーさんの赤いオーラ」

異世界焼肉の日々は、同じように見えても、毎日どこかに新しい出来事があります。

今日はルミが市場に出かけ、ポムも一緒に大はしゃぎ。

そして常連えーさんが、昨日の「赤いオーラ」の謎を少しだけ語ってくれる回です。

果たしてその力は本物なのか、それともただの直感なのか……。


また新しい朝の始まり。

目を覚ますと、ポムが当たり前のように私の布団に潜り込んでいた。

ふわふわの毛に顔をうずめ、温もりに包まれるこの瞬間が、私にとっては至福の時間。

けれど、お母さんが部屋の前に来て扉を半分ほど開ける前には、必ずポムはお姉ちゃんの布団へ戻っていく。

そしてお母さんの前にちょこんと座り、「ワン」と短く挨拶。

お母さんは相変わらず少しだけドアを開けて「起きなさいよー」と声をかける。

これが、最近すっかり定番になった朝のルーティンだった。


⸻


◆ 市場へ、ポムと一緒に


今日は私が仕入れの日。

すると案の定、ポムは玄関で待っていた。

「やっぱり散歩が気に入ったんだね」

尻尾を元気よく振る姿に、思わず笑ってしまう。


最初に向かったのは、いつもの八百屋ターザン。

「おうルミちゃん! 今日も元気だな!」

タンクトップ姿で筋肉を誇示するターザンは、今日も重たい野菜を軽々と持ち上げては振り回している。

その動きを真似するように、ポムもぴょんぴょん跳ね回る。

「もう、ポムまで筋トレしなくていいのに…」

笑いながら、私はキムチ用の野菜と焼き野菜用、それに一品料理に使えそうな野菜を仕入れた。


次は肉屋コージーさん。

ポムはここが大好きで、足取りが軽い。

案の定、コージーさんに餌付けされて、すっかり懐いている。

「この犬は世渡り上手だなぁ」

私は感心するしかなかった。

それに、コージーさんもポムに癒されているのか、最近は仕入れの料金がちょっと安くなっている気がする。

「でかした、ポム!」と心の中で呟きつつ、いつものお肉を仕入れ、最後に香辛料などを見て回る。


⸻


◆ 仕込みと開店


店に戻ると、お母さんが今日の一品を仕上げていた。

私もキムチの仕込みを進め、仕上げたところでちょうど炭を入れる時間になる。

七輪に火を入れ、暖簾を掲げれば——

「異世界焼肉、本日もオープンです!」


⸻


◆ えーさんの“赤いオーラ”


一番にやってきたのは常連のえーさん。

いつものカウンター席に座り、名物のねぎ塩ツラミを注文する。

一枚一枚丁寧に焼き、塩と胡椒をきかせて食べるその姿は、見ていて気持ちがいいほど落ち着いている。


しばらくすると他の席もいっぱいに。

私はバタバタと走り回りながら、えーさんの注文した今日の一品「純豆腐」と水キムチを持っていった。

「ありがとう。やっぱりこれがあると嬉しいね」

えーさんは柔らかな笑みを浮かべた。


私は意を決して尋ねた。

「えーさん、昨日どうしてあのお客さんの悪いところがわかったの?」


一瞬気まずそうに目を伏せたえーさんは、やがて静かに答えた。

「……あれはね、人の“オーラ”ってやつがわいには見えるんよ。みんなそれぞれ色を持ってるんだけど、昨日の人は肝臓のあたりが赤く濁ってたんだ」


「オーラ…」

私は思わず聞き返す。


「まだ酷くはなかった。上手に付き合えば、まだまだ酒は飲める。けどな、あんまり濁ったオーラを見てると、こっちが疲れちまう。だから、わいは楽しいオーラを見たいんだ。……この店に来るのは、そのためでもある」


そう言うと、えーさんはエールを飲み干し、軽く手を上げて帰っていった。

私はその背中を見送りながら、不思議な気持ちで胸がいっぱいになった。


⸻


◆ 姉の悪だくみ?


そのやり取りを、でっかい耳で盗み聞きしていたお姉ちゃん。

「ふーん、オーラねぇ…」

悪い顔を浮かべながら、何かを思いついた様子だった。

私は嫌な予感がして、お姉ちゃんをじっと見たが、本人はとぼけて笑うだけだった。


⸻


◆ ヒョウさんのひととき


その後、一人席に御者のヒョウさんがやってきた。

「やれやれ、今回の旅はきつかったぜ…」

肉をつつきながらエールを飲み、しばし寛ぐ。

「三日ほど休みだから、毎日ここに通うよ」

そう言い残して帰っていった姿には、疲れの中に安堵が見えた。


⸻


◆ クローズの時間


やがてお客さんが引け、店は静けさを取り戻す。

片付けを終えると、お母さんはいつものように腕をしっかり伸ばし、ポムに干し肉を差し出した。

「今日もよく頑張ったわね」

ポムは嬉しそうに干し肉を受け取り、しっぽをぶんぶん振る。

その姿を見て、私とお姉ちゃんは思わず笑い声をあげた。


今日も不思議な話を聞けたし、誰かの癒しになれた。

そんな誇らしさを胸に抱きながら、私は心の中でそっとつぶやいた。


「異世界焼肉、本日もクローズです」


第17話「えーさんの赤いオーラ」お読みいただきありがとうございました!

今回ついに、えーさんの“オーラ”の秘密が少し明かされました。

人の心や体の状態を色で感じ取る不思議な力。

けれど彼が望むのは、ただ“楽しいオーラ”を見続けたいという願い。

そんな彼の思いが、異世界焼肉をさらに特別な場所にしてくれている気がします。


次回は、姉の悪だくみ(?)やポムのさらなる活躍もありそうです。

お楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。