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憧れの漫画家さんが、なぜか僕にだけ距離が近い  作者: 優未緋


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第35話:揺らがないもの


「……」


夜の街。


少しだけ人通りの少ない道を、並んで歩く。


「……」


弓乃の歩幅に合わせて、陽斗が少しだけゆっくり歩く。


「……」


その気遣いに、弓乃は気づいている。


でも、何も言わない。


「……」


言わなくても、分かる距離。


「……」


「……今日」


弓乃が口を開く。


「……はい」


「……ちゃんと描けてた」


「……」


少しだけ、誇らしげに。


「……」


陽斗が、ふっと笑う。


「よかったですね」


「……うん」


小さく頷く。


「……」


「……でも」


続く。


「……やっぱり、迷いはある」


「……」


正直な言葉。


「……」


「……なくならないと思う」


「……」


陽斗が、少しだけ考える。


「……」


「……なくならなくていいんじゃないですか」


「……」


弓乃が、少しだけ目を開く。


「……」


「……そのまま描けば」


「……」


「……そのまま?」


「……」


「はい」


「……」


「……弓乃さんが今思ってること」


「……」


「そのまま出せばいいと思います」


「……」


言葉は、静かだった。


でも、真っ直ぐだった。


「……」


弓乃が、少しだけ考える。


「……」


(そのまま……)


「……」


今の感情。


迷い。


不安。


でも。


「……」


(……会いたいって気持ち)


「……」


それも、全部。


「……」


「……それって」


小さく言う。


「……」


「……プロとして、どうなんだろ」


「……」


その問いは、重かった。


「……」


陽斗が、少しだけ立ち止まる。


「……」


弓乃も、止まる。


「……」


「……分かんないです」


「……」


正直な答え。


「……」


「……でも」


続ける。


「……嘘ついて描くよりは」


「……」


「……いいと思います」


「……」


弓乃が、少しだけ息を止める。


「……」


「……弓乃さんの作品って」


「……」


「……そういうの、ちゃんと出てるから」


「……」


「……好きなんだと思います」


「……」


その一言で。


時間が、止まる。


「……」


弓乃の目が、少しだけ揺れる。


「……」


「……そういうとこ」


小さく笑う。


「……」


「……ずるい」


「……」


陽斗が少しだけ困った顔をする。


「……」


「……褒めてるつもりなんですけど」


「……」


「……分かってる」


「……」


弓乃が、少しだけ視線を落とす。


「……」


胸の奥が、じんわりと温かい。


「……」


でも。


「……」


(……だから怖い)


「……」


その感情が、大きくなるほど。


「……」


壊れるかもしれない。


「……」


「……ねえ」


弓乃が、ゆっくり口を開く。


「……はい」


「……もし」


少しだけ間。


「……私が、仕事ダメになったら」


「……」


「……どうする?」


「……」


重い問い。


「……」


陽斗は、すぐには答えない。


「……」


少しだけ考える。


「……」


「……そのときは」


「……」


「……一緒に考えます」


「……」


まっすぐな答え。


「……」


弓乃が、少しだけ目を細める。


「……」


「……答えになってない」


「……」


「……すみません」


「……」


「……でも」


続ける。


「……一人で抱えなくていいと思うんで」


「……」


その言葉は、優しかった。


「……」


弓乃が、ゆっくり息を吐く。


「……」


「……ほんと、ずるい」


もう一度。


「……」


でも。


「……」


その顔は、少しだけ笑っていた。


「……」


「……ありがと」


小さく言う。


「……」


風が吹く。


少しだけ冷たい。


「……」


そのとき。


弓乃の手が、少しだけ揺れる。


「……」


陽斗の手も、少しだけ動く。


「……」


触れる。


ほんの少しだけ。


「……」


離さない。


「……」


強く握るわけじゃない。


でも。


「……」


確かに、繋がっている。


「……」


弓乃が、少しだけ息を呑む。


「……」


「……今は」


陽斗が言う。


「……」


「……これくらいで」


「……」


弓乃が、小さく頷く。


「……」


それで、十分だった。



――揺れても、消えないものがあった。

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