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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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#94 最後の舞台


衝突した後、大量の土煙が二人を包み込んだ。

土煙が完全に消滅するまで、それほど時間は掛からなかった。


『ふぅ、痛い痛い。思わず右腕で阻止してしまった。』

魔王のベアは、右腕の骨が粉砕し、脱力状態だ。


『本当に恐ろしい男だ。まさか妖刀を腕に宿すとは。咄嗟の判断とはいえ、腕を折った奴は初めてだよ…』


「…それはそれは…嬉しい限りですよ。」


魔王のベアは、声のする方向を振り向いた。


「…なんですかその顔…まさか、勝ったとでも…思ってたんですか。」


土煙の中から現れたアキの両腕は、皮膚が剥がれ落ち、筋肉のみが見えた状態であった。妖刀を腕に宿し、闇の炎を使用したのだ。強大な力ゆえ、魔王のベアも右腕を失ってしまった。


『…本当にしつこくて参るよ。ここまで僕が嫌がる相手は初めてだよ。最初に殺しておくべきだった。』


「…一つ聞きたい…僕が王のベアになってからは、新たなベアを一体も産んでいない。君はいつどこで産まれたんだ。」


『…僕が産まれたのはワッカサン村のシラハマ岬。そこにはベアーズロックという大きな岩があってね。東北で暴れ回っている変異種もその岩から産まれた。それにその岩は、君達ベアーズロック戦闘部隊とも大きく関わりのある場所だよ。だからこんな所に来たって全くの無意味なんだよ。』


「…そいつはどうかな。」


高らかに嘲笑う魔王のベアとは対極に、アキはニヤリと口角を上げた。


「何故僕がしつこく君に付き纏うと思う?」


アキの言葉に魔王のベアは額に皺を寄せ、目を細める。


「足止めだよ。君はまんまと僕達の策略に嵌ったんだ。」


『…策略だ?』


「僕は王のベアだ。君のように強大な力は無いし、妖刀を使って何とか闘えているレベルだ。だけどさ、弱い技も使い方によっては、相手を欺く事は出来るんだよ。」


『…何の話をしているのか分からないな。』


「分からないなら早く行った方が良いんじゃないかな?もうじきゲートが開き、舞台は整う。」


アキはある方向に指を指した。

その方角にあるのは、魔王のベアにとっては明白であった。


不審に思いながらも、魔王のベアはその場から立ち去り、上空移動でエアーズロックへと向かった。


『…何だこれは。』


上空から見下ろした時、ベアーズロック隊員はアキと同じように微笑みながらこちらを見ていた。


エアーズロックとは、周囲約九キロメートル、地上からの高さ約三百四十八メートルの世界最大級の巨大な一枚岩。太陽光により刻々と色を変え、ふもとの散策や周辺の美しいサンセットが特徴的だ。


現在、エアーズロックは真っ赤に染まっている。

その中心部には謎の円状の空間があった。

まるで何かを引き込んでいるかのような。


すると、魔王のベアは何かに気が付いた。


『…貴様らぁぁぁっ!!!』


「あらら、あいつ気付きやがりましたよ。」

「ちょっとアンナ!聞こえちゃうでしょ!」

「ナオちゃん、今更何やっても無駄だよ。アキさんがここまで引き止めてくれたんですし、結果オーライですよ。ね?イケ隊長?」


「あぁ、僕達の闘いは上陸前から始まっていたんだ。」




───数時間前。


上陸前のこと。海上機関車内では、アキがとある提案を申し出た。

「現在、アリスランドには強大な力を持つ何者かが潜んでいるのが分かっている。その敵に迎え撃つ為に必要な条件を考慮しなければならない。でも、上陸してしまえば、血縁者の乗っているこの海上機関車は、最優先で破壊される可能性がある。その為、海上機関車を無人にし、血縁者達を死亡したと錯覚させる必要がある」


そして、その敵をアキが足止めするというのだ。

その間にネブタさんと血縁者の二人は、海中を泳ぎ進み、時計で言う九の方向からエアーズロック近くまで回り込む。同時にベアーズロック隊員達も陸地から五の方向からエアーズロックへ乗り込む。

そして、エアーズロックに辿り着いたら一つの墓を見つけなれけばならない。その墓には禁書が眠っており、伝説の生物【レインボーサーペント】を呼び起こす事が出来ると言われている。群がっている雑魚ベアを討伐しながら、隅々まで捜索した。

そして、墓を見つけたベアーズロック隊員達は、墓穴を掘り起こし、黒い禁書を手に入れた。

黒い禁書を開くと、一ページを除いては全て白紙だ。

唯一記載のあるページ、そこには【レインボーサーペント】を呼び起こす呪文が記載されていた。

そして、古代文字の読めるネブタさん、ずんださん、ベコさんに禁書を託した。

古代文字を提唱した三人は、黒の禁書を地面に置いた。すると、禁書から光が放たれ、伝説の生物【レインボーサーペント】が姿を表したのだ。


『…よくぞここまで辿り着いた。ベアーズロックの過去を覗き、未来を変えるために何年掛かっただろうか。時にはホッカイ島の謎の生物に身を変えた事もあったものだ。積もる話もあるが、まずはこの闘いに終止符を打つのだ。さぁ、このゲートを潜り、最後の闘いに向かうが良い』


それだけを告げ、【レインボーサーペント】は姿を消した。

・・・こうして、現在に至る。


「間に合ったみたいで良かったよ。」

「アキッ!」

「いやぁ、正直ギリギリだったよ。両腕はもう使い物にならないけど、まぁ命があっただけ良かったと思うしかないね。」


アキ、イケ、ユイ、アンナ、ナオ、ネブタ、ずんだ、ベコ、計八名は中心部に浮かぶ円状の空間を見た。その表面は、水が波を打つように小刻みに揺れていた。


「皆、このゲートはワッカサン村のシラハマ岬に繋がっている。そこが全ての始まりであり、ベアーズロックの根源と言っても良い。このエアーズロックも勿論関係はある。【レインボーサーペント】の力無しでは絶対に勝てないからだ。それに現在ワッカサン村には、キリ達がいる。彼女達の功績のお陰とも言っていい。」


アキは王のベア。

全てのホウジンゾクやベアの位置を特定し、何処にいても透視する事が出来る。言わば、千里眼のようなものだ。

全てを見通す能力により、アキはキリの動きを読みながら行動に移す事が出来たのだ。

そして、仲間を招集し、海上機関車を上手く利用した。


そして、見事アキとキリの功績により、ワッカサン村のベアーズロックとエアーズロックを異空間での移動が可能となったのだ。


全てはアキのシナリオ通り。

魔王のベアは、都合の良いように掌の上で転がされていたのだ。

それを察した魔王のベアは、冷酷な眼でアキを見下ろしていた。


「さぁ行こうか。最後の舞台へ。」


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