第四十章 接続
空呑稼働まで、八週間。
研究棟。
中央制御室。
いつもより人が多かった。
研究員。
監視担当。
責任者。
誰も余計な言葉を出さない。
今日行われるのは、初回接続試験。
空呑と炉。
初めて繋ぐ。
今までは別々に動かしていた。
炉は炉として。
空呑は空呑として。
それぞれ確認してきた。
しかし。
本来の役割を果たすには。
二つが繋がらなければならない。
遊は監視席から画面を見る。
接続状態。
出力。
温度。
内部反応。
すべて表示されている。
隣には鷹宮。
反対側には玄堂。
ひよりも研究員たちと並んでいた。
いつもの明るさはない。
さすがに、この空気では軽口も出なかった。
「緊張してる?」
遊が小さく聞く。
ひよりが振り向く。
「バクバクしてるよ〜」
即答。
少し間を置いて。
「遊は?」
「してる」
ひよりが少し驚く。
「珍しっ!」
「当たり前だろ」
遊は画面を見る。
「初めて繋ぐんだ」
その返事に、ひよりは少し笑った。
「接続開始」
声が響く。
各部が動く。
炉。
空呑。
接続フィルター。
少しずつ流れが変わる。
数値が動く。
「流入開始」
「第一段階、安定」
「温度変化なし」
報告。
順調。
何かを待っている。
何かが起こるとわかっている。
だから、遊はモニターから目を離さなかった。いや、離せなかった。
炉側。
内部反応。
小さな変化。
『……』
遊が気づく。
「どうした?」
研究員が振り向く。
「何かありました?」
遊は画面を見る。
「いや」
少し間。
「まだ」
炉の声。
小さく。
『あ、きた』
遊が反応する。
「?」
炉は続ける。
『そこにいるんだね』
その瞬間。
空呑の数値が変化した。
今までとは違う。
単なる処理反応ではない。
まるで。
返している。
「空呑、反応変化」
「炉側の波形と同期しています」
制御室がざわつく。
遊は画面を見る。
二つの波形。
別々だったものが。
重なり始める。
炉が小さく響く。
『僕とおなじなの?』
遊は聞く。
「何が。何を言っている?」
少し間。
炉。
『僕ね、ひとりじゃないみたいなんだ』
遊は黙る。
その瞬間。
空呑が初めて応答した。
機械音。
小さな振動。
返事。
言葉ではない。
でも確かに。
炉へ向けた反応だった。
◇
制御室。
誰も声を出せなかった。
二つの
初めて出会った。
そして。
互いを認識した。
遠く離れた場所。
CUYONは静かに目を開けた。
理由は分からない。
ただ。
何かが動いた。
何かが繋がった。
その感覚だけが残った。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。この違和感の正体も、徐々に明らかになっていきます。炉の言った台詞ではなく、その奥にある考え方が今後の世界を変えます。




