懇談
「ではこれにて、本日の講義をおわります。」
講義を受けていた人たちが、一斉に席を立ち、それぞれ教室を出て行く。
アヤメさんも長く黒い髪を揺らしながら、出て行こうとするが、俺は引き止めた。
「すみません、アヤメさん。俺、カール・サヴァンと言います。」
「あぁ、かるさば君ね。シオンさんから聞いてますよ。」
先ほどのきちんとした雰囲気とはかわり、優しいお姉さんのように返事をしてくれる。
「はい、その件でお話ししたいことがありまして。
ダリアという同級生なのですが。」
シオン先輩の失踪、先輩との会話、ダリアについて話すと、彼女は深刻そうな顔つきで相槌を打ち、聴いてくれた。
「ことは深刻ね。
恐らくは彼の研究が原因だと思われるけど。」
やはりか。
「どうやら彼は実験結果は、政府が喉から手が伸びる程ののものみたいで。
けれどもシオンさんはそれを政府が悪用するのではないかと疑っているみたい。
卒業前に愚痴を聞いたわ。役人がしつこいって。」
政府が欲しがっている技術や情報?
政府関係者には校長を合わせて7人の覚醒者がいるはずだ。
事実上、その7人で世界は治められている。
噂では覚醒者は一般の魔術師より、魔力が高く、秀でた力を持つという。
7人で世界を獲ることのできる覚醒者が欲しがるものとは…
危険な匂いがする。
「もし、実力行使に出たのなら、シオンさんでさえ無事か怪しいわ。
また、人質としてこの学園が取られることも考えうる可能性にはあるわね。
そうなると怪しいのが、ダリアって子と、校長ね。
校長は長い間、世界政府本部から帰って来てないから、今のところなんとかなるけど、もし衝突したら勝機はないでしょう。」
「それでは俺はどうしたらいいでしょうか?」
「第一に自身の安全を確保すること。
第二にダリアから目を離さないことね。
私は情報収集にまわるからまた何かあったら声をかけて。」
俺は混乱した。
シオンはいつも、訳のわからないことを言っていたから半信半疑だったが、優等生のアヤメさんが政府は危険だと言ったのだ。
大人しく政府に情報を渡してほしいが、シオンは一度決めたことは必ずやり遂げる人だった。
なんて迷惑な人なんだ。
隠すなら作るなと。
俺にできることは少ない。
とにかく、目の前のことを一つひとつこなしていこう。
それから2週間はすぐだった。
ダリアは変わりなく淡々と演習をこなす。
野外演習チームは無事結成され、あとは出発を待つばかりだった。




