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憧れの漫画家さんが、なぜか僕にだけ距離が近い  作者: 優未緋


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第44話:見ている人


「……」


編集部の廊下。


足音が、静かに響く。


「……」


弓乃は、原稿の入った封筒を抱えたまま歩いていた。


「……」


(……終わった)


今回の分。


出せるものは、全部出した。


「……」


完璧じゃない。


でも。


「……」


逃げなかった。


「……」


それだけは、言える。


「……」


打ち合わせ室の前で、足が止まる。


「……」


一度、深く息を吸う。


「……」


吐く。


「……」


ノック。


「……どうぞ」


中から声。


「……」


ドアを開ける。


「失礼します」


「……」


黒崎が、いつも通りの表情で座っている。


「……」


弓乃は、封筒を差し出す。


「……お願いします」


「……」


黒崎が受け取る。


「……」


そのまま、中身を確認する。


「……」


ページをめくる音。


「……」


弓乃は、立ったまま。


「……」


逃げない。


「……」


数分。


「……」


最後のページ。


「……」


パタン、と閉じる。


「……」


「……安定してきたな」


短く言う。


「……」


「……はい」


「……」


「迷いはある」


「……」


「だが」


「……」


「ブレてはいない」


「……」


その言葉に、少しだけ力が抜ける。


「……」


「……ありがとうございます」


「……」


黒崎が、弓乃を見る。


「……」


「……続けろ」


「……」


「……落とすな」


「……」


「……はい」


「……」


それだけ。


それ以上は、何も言わない。


「……」


弓乃は、小さく頭を下げる。


「……」


ドアに向かう。


「……」


そのとき。


「……弓乃」


「……」


呼び止められる。


「……」


振り向く。


「……」


「……顔が変わったな」


「……」


一瞬、言葉が止まる。


「……」


「……」


黒崎が、少しだけ目を細める。


「……」


「……いい意味で、だ」


「……」


「……」


弓乃の胸が、わずかに熱くなる。


「……」


「……はい」


小さく答える。


「……」


黒崎が、視線を外す。


「……」


「……行け」


それだけ。


「……」


弓乃が、頷く。


「……」


部屋を出る。


「……」


廊下。


「……」


ゆっくり歩く。


「……」


(……認められた)


「……」


完全じゃない。


でも。


「……」


ちゃんと、見てもらえた。


「……」


スマホを取り出す。


「……」


陽斗。


「……」


少しだけ、笑う。


「……」


メッセージを打つ。


――終わった


「……」


送る。


「……」


すぐに既読。


「……」


――お疲れさまです


「……」


その一言で。


少しだけ、力が抜ける。


「……」


歩き出す。


「……」


仕事も。


「……」


恋も。


「……」


どっちも、続いていく。



――見ている人は、ちゃんと見ている。

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