【第17話】「えーさんの赤いオーラ」
異世界焼肉の日々は、同じように見えても、毎日どこかに新しい出来事があります。
今日はルミが市場に出かけ、ポムも一緒に大はしゃぎ。
そして常連えーさんが、昨日の「赤いオーラ」の謎を少しだけ語ってくれる回です。
果たしてその力は本物なのか、それともただの直感なのか……。
また新しい朝の始まり。
目を覚ますと、ポムが当たり前のように私の布団に潜り込んでいた。
ふわふわの毛に顔をうずめ、温もりに包まれるこの瞬間が、私にとっては至福の時間。
けれど、お母さんが部屋の前に来て扉を半分ほど開ける前には、必ずポムはお姉ちゃんの布団へ戻っていく。
そしてお母さんの前にちょこんと座り、「ワン」と短く挨拶。
お母さんは相変わらず少しだけドアを開けて「起きなさいよー」と声をかける。
これが、最近すっかり定番になった朝のルーティンだった。
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◆ 市場へ、ポムと一緒に
今日は私が仕入れの日。
すると案の定、ポムは玄関で待っていた。
「やっぱり散歩が気に入ったんだね」
尻尾を元気よく振る姿に、思わず笑ってしまう。
最初に向かったのは、いつもの八百屋ターザン。
「おうルミちゃん! 今日も元気だな!」
タンクトップ姿で筋肉を誇示するターザンは、今日も重たい野菜を軽々と持ち上げては振り回している。
その動きを真似するように、ポムもぴょんぴょん跳ね回る。
「もう、ポムまで筋トレしなくていいのに…」
笑いながら、私はキムチ用の野菜と焼き野菜用、それに一品料理に使えそうな野菜を仕入れた。
次は肉屋コージーさん。
ポムはここが大好きで、足取りが軽い。
案の定、コージーさんに餌付けされて、すっかり懐いている。
「この犬は世渡り上手だなぁ」
私は感心するしかなかった。
それに、コージーさんもポムに癒されているのか、最近は仕入れの料金がちょっと安くなっている気がする。
「でかした、ポム!」と心の中で呟きつつ、いつものお肉を仕入れ、最後に香辛料などを見て回る。
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◆ 仕込みと開店
店に戻ると、お母さんが今日の一品を仕上げていた。
私もキムチの仕込みを進め、仕上げたところでちょうど炭を入れる時間になる。
七輪に火を入れ、暖簾を掲げれば——
「異世界焼肉、本日もオープンです!」
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◆ えーさんの“赤いオーラ”
一番にやってきたのは常連のえーさん。
いつものカウンター席に座り、名物のねぎ塩ツラミを注文する。
一枚一枚丁寧に焼き、塩と胡椒をきかせて食べるその姿は、見ていて気持ちがいいほど落ち着いている。
しばらくすると他の席もいっぱいに。
私はバタバタと走り回りながら、えーさんの注文した今日の一品「純豆腐」と水キムチを持っていった。
「ありがとう。やっぱりこれがあると嬉しいね」
えーさんは柔らかな笑みを浮かべた。
私は意を決して尋ねた。
「えーさん、昨日どうしてあのお客さんの悪いところがわかったの?」
一瞬気まずそうに目を伏せたえーさんは、やがて静かに答えた。
「……あれはね、人の“オーラ”ってやつがわいには見えるんよ。みんなそれぞれ色を持ってるんだけど、昨日の人は肝臓のあたりが赤く濁ってたんだ」
「オーラ…」
私は思わず聞き返す。
「まだ酷くはなかった。上手に付き合えば、まだまだ酒は飲める。けどな、あんまり濁ったオーラを見てると、こっちが疲れちまう。だから、わいは楽しいオーラを見たいんだ。……この店に来るのは、そのためでもある」
そう言うと、えーさんはエールを飲み干し、軽く手を上げて帰っていった。
私はその背中を見送りながら、不思議な気持ちで胸がいっぱいになった。
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◆ 姉の悪だくみ?
そのやり取りを、でっかい耳で盗み聞きしていたお姉ちゃん。
「ふーん、オーラねぇ…」
悪い顔を浮かべながら、何かを思いついた様子だった。
私は嫌な予感がして、お姉ちゃんをじっと見たが、本人はとぼけて笑うだけだった。
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◆ ヒョウさんのひととき
その後、一人席に御者のヒョウさんがやってきた。
「やれやれ、今回の旅はきつかったぜ…」
肉をつつきながらエールを飲み、しばし寛ぐ。
「三日ほど休みだから、毎日ここに通うよ」
そう言い残して帰っていった姿には、疲れの中に安堵が見えた。
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◆ クローズの時間
やがてお客さんが引け、店は静けさを取り戻す。
片付けを終えると、お母さんはいつものように腕をしっかり伸ばし、ポムに干し肉を差し出した。
「今日もよく頑張ったわね」
ポムは嬉しそうに干し肉を受け取り、しっぽをぶんぶん振る。
その姿を見て、私とお姉ちゃんは思わず笑い声をあげた。
今日も不思議な話を聞けたし、誰かの癒しになれた。
そんな誇らしさを胸に抱きながら、私は心の中でそっとつぶやいた。
「異世界焼肉、本日もクローズです」
第17話「えーさんの赤いオーラ」お読みいただきありがとうございました!
今回ついに、えーさんの“オーラ”の秘密が少し明かされました。
人の心や体の状態を色で感じ取る不思議な力。
けれど彼が望むのは、ただ“楽しいオーラ”を見続けたいという願い。
そんな彼の思いが、異世界焼肉をさらに特別な場所にしてくれている気がします。
次回は、姉の悪だくみ(?)やポムのさらなる活躍もありそうです。
お楽しみに!




