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ここから  作者: きさら
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第8話 恋人になってから

8月13日。


繋と恋人同士になって初めて迎える朝。


昨夜はそのまま彼の家に泊まった。


昨日までと何かが大きく変わったわけではない。


今までも何度も一緒に過ごしてきたし、同じ布団で眠ったことだってあった。


でも、今日は少し違う。


繋は私の彼氏で、私は繋の彼女。


そう思うだけでなんだか嬉しかった。


今日は二人とも仕事がお休みだったから繋の家の近くにあるラーメン屋さんへ行くことにした。


初めて食べたお店だけど美味しかった。


とっても美味しかった。


……あれ?


いつもより美味しく感じる…?


もちろんラーメン自体が美味しかった。


でも、正式に恋人になれたことが影響しているのかも。


そんなことを考えてしまった。


昨日までは曖昧な関係だった二人。


でも今日はちゃんと恋人同士。


一緒にラーメンを食べる。


ただそれだけのことがなんだか特別に感じられた。


恋人になったらラーメンまで美味しく感じるなんて。


……そんなこと、あるのかな?(笑)


食事を終えた後、私は一度自宅へ帰ることにした。


大切な猫たちのお世話をするためだ。


ご飯をあげたり、様子を見たり。


猫たちのお世話は、私にとって欠かせない日課だった。


先日体調を崩した猫のことも、まだ気にかかっていた。


お世話を済ませてから、私は再び繋の家へ向かった。


そして、その日も彼の家に泊まった。


恋人になったからといって、急に何もかもが変わるわけではない。


でも、今までと同じように一緒に過ごせることが嬉しかった。


翌日。


繋と隣県の山へ遊びに行った。


街を離れて山の方へ向かうと、景色は少しずつ変わっていった。


建物が減り、緑が増えていく。


広がる山々。


澄んだ空気。


自然がいっぱいの場所だった。


馬もいた。


そして、山肌には牛が放牧されていた。


普段なかなか見られない光景に、私はすっかり楽しくなっていた。


こんなところに牛がいる!


馬もいる!


自然の中でのびのびと過ごしている動物たちを見るのは楽しかった。


そして私たちは展望台へ向かった。


そこからは周囲の景色を見渡すことができた。


「壮大な景色!」


「こっちに来たらもっと景色良いよ!」


楽しそうな繋に誘われる。


……しかし。


私は高いところが苦手だった。


「私、高いところ苦手なんだよね」


そう繋に伝えた。


すると彼は、展望台の端に向かって走っていった。


えっ!?


ちょっと待って!(笑)


私、高いところが苦手だって言ったよね!?


そんな私をよそに、繋は端まで行ってしまった。


……この人、怖くないの!?(笑)


私は思わず笑ってしまった。


高いところが苦手な私と、平気で端まで走っていく繋。


同じ場所にいても、こんなに反応が違うなんて。


なんだかおかしかった。


目の前には広い空と山々。


自然に囲まれた景色も、そこで過ごす時間も楽しかった。


特別なことをしたわけじゃない。


ただ一緒に出かけて、景色を見て、笑って。


それだけなのに、とても楽しい一日だった。


その後はどこにも寄らず、帰ることにした。


帰り道も、私は楽しかった時間を思い返していた。


翌日は姉とご飯を食べに行った。


姉に彼氏が出来たことを報告するのだ!


つい数日前まで、私自身もこんな展開になるとは思っていなかった。


でも今は繋という恋人がいる。


私は姉に伝えた。


「彼氏ができたんだ」


すると姉はこともなげに


「へぇー」


……えっ?


それだけ!?(笑)


もう少し驚かれるかと思っていたけれど、姉の反応は驚くほどあっさりしていた。


どうやら、あまり興味がなさそうだった。


私にとっては、こんなに大きな出来事なのに。


なんだか拍子抜けしてしまった。


でも、その反応がいかにも自然で、少しおかしかった。


私の中では大きく変わったことも、周りから見れば案外そんなものなのかもしれない。


恋人になってからの数日間。


一緒に食べたラーメン。


猫のお世話を終えて、また彼の家へ向かったこと。


山で見た馬や牛。


展望台の端まで走っていく繋。


そして、姉のあっさりした反応。


どれも特別な事件ではない。


でも、私にとっては大切な思い出になった。


これまでの私は、恋愛のことで悩んだり、自分の気持ちが分からなくなったりすることが多かった。


繋と出会ってからも、ずっと迷っていた。


でも、今は違う。


繋と一緒にいられることが嬉しい。


一緒にご飯を食べることが楽しい。


同じ景色を見て笑えることが幸せだった。


恋人になったからといって、何もかもが急に変わったわけではない。


それでも、私の中では確かに何かが変わっていた。


これからは、恋人として繋と過ごしていく。


まだ始まったばかりの二人の関係。


これからどんな思い出が増えていくのだろう。


そんなことを考えると、少し楽しみだった。


私たちの恋人としての日々は、まだ始まったばかりだった。


――第8話 恋人になってから 終

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