↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここから  作者: きさら
PR
9/38

第9話 初めての誕生日

恋人同士になってから、少しずつ日が過ぎていった。


繋と過ごす時間は相変わらず楽しかった。


一緒にご飯を食べたり、出かけたり。


恋人になったからといって、何もかもが変わったわけではない。


でも、以前よりも少しだけ特別に感じる。


そんな日々を過ごしていた。


夏の終わり頃。


繋が私の行きたがっていた神社へ連れて行ってくれることになった。


以前から行ってみたいと思っていた場所だった。


「ふーん」って感じの軽い反応だったから、覚えていてくれたのが嬉しかった。


ウキウキで到着!


すると目の前には長い石段が続いていた。


……え?


階段、多くない!?


こんなに階段あるなんて聞いてないよ??


思っていた以上の階段の数に少し圧倒されてしまった。


しかし、せっかく連れてきてもらったんだ!


一念発起して頑張って登っていく。


一段、また一段。


たまに休憩がてら彼の登っている写真を撮る。


……まだあるの?


登っても登っても続く階段。


めちゃくちゃ疲れた。


でも、上の方まで登って振り返った時だった。


「わぁ……綺麗!」


遠くに海が見えた。


高いところから眺める景色はとても綺麗だった。


さっきまで階段の多さにうんざりしていたのに、そんなことも忘れてしまいそうだった。


頑張って登ってよかった。


私は景色を眺めたり、繋の写真を撮ったりした。


気づけば彼の写真をたくさん撮っていた。


綺麗な景色と、大好きな人。


その両方を残しておきたかった。


この日は美味しい海鮮丼のお店にも連れて行ってくれた。


行きたかった神社に行けて、美味しいものも食べられて。


また一つ、繋との楽しい思い出が増えた。


それから少し経った頃。


私の誕生日が近づいていた。


繋と恋人同士になってから、初めて迎える誕生日。


付き合い始めてまだ間もない私たち。


今年はどんな誕生日になるんだろう?


そんなことを思っていたある日。


繋がプリンを買ってきた。


私はプリンが大好きだった。


だからすごく嬉しくて。


好きなものを買ってもらえるって、それだけで幸せだ。


美味しいプリンを食べながら幸せな気持ちになった。


ところがその翌日。


繋からもう一つプレゼントをもらった。


それは深い赤色の革のキーケースだった。


落ち着いた赤色に、ゴールドのボタンが二つ。


私の好きな色だった。


「えっ!?」


思わず驚いてしまった。


だって、そのキーケース。


どうやら1万円以上するものらしい。


……ええっ!?


こんな高いものもらっちゃっていいの!?


まだ付き合って日も浅いのに?


嬉しい。


もちろん嬉しい。


でも、なんだか畏れ多い!(笑)


付き合い始めてまだ間もないのに、こんな立派なプレゼントをもらえるなんて思っていなかった。


でも、どうしてキーケースを選んでくれたんだろう。


そう思っていると繋が理由を教えてくれた。


私が今まで使っていたキーケースが古くなっていたことに気づいていたらしい。


しかも、それだけじゃなかった。


古くなっていても雑に扱わず、大切に使っていたことまで見てくれていた。


だからちゃんとしたものを渡せば、長く使ってくれそうだと思ったのだという。


……そんなところまで見てくれてたんだ。


驚いた。


そして、すごく嬉しかった。


普段の何気ない行動。


自分では特別なことをしているつもりもなかった。


でも、繋はそんなところまで見てくれていた。


ただ高価なものを買ってくれたんじゃない。


私のことを考えて選んでくれたプレゼントだった。


もちろん、値段を知った時は少し恐縮してしまったけれど。(笑)


それ以上に繋の気持ちが嬉しかった。


大切に使おう。


そう思った。


誕生日を目前に控えた夜。


私たちは姉と三人でカラオケに行くことになった。


繋と姉はこの日が初対面だった。


以前、姉には彼氏ができたことを報告していた。


その時の反応は、


「へぇー」


……それだけだった。(笑)


そんな姉が、いよいよ繋と顔を合わせることになったのだ。


まずは姉の家まで迎えに行った。


そして、カラオケに向かう途中でコンビニに寄ることになった。


すると姉が、私にそっと近づいてきた。


そして耳元で小さく囁いた。


「莉衣奈、ごめん。お姉ちゃんこの人無理かも」


……えっ!?


ちょっと待って!?(笑)


コミュ力高いのになんで??


どうやら繋の威圧感が怖かったらしい。


いやいやいや。


まさか姉妹揃って、初対面で同じ感想を抱くなんて。


思わず笑ってしまった。


確かに繋は初めて会う人には少し怖く見えるのかもしれない。


でも、私は知っている。


その見た目とは違って、どれだけ優しい人なのかを。


まぁ、私だけが知ってれば良いけど!


そんなことを思いながら、私たちはカラオケへ向かった。


最初のうちは姉もどこかぎこちなかった。


そりゃそうだよね。


さっきまで「この人無理かも」なんて言っていたんだから。(笑)


でも、お酒が入るにつれて少しずつ雰囲気が変わっていった。


最初の遠慮はどこへやら。


採点ゲームを入れてみたり、みんなが知っている歌を一緒に歌ったり。


気づけば、それなりに楽しい時間を過ごしていた。


……あれ?


お姉ちゃん、さっきまで怖がってなかった?(笑)


そんな姉の変化が、なんだかおかしかった。


繋と姉が初めて顔を合わせた夜。


最初はどうなることかと思ったけれど、三人で楽しく過ごすことができた。


そしてカラオケは、夜通し続いた。


誕生日当日。


前の晩は朝までカラオケをしていたこともあって、この日はゆっくり過ごすことにした。


翌日からは、またお互い仕事が始まる。


だから、誕生日のお祝いはそれまでに全部済ませたような形になった。


大好きなプリン。


深い赤色のキーケース。


姉と繋との初めてのカラオケ。


どれも特別な思い出になった。


誕生日当日に特別な場所へ出かけたわけではない。


でも、寂しいとは思わなかった。


たくさんお祝いしてもらって嬉しかったし。


繋と恋人になってから初めて迎えた誕生日。


思い返してみるとプレゼントをもらったことだけが嬉しかったわけじゃない。


私の行きたがっていた場所を覚えていてくれたこと。


好きな食べ物を知っていてくれたこと。


好きな色を選んでくれたこと。


そして、私が普段から物を大切に扱っていることまで見てくれていたこと。


一つ一つは小さなことかもしれない。


でも、私にとってはどれも嬉しいことだった。


繋は、私のことをちゃんと見てくれている。


そう感じられた。


今までの恋愛では、相手にどう思われるかを気にしてばかりいた。


自分の体型を気にしたり、嫌われないように無理をしたり。


でも、繋と一緒にいる時は少し違う。


好きなものを好きと言える。


嬉しい時には素直に喜べる。


そして、ありのままの私で過ごせる時間が少しずつ増えていた。


まだ恋人になって間もない私たち。


これから先、どんなことがあるのかは分からない。


それでも、こんなふうに一緒に過ごす時間を重ねていけたらいいな。


そう思った。


今年の誕生日は、私にとって忘れられないものになった。


私のことを考えてくれる人が傍にいてくれたから。


彼の誕生日も盛大に祝ってあげようと心に決めた。


――第9話 初めての誕生日 終

お仕事の関係で少しずつでの更新になりそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。