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憧れの漫画家さんが、なぜか僕にだけ距離が近い  作者: 優未緋


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第39話:選ぶということ


「……」


部屋は、静かだった。


時計の音だけが、やけに大きく響いている。


「……」


タブレットの画面。


白いまま。


「……」


ペンは、握っている。


でも。


「……」


動かない。


「……」


(……どうすればいいの)


何度目か分からない問い。


「……」


黒崎の言葉が、浮かぶ。


――選べ


――両方は無理だ


「……」


(……でも)


「……」


陽斗の言葉が、重なる。


――嘘ついて描くよりは、いいと思います


「……」


胸の奥が、少しだけ熱くなる。


「……」


(……どっちも)


「……」


仕事。


恋。


「……」


(……捨てられない)


「……」


ゆっくりと、目を閉じる。


「……」


深く、息を吸う。


「……」


吐く。


「……」


頭の中を、整理する。


「……」


仕事は、大事だ。


ここまでやってきた。


積み上げてきたもの。


「……」


失いたくない。


「……」


でも。


「……」


陽斗。


「……」


あの時間。


あの言葉。


あの温度。


「……」


(……嘘つきたくない)


「……」


その一言に、すべてが集まる。


「……」


目を開ける。


「……」


ペンを、持ち直す。


「……」


「……私は」


小さく、口に出す。


「……」


「……どっちも、やる」


「……」


はっきりと。


「……」


「……逃げない」


「……」


「……落とさない」


「……」


震えている。


でも。


「……」


止まっていない。


「……」


ペンを、走らせる。


「……」


線を引く。


「……」


さっきまでとは違う。


「……」


迷いは、ある。


でも。


「……」


(……いい)


「……」


そのまま、描く。


「……」


感情が、乗る。


「……」


不安も。


迷いも。


全部。


「……」


(……これでいい)


「……」


ペンが、止まらない。


「……」


数十分。


集中する。


「……」


一コマ。


完成する。


「……」


「……ふぅ」


小さく息を吐く。


「……」


(……描けた)


「……」


完璧じゃない。


でも。


「……」


嘘じゃない。


「……」


そのとき。


スマホが震える。


「……」


視線が向く。


「……」


陽斗。


「……」


一瞬、止まる。


「……」


でも。


今度は、迷わない。


「……」


出る。


「……もしもし」


「弓乃さん」


「……うん」


「……今、大丈夫ですか」


「……」


少しだけ、間。


「……大丈夫」


「……」


「……今から、行ってもいいですか」


「……」


その言葉。


「……」


少しだけ、息が止まる。


「……」


でも。


「……」


「……うん」


小さく、答える。


「……」


「……待ってる」


「……」


通話を切る。


「……」


スマホを置く。


「……」


ペンを見る。


「……」


そして。


もう一度、握る。


「……」


(……どっちもやる)


「……」


逃げない。


落とさない。


「……」


その覚悟が、手に乗る。


「……」


線が、揺れない。


「……」


さっきより、強い。


「……」


「……先生」


結衣の声。


「……」


振り向く。


「……」


「……顔、違いますね」


「……」


弓乃が、少しだけ笑う。


「……」


「……決めた」


「……」


結衣が、ニヤッとする。


「……」


「……どっちもっすか」


「……」


「……うん」


「……」


「……いいじゃないですか」


「……」


「先生っぽいっす」


「……」


弓乃が、少しだけ目を細める。


「……」


ペンを動かす。


「……」


もう、止まらない。



――選ぶとは、捨てることじゃない。

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