46
第46話:続いていくもの
「……」
ペン先が、迷いなく走る。
タブレットの上。
線が、自然に繋がっていく。
「……」
(……いい)
弓乃は、小さく息を吐いた。
「……」
少し前まで。
同じように描いていても、どこか引っかかっていた。
「……」
でも今は違う。
「……」
迷いは、ある。
消えたわけじゃない。
「……」
(でも)
「……」
(止まらない)
「……」
そのまま、次のコマへ。
表情を乗せる。
「……」
(……出る)
感情が、自然に出る。
「……」
嘘じゃない。
「……」
ペンが、止まらない。
「……」
数十分。
集中が続く。
「……」
一話分のネーム。
ほぼ完成。
「……」
「……ふぅ」
小さく息を吐く。
「……」
肩の力を抜く。
「……」
そのとき。
「先生」
「……」
振り向く。
結衣。
「……」
「……いい感じですね」
「……」
弓乃が、少しだけ笑う。
「……」
「……描けてる」
「……」
「……ですね」
結衣も頷く。
「……」
「前より、全然安定してます」
「……」
「……うん」
小さく返す。
「……」
「……でも」
少しだけ間。
「……」
「……まだ、怖い」
「……」
正直な言葉。
「……」
「……崩れるかもって」
「……」
結衣が、少しだけ笑う。
「……」
「崩れても戻せるじゃないですか」
「……」
「……」
弓乃が、少しだけ考える。
「……」
「……そうかも」
「……」
完全に消えることはない。
でも。
「……」
(……戻せる)
「……」
それだけで、少し違う。
「……」
スマホが震える。
「……」
画面。
陽斗。
「……」
少しだけ、表情が柔らかくなる。
「……」
――終わりました?
「……」
弓乃が、軽く笑う。
「……」
――もう少し
送る。
「……」
すぐに既読。
「……」
――じゃあ待ってます
「……」
「……待ってるって」
結衣が覗く。
「……」
「……うん」
「……」
「いいっすね」
「……」
弓乃が、少しだけ照れる。
「……」
「……あと少し」
「……」
ペンを持つ。
「……」
最後のコマ。
線を引く。
「……」
迷いはある。
でも。
「……」
(……これでいい)
「……」
完成。
「……」
「……終わった」
小さく言う。
「……」
結衣が、軽く拍手する。
「……」
「お疲れさまです」
「……」
「……ありがと」
「……」
弓乃が立ち上がる。
「……」
荷物をまとめる。
「……」
「……行ってきます」
「……」
「いってらっしゃいっす」
「……」
部屋を出る。
⸻
外。
夜の空気。
「……」
少しだけ冷たい。
「……」
(……終わった)
仕事。
ちゃんと、やれた。
「……」
(……次もやる)
「……」
足が、自然と動く。
「……」
コンビニ。
あの場所。
「……」
(……いるかな)
「……」
角を曲がる。
「……」
いた。
ベンチ。
陽斗。
「……」
スマホを見ている。
「……」
「……陽斗くん」
「……」
顔を上げる。
「……」
少しだけ笑う。
「……」
「……終わりました?」
「……」
弓乃が、頷く。
「……」
「……終わった」
「……」
陽斗が、ふっと息を吐く。
「……」
「……お疲れさまです」
「……」
「……ありがとう」
「……」
自然に、隣に座る。
「……」
距離は、近い。
「……」
手が、触れる。
「……」
そのまま、繋ぐ。
「……」
もう、迷わない。
「……」
「……どうでした?」
陽斗が聞く。
「……」
「……ちゃんと描けた」
「……」
「……怖かったけど」
「……」
「……でも」
少しだけ笑う。
「……」
「……楽しかった」
「……」
その言葉に。
「……」
陽斗が、少しだけ目を細める。
「……」
「……いいですね」
「……」
「……うん」
「……」
静かな時間。
「……」
でも。
「……」
心地いい。
「……」
「……続きますね」
陽斗が言う。
「……」
「……うん」
弓乃が頷く。
「……」
「……これからも」
「……」
「……ずっと」
「……」
二人で、少しだけ笑う。
「……」
簡単じゃない。
きっとまた、迷う。
「……」
それでも。
「……」
続いていく。
「……」
仕事も。
「……」
この関係も。
⸻
――終わりじゃない。続いていく。




