第14話 信じるということ
繋ともう一度付き合うことになった。
昨日はもう二度と恋人には戻れないかもしれないと思っていたのに。
今夜はまた繋の隣にいられる。
嬉しかった。
本当に嬉しかった。
……でも。
それで全部が解決したわけじゃなかった。
繋から元カノの話を聞かされた。
よりを戻すことはなかったけど元カノは東京に相談できる人がいないらしい。
だからこれからも相談に乗って欲しいと言われたのだという。
そして繋はそれを了承したらしかった。
……は?
ちょっと待って。
意味が分からない。
昨日その人とよりを戻したいからって私を振ったんだよね?
その人に振られたから、今日また私と付き合うことになったんだよね?
なのにこれからも相談に乗るの?
正直納得なんてできなかった。
でも。
否定したらまた振られるかもしれない…。
せっかくもう一度一緒にいられることになったのに。
ここで嫌だと言ったらどうなる?
そんなことを考えてしまった。
だから私は受け入れた。
本当はものすごく嫌だった。
嫌じゃないわけがなかった。
それでも繋を失うことの方が怖かった。
その夜。
元カノから電話がかかってきた。
夜中だった。
繋は電話に出た。
私はすぐそばでその会話を聞いていた。
話している内容も。
話し方も。
私にはまるで恋人同士の会話のように聞こえた。
……何これ。
胸が苦しくなった。
昨日私を振った理由になった人。
今日繋を振った人。
その人と今もこんなふうに話すんだ。
私は何を聞かされているの?
一度は受け入れた。
相談くらいなら仕方ないと思おうとした。
でも無理だった。
どうしても耐えられなかった。
私は家を飛び出した。
外に出た途端涙があふれた。
さっきまであんなに嬉しかったのに。
あんなに幸せだったのに。
どうしてこんな思いをしなくちゃいけないんだろう。
昨日あれだけ傷ついたばかりなのに。
また同じ人のことで泣いている。
それが悲しくて苦しくて…
涙が止まらなかった。
しばらくして電話を終えた繋が外へ出て来た。
でも繋には私がどうして泣いているのか分からなかったみたいだった。
……分からないの?
本当に?
昨日元カノとよりを戻したいからって私を振ったのに。
その翌日に復縁して私の前でその人と恋人みたいに話して。
それでどうして私が泣いているのか分からないの?
悲しさだけじゃなく怒りも込み上げてきた。
もう我慢したくなかった。
振られるのが怖くて自分の気持ちを押し殺すのは嫌だった。
私は繋に伝えた。
「やっぱり元カノとは完全に切って欲しい。無理だ」
一度は良いと言った。
でも実際目の当たりにしたら無理だった。
これからも二人が連絡を取り合うなんて私には耐えられない。
繋はようやく私をまた深く傷つけてしまったことに気づいたようだった。
そして元カノとは縁を切ると約束してくれた。
翌朝。
繋は元カノにLINEを送った。
彼女とよりを戻したからやっぱり相談には乗れない。
そう伝えてくれた。
そして私の目の前で連絡先を消してくれた。
ちゃんと行動にしてくれた。
それは嬉しかった。
でも心のどこかには不安が残っていた。
だって前にも連絡先は消していたはずだった。
それでも彼は仕事柄知らない番号からの着信も出てしまう。
もしまた同じことが起きたら?
元カノから電話が来ても誰だか分からずに出てしまうかもしれない。
そしてまた話しているうちに気持ちが戻ってしまったら?
また私が振られることになったら?
考え始めたらきりがなかった。
連絡先を消したからといって元カノから、もう二度と連絡が来ないとは限らない。
そんなことは私にも分かっていた。
だから不安が全部なくなったわけじゃない。
一昨日のことも、昨日のことだってまだ許せていない。
あんな思いはもう二度としたくない。
でも、それでも。
私は繋を信じると決めた。
何も心配がなくなったからじゃない。
もう傷つかないと分かったからでもない。
ただ繋と一緒にいたかった。
そして繋も私のために元カノとの関係を断つことを選んでくれた。
その行動を信じたかった。
信じるってきっと簡単なことじゃない。
少なくとも今の私には。
それでも私はもう一度繋を信じてみようと思った。
不安を抱えたままでも。
昨日までの傷が残ったままでも。
もう一度繋を信じて一緒に歩いていきたかった。
――第14話 信じるということ 終
後はだいたい惚気7割トラブル3割です。




