帰還
校長はシオンを捕らえに来たのだろうか。
選ばれし七人の覚醒者の一角であり、史上最高の氷雪の魔術師、通り名は絶対零度、氷の女王など。
実年齢は200歳とも言われているが、覚醒者は不老不死との噂があり、外見は若くモデルのような容姿をしている。
いかにシオンといえども、世界有数の戦力の前には太刀打ちできないだろう。
シオンからは11時頃、校長室に来るよう指示が出ている。
俺は演習でダリアに痛めつけられた右足をかばいながら、校長室のドアをノックした。
そういえば始まりの日もドアを開けたんだっけ。
ガチャ
そこにはシオン、アヤメさん、校長、そしてニコルが揃っていた。
「サヴァン君、君にも話を聴いてほしかったから呼んだんだ。
さぁ、こっちへ来て。」
校長が手招きする。
俺は校長を警戒していたが、警戒したところで校長に勝つことは疎か、逃ることもできないと悟り、諦めた。
俺はゆっくりドアを閉め、輪に加わった。
「今回のミッションご苦労だった、サヴァン君。
詳しくはシオンから聞いたよ。
全ての元凶はシオンにあったようだが…」
横目で校長はシオンを見ているが、
シオンは眠たそうにしている。
「それではニコルさんの言い分を聞こう。
なぜ君は魔鉱石を狙った?
なぜ魔鉱石の存在を知っていたんだ?
今までの経緯を教えて。」
「私は政府のエンジニアとして働いていました。
ところが、エンジニアというのは魔力が弱く、政府の中では地位は最下層です。
政府の主な仕事は世界の治安維持、私は政府の役に立ちたかった。
力が欲しかったのです。
そんなとき耳に入ったのがシオンさんの古代兵器研究の噂。
私は政府には黙って、この学園に潜り込むことにしました。
しかし、シオンさんは卒業していた。
そこでまず私はシオンさんの部屋に押し入ろうとしましたが、結界により入れませんでした。
次に考えたのがシオンさんと仲が良かった人との接触。
これはアリスが上手くいきました。
アリスからはルーカスが、シオンさんの実験台として使われていたことを聞き出し、ルーカスと接触しました。
彼は女の子には口が軽く、すぐに古代兵器の原動力である魔鉱石の在り方を教えてくれました。
ですが、洞窟に行ったところ巨大なゴーレムが二体配置されていて、私の力ではどうにもなりませんでした。
そこで私は野外演習に目をつけました。
ミッションを分配するコンピュータのプログラムを改変し、サヴァンの班の依頼を私を必要とする、魔鉱石のサンプリングにしたのです。
サヴァンが強力なマギであるダリアや、繋がりのあるアリスと交友があるのは知っていましたから。
洞窟ではダリア戦っているとき、1人で魔鉱石の元へ走ったのですが、ルーカスが心配してついてきてくれて、悪いけどもう一体のゴーレムの囮になってもらったんです。
魔鉱石を手に入れてゴーレムをコントロールできるようになったときには既にルーカスは…」
毎度のことながらルーカスが気の毒だ。
と、そんなことよりも、魔鉱石が古代兵器の原動力?
だとしたらシオンの技術は政府をも傾ける力がある。
それで狙われてたのか。
「それで政府はまだ魔鉱石を狙っているの?」
アヤメさんが訊ねた。
「今回はわたしの自己判断でしたが、間違えなく覚醒者はこの力を手に入れようとするでしょう。」
ニコルが答えた。
「特に私の上司、シラーは狡猾な男です。」
疾風のシラー、校長と同レベルの覚醒者だ。
彼は唯一黒い噂の絶えない覚醒者である。
新政府建国時、汚い仕事、つまり、旧国際連合加盟国の要人暗殺、重要施設破壊は主にシラーの仕業であったという。
建国後も現在まで政府にとっての危険因子を刈り取っているらしい、あくまでうわさだが。
「共に戦おう、シオン君、同じ覚醒者として君を歓迎するよ。」




