脱出
意外そうな顔で見つめてくるシオン。
「あー、もともとこの魔鉱石作ったの俺なんだよ。」
フリーズする俺の思考回路。
「実験でこんな危ないの作っちゃったからさ、この石でゴーレム創って封印してたんだけどね、どうも石の所有者変わったらゴーレムもいうこと訊いてくれなくなっちゃってさ。」
てへーとか言う。
ふざけんなこのやろう…
死にかけたわっ!!
「ちょっと怒らないでよ、助けに来たじゃん。」
こっちを見て悪びれもせず言う。
「カール君が怒って当然です!!」
うわ、初めて起こるアヤメさん見た。
「ダリアちゃんだって怪我してるし、ルーカス君なんか気を失ってましたよ。」
「いいんだよ、ルーカスは。君がダリアさん?ごめんね、かるさばが頼りないばかりに。」
いろいろひでぇ。
「とりあえずここを出てリナリアちゃんと合流しよう。
みんな俺の手の上に手を置いてね。」
シオンが手を差し出した。
それぞれが手を重ね合わせ、これから試合のあるチームのように円を描いた。
気づけば眩しい陽射しの中にいた。
リナリアが目を丸くしてシオン、アヤメさん、俺を交互に見ている。
ルーカスは柔らかそうな草の生えているところに寝かされている。
「心配したよ。」
リナリアが少し涙を浮かべ、駆け寄って来た。
俺は力不足だった。
先輩たちがいないと今頃全滅していたかもしれない。
ダリアやリナリアだって勇敢に行動したのに。
自分が情けなかった。
なんとか返事をする。
「アヤメさんが来てくれたからもう大丈夫だ。」
「俺は!?」
シオンが嘆く。
「嫌われちゃいましたね。」
アヤメさんがクスっと笑う。
こうして俺たちは初ミッションを無事(?)終わることができた。
だが、不穏な空気を払拭することはできなかった。
なぜ、シオンは今になって現れた?
俺たちの危機に駆けつけただけだろうか。
校長にシオンが捕らえられるのではないか?
ニコルの目的はなんだったのか?
考えれば謎は多い。
あれからシオンは学園の自室を拠点として、たまに訓練の相手になってくれた。
ニコルは魔鉱石を取り上げられたことにより力づくを失い、俺たちを避けて、アヤメさんの監視下ではあるが、なぜか普通に生活していた。
シオンが許したのだろうか、危険だと思うが。
少し前まで疑われていたダリアは、さらに無口になり、ストイックに訓練をこなしていた。
ルーカスは課外演習当日の夜目を覚まし、シオンの部屋へ連れて行かれた。
その日以来ルーカスの姿を見た者はいない。
そんなときだった、校長がこの極東魔術学校に帰還したのは。




