表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れの漫画家さんが、なぜか僕にだけ距離が近い  作者: 優未緋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/47

10

第10話:再会の前触れ


――二週間。


会えないまま、時間だけが過ぎていく。


それでも、足は自然とそこへ向かっていた。


仕事が終わる時間。


帰り道。


気づけば、いつものコンビニの前に立っている。


(……今日も、いないか)


分かっているのに、確認してしまう。


――三週間。


来ないことに、少しずつ慣れてきていた。


「……」


ベンチに座る。


誰もいない。


それが当たり前になってきている。


(……来ないのが普通、か)


そう思えば、楽になる。


そう思うようにする。


それでも。


(……会いたいな)


気持ちは、変わらなかった。


――一ヶ月。


それでも、足は止まらなかった。


「……」


コンビニの前。


いつものベンチ。


いつもの時間。


缶コーヒーを買う。


これも、もう習慣みたいなものだった。


プシュッ。


静かな音。


一口、飲む。


少しぬるい。


(……こんな味だったっけ)


味なんて、どうでもいい。


ただ、ここにいる理由が欲しいだけだ。


「……」


空を見上げる。


夜は、変わらない。


でも。


どこか、長く感じる。


(……来ないな)


分かっている。


それでも。


心のどこかで。


(……もしかしたら)


そんなことを、考えてしまう。


「……弓乃さんに、会いたい」


ぽつりと、零れる。


それだけだった。


シンプルで。


どうしようもない、本音。


缶コーヒーを見る。


もう半分以上減っている。


時間だけが、過ぎていく。


(……もう、会えないのかな)


小さく、呟く。


風に、消える。


そのとき。


「――はっ、はっ……!」


荒い息。


足音。


「……?」


顔を上げる。


遠くから、誰かが走ってくる。


かなりの勢いだ。


そのままコンビニの前で止まる。


膝に手をついて、息を整える。


「はぁ……っ、はぁ……っ」


かなり焦っている様子だった。


「……」


少しだけ、様子を見る。


すると。


その女性が、顔を上げる。


目が合う。


「……あれ!?」


突然、声を上げる。


「あなた!」


指をさされる。


「陽斗さんでしょ!?」


「……え?」


一瞬、理解が追いつかない。


なんで名前を?


「……あ、はい」


反射的に答えてしまう。


「やっぱり!」


一歩近づいてくる。


距離が一気に詰まる。


「ちょうどいい!」


「え?」


腕を掴まれる。


「あなたも来て――」


引っ張られかけて。


「……あっ」


急に止まる。


「……やば」


振り返る。


コンビニを見る。


「忘れてた……!」


「え?」


「先に買わなきゃ!」


一気に焦りが増す。


「水!スポドリ!あとゼリーとか!」


「は?」


「それないと詰む!」


「詰むってなんですか!?」


「いいから来て!」


そのまま腕を引かれて店内へ。


「ちょ、ちょっと……!」


完全に流される。


「とりあえず飲み物コーナー!」


スタスタ進む。


「これと、これと……あとこれ!」


ペットボトルを次々カゴに入れる。


「え、これで足りるんですか?」


「足りないかも!」


即答だった。


「ゼリーも!」


「ゼリー!?」


「食べやすいやつ!」


「はいはい……!」


気づけば一緒に選んでいる。


「これとか?」


「いい!」


「これもいきます?」


「ナイス!」


テンポが速すぎる。


「レジ!」


ほぼダッシュ。


「すみません早くお願いします!」


「すごいな……」


思わず呟く。


会計を済ませる。


袋を受け取る。


「よし!」


そのまま外へ飛び出す。


「行くよ!」


「いやだから誰ですか!?」


やっと聞けた。


「詳しい話は後で!」


一切止まらない。


「今それどころじゃないの!」


「いや状況が――」


「先生が!」


その一言で、止まる。


「急な熱で寝込んじゃってて!」


「……先生?」


聞き返す。


「誰だ!?」


「いいから走る!」


ぐいっと腕を引かれる。


「ちょっ……!」


そのまま、走り出す。


夜の街。


コンビニの光が、背中に遠ざかる。


袋の中で、ペットボトルが揺れる。


「は、速っ……」


「急いで!」


「……!」


息が上がる。


でも。


足は止まらない。


(……先生って)


頭の中で、引っかかる。


(まさか――)


嫌な予感と。


期待が、混ざる。


心臓の音が、速くなる。


走る。


ただ、走る。


――再会は、すぐそこまで来ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ