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第43話:次に行くだけ
「……」
原稿チェックの帰り。
夕方の空気。
少しだけ、軽い。
「……」
(一区切り、か)
小さく息を吐く。
「……」
スマホが震える。
「……」
画面。
紗季。
「……」
――今日、時間あります?
「……」
一瞬、止まる。
「……」
(……来たか)
小さく息を吐く。
「……」
――少しなら
送る。
「……」
すぐに返信。
――じゃあ、いつものとこで
「……」
(いつもの、ね)
苦笑する。
⸻
「遅いっす」
「……時間通りだろ」
「体感遅刻っす」
「知らねえよ」
「まあいいっす」
紗季が、くるっと背を向ける。
「入ってください」
「……お邪魔します」
部屋に入る。
「……」
前と同じ空間。
散らかってるようで、整っている。
「……」
「で」
紗季が振り返る。
「単刀直入にいきますね」
「……」
「どうなったんすか」
「……」
逃げない。
「……」
「……付き合うことになった」
「……」
一瞬、静かになる。
「……」
数秒。
「……」
「そっすか」
軽く言う。
「……」
でも。
その一瞬の“間”は、確かにあった。
「……」
「……」
「……おめでとうございます」
にやっと笑う。
「……」
「……ありがと」
「……」
「……」
紗季が、テーブルに座る。
「……」
「……負けたなー」
ぽつりと。
「……」
その言葉は、軽くない。
「……」
「……でも」
すぐに顔を上げる。
「……」
「アタシ、ちゃんとやりましたからね」
「……」
「……」
「好きって思って」
「……」
「ちゃんと取りに行って」
「……」
「ちゃんと振られた」
「……」
「……だから」
肩をすくめる。
「……」
「別に後悔ないっす」
「……」
強い。
「……」
「……紗季」
思わず名前を呼ぶ。
「名前呼びはキモいっす」
「……うるせえ」
「いつも通りでいいっす」
「……」
少しだけ笑う。
「……」
「……で」
紗季が、じっと見る。
「……」
「ちゃんとやるんすよ?」
「……」
「……中途半端したら」
「……」
「マジで許さないっす」
「……」
冗談みたいに言う。
でも。
目は、真っ直ぐだ。
「……」
「……ああ」
短く答える。
「……」
「……」
紗季が、ふっと笑う。
「……」
「ならいいっす」
「……」
「……」
少しだけ、間。
「……」
「……弓乃先生」
ぽつりと。
「……」
「……めっちゃいい人なんで」
「……」
「……ちゃんと大事にしてください」
「……」
陽斗が、ゆっくり頷く。
「……」
「……分かってる」
「……」
「……」
紗季が立ち上がる。
「……」
「……じゃ、終わりっすね」
「……」
「……終わり?」
「……」
「アタシの恋」
さらっと言う。
「……」
「……」
その言葉が、少しだけ重く残る。
「……」
でも。
「……」
紗季は、笑っている。
「……」
「……次行くだけっす」
軽く言う。
「……」
「……」
ドアの方へ向かう。
「……」
「……あ、そうだ」
振り返る。
「……」
「……最後に一個だけ」
「……」
「……なんだよ」
「……」
にやっと笑う。
「……」
「……アタシの方が可愛かったっすよね?」
「……」
「……は?」
「どうなんすか」
「……」
「……知るか」
「ひど」
「……」
「まあいいっす」
笑う。
「……」
「……負けたんで」
「……」
ドアを開ける。
「……」
外に出る。
「……」
「……陽斗さん」
最後に。
「……」
「……幸せになってくださいね」
「……」
「……ああ」
「……」
紗季が、軽く手を振る。
そのまま歩いていく。
「……」
背中は、まっすぐだった。
「……」
陽斗は、その場に立ったまま。
「……」
小さく息を吐く。
「……」
(……終わったな)
「……」
でも。
「……」
ただの終わりじゃない。
「……」
一つ、ちゃんと終わらせた。
「……」
だから。
「……」
次に進める。
⸻
――終わりは、次へ進むためにある。




