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異世界焼肉  作者: 天坂 透真


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【第12話】「商売上手な姉の一手」

昨日のソムリエ騒動から一夜。

お姉ちゃんはめげるどころか、さらにパワーアップして今日も元気。

そんな彼女の商売上手っぷりと、相変わらずのより坊との掛け合いが光る一日が始まる――。


朝。

 ここ最近と変わらない日常の空気。

 お姉ちゃんはボサボサの髪をかき上げ、眠そうに目をこすっている。昨日の「ソムリエ事件」をまだ引きずっているのかと思ったが、まったくそんな様子はない。

 むしろ朝からお酒の瓶とにらめっこし、「今日の推しは君に決めた」なんて独り言まで口にしている。


 昨日のことを少し気にしていた私は、内心で「せっかく気持ちよくソムリエごっこしてたのに、より坊が余計なこと言うから……」なんて思っていた。

 でも、それは完全な杞憂だったらしい。

 このたくましさと切り替えの早さこそ、お姉ちゃんの持ち味。そんな姉が私は好きだ。


 とはいえ、いつものようにお母さんに「仕事しろ!」と怒られ、即座に反論して小競り合いが始まる。

 本当に仲がいいのか悪いのか分からない二人だが、少し経てばそんなやり合いもなかったかのように、コーヒーを飲みながら昨日のお客さんの話をして笑っている。

 この切り替えの早さもまた、異世界焼肉の空気そのものだった。


⸻


 今日の一品もそろそろ出来上がり、いい香りが厨房いっぱいに広がる。

 私のお腹もぐぅっと鳴り、自然と笑みがこぼれる。

 七輪に炭を入れ、暖簾をかけたら――今日も元気に異世界焼肉オープンです!


⸻


 しかし今日は珍しくお客さんが少ない。

 「たまにはこういう日もあるか」と思っていると、お姉ちゃんが「ちょっと出てくる」とだけ言い残して外へ出て行った。


 少しして、カランカランと入口のドアベルが鳴る。

 「12人様、入りまーす!」

 勢いよく入ってきたのは、お姉ちゃんに耳を引っ張られているより坊と、その“いつメン”たち。

 あっという間に店内は満員御礼になった。

 ――強引だけど、これは確かに商売上手。ちょっと見習いたい……でも、私には真似できそうにない。


⸻


 賑やかな空気の中、お姉ちゃんは再びソムリエごっこを開始。

 グラスを磨きながら「より坊さん、今日は何を飲まれます?」と優雅に尋ねる。

 空気を読んだ……かと思いきや、より坊は「アーちゃんにお任せの……レモン酎ハイで!」と言ってしまった。

 ――バシッ!

 「水で充分よ!」と、即座にお姉ちゃんの手が炸裂。店内は大爆笑に包まれる。


 もっとも今日は、暇な時間にお姉ちゃんが連れてきた客たちのおかげで、強制閉店にはならなかった。

 その代わり、より坊は閉店まで延々とレモン酎ハイを注がれ続け、ドワーフ腹になるまで飲まされていた。

 お姉ちゃん……やっぱり怖い。でも、商売上手。


⸻


 こうして今日も大笑いと賑わいの中で、異世界焼肉は無事クローズ。

 片付けが終わると、お母さんはいつものように腕をいっぱいに伸ばして、ポムに自家製干し肉を差し出す。

 ポムは嬉しそうにそれを受け取り、尻尾を振る。

 その様子を見て、私も自然と笑顔になった。

 ――今日もいい一日をありがとう。


第12話、お読みいただきありがとうございます!

今日はお姉ちゃんの商売上手っぷりが存分に発揮された回でした。

より坊の相変わらずな空気の読めなさも健在で、ソムリエごっこのやり取りは店内を爆笑の渦に。


次回は、この“いつメン”たちがもう一歩踏み込んで店を賑やかす……かもしれません。

ポムもさらに活躍する予感。どうぞお楽しみに!


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