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第24話 小さな魔物と、フォルの威嚇


ガサッ!!


草むらを掻き分け、小さな影が飛び出した。


「――きゃっ!?」


リナが反射的に短剣へ手を伸ばす。


だが。


飛び出してきたのは、想像していたような大型魔物ではなかった。


それは。


丸かった。


灰色のふわふわ毛玉みたいな身体。


長い耳。


くりくりした赤い目。


だが口元には鋭い牙が覗いている。


「……ウサギ?」


カイが瞬きをする。


リナは警戒したまま頷いた。


「ホーンラビットよ。見た目は可愛いけど、一応魔物」


よく見ると額に小さな角が生えていた。


ホーンラビットは、こちらをじっと見ている。


そして。


ぴくぴく。


視線がフォルのリンゴへ向いた。


「……あ」


次の瞬間。


ぴょんっ!!


ものすごい勢いで突撃してきた。


狙いはリンゴ。


「キュル!?」


フォルがびっくりして飛び退く。


ホーンラビットはその隙にリンゴへ齧りついた。


しゃくしゃくしゃく。


夢中で食べ始める。


静寂。


リナがぽかんとする。


「……え、それだけ?」


ホーンラビットは完全にリンゴしか見えていなかった。


「キュルゥ……」


フォルが悲しそうな声を出す。


取られた。


大事なおやつだった。


耳までしゅんとしている。


「フォルのだったもんね」


カイが慰めるように撫でる。


すると。


ホーンラビットがぴたりと動きを止めた。


しゃくしゃく。


ゆっくり顔を上げる。


目が合った。


ワイバーン。


しかも竜種。


今さら気づいたらしい。


「…………」


「キュル」


フォルも見返す。


数秒の沈黙。


そして。


「ピギャアアアアアッ!!?」


ホーンラビットが飛び上がった。


ものすごい勢いで毛を逆立てる。


完全にパニックだった。


「キュ、キュル!?」


逆にフォルがびっくりする。


ホーンラビットは後ずさる。


だが。


途中で尻もちをついた。


慌てすぎて転んだらしい。


リナが吹き出した。


「なにしてんのよあいつ……」


ホーンラビットは震えながらフォルを見ている。


小さくなっていても、格上の魔物だと本能で分かるのだろう。


フォルは困ったようにカイを見上げた。


「キュル……?」


どうしよう、みたいな顔だった。


するとカイは旅バッグをごそごそ探る。


「はい」


取り出したのは、さっき市場で買ったリンゴ。


ホーンラビットへ差し出す。


「食べる?」


リナが目を丸くした。


「いや普通あげる!?」


ホーンラビットも固まる。


恐る恐る近づく。


ちらっ、とフォルを見る。


フォルは。


「キュル!」


なぜか得意げだった。


完全に「許してあげる」側になっている。


ホーンラビットはおそるおそるリンゴを受け取った。


しゃく。


食べる。


ぴたっ。


止まる。


それから。


「……ピィ」


目を輝かせた。


美味しかったらしい。


尻尾がぴこぴこ動き始める。


「懐いた!?」


リナが思わず叫ぶ。


ホーンラビットは完全に警戒を解いていた。


むしろフォルの周りをぴょこぴょこ跳ね始めている。


「キュル?」


フォルもまんざらじゃなさそうだった。


その光景を見ていた近くの旅人がぽつりと呟く。


「……なんか魔物使いみたいだな、あの兄ちゃん」


リナは遠い目をする。


「違うんです……本人は普通に接してるだけなんです……」


その時だった。


ガサ、ガサガサッ!!


今度はさっきより大きな音が森の奥から響いた。


リナの顔が真剣になる。


「……今度は違う」


空気が変わった。


フォルもぴたりと動きを止める。


小さな翼がわずかに開く。


ホーンラビットは一瞬で草むらへ逃げ込んだ。


そして。


木々の奥。


暗い森の影から、低い唸り声が聞こえた。


「グルルルル……」

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