第104話 市場歩きと、不思議な視線
「でも確かに歩きやすくなったな」
レオンは修復された石畳を軽く踏みながら笑った。
周囲の人々も、
最初は驚いていたものの、
綺麗に整った道を見ると普通に感心している。
「すげぇな兄ちゃん……」
「職人並じゃねぇか」
「いや職人でもここまで綺麗に揃わんぞ」
そんな声が聞こえてきた。
カイは少し首を傾げる。
「普通じゃないの?」
「普通じゃない」
リナとエルミナが同時に即答した。
ティアは小さく笑っている。
そのまま市場を歩いていくと、
段々と人通りが増えていく。
中央市場に近づいているらしい。
乾燥肉。
保存果実。
旅用の水袋。
露店には色んな物が並んでいた。
「お、これ便利だぞ」
レオンが手に取ったのは、小型の保温水筒だった。
「簡易保温術式入り」
「半日は温度保つ」
カイが少し見る。
「……術式効率悪い」
「え?」
店主が固まった。
カイは水筒を見ながら続ける。
「熱が逃げる方向ずれてる」
「内側の循環薄い」
数秒の沈黙。
店主の顔が変わった。
「な、なんで見ただけで分かる!?」
「流れ見えるから」
「見える!?」
レオンが吹き出す。
「始まったな」
リナはもう慣れ始めていた。
「これ絶対ガルドと会わせちゃダメなタイプよ」
「いやむしろ会わせるべきじゃろ」
ベルクが笑う。
その時だった。
カイが水筒の内側へ軽く指を向ける。
「循環調整」
淡い光。
次の瞬間。
内部術式の流れが静かに変わる。
店主が目を見開いた。
「なっ……!?」
水筒の表面から、余計な熱漏れが消えている。
術式効率が明らかに変わっていた。
「これで多分長持ちする」
店主が固まる。
「…………」
「…………え?」
リナが頭を抱えた。
「勝手に改良しないの!」
「便利になった」
「そういう問題じゃないのよ!」
だが店主は次の瞬間、
「いやありがてぇぇぇぇ!?」
ものすごい勢いで頭を下げた。
「長年ズレてた部分そこだったのか!!」
「すげぇ……魔導技師か坊主!?」
カイは少し困った顔になる。
「違う」
「旅人?」
「多分」
「多分!?」
市場の一角で、
また少しだけ人だかりが出来始めていた。
エルミナが遠い目をする。
「……まだ市場入って十分くらいですよね?」
「今日は平和な方じゃ」
ベルクが普通に答えた。
その時。
レオンがふと前方を見て足を止める。
「……あ」
「ん?」
そこにいたのは、
見覚えのある赤髪の青年だった。
貴族風の軽装。
少し鋭い目。
そしてこちらを見た瞬間の、
露骨に嫌そうな顔。
「……なんでお前らがいる」
アルトだった。




