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第98話 研究院食堂と、最高効率の料理


 研究院区画の奥。


 一般生徒用とは別に作られた専用食堂は、まるで高級レストランみたいだった。


 静かな空間。


 落ち着いた照明。


 魔導冷却で管理された食材棚。


 そして、妙に広い。


 リナが周囲を見回す。


「えっ、食堂っていうか高級店じゃない?」


「研究員は泊まり込みも多いからな」


 ラウフェンが答える。


「食事環境はかなり重視されている」


 カイは少しだけ周囲を見ていた。


 だが。


「……いい匂い」


 興味は完全にそっちだった。


 レオンが笑う。


「お、機嫌直ったな」


「最初から悪くない」


「はいはい」


 ティアは嬉しそうにメニューを見ている。


「わぁ……種類いっぱいあります……!」


 エルミナが説明する。


「研究院側は栄養管理も兼ねていますので」


「長時間研究する方が多いですから」


 すると。


 奥の厨房から、一人の壮年男性が出てきた。


 白い調理服。


 腕まくり。


 そして、妙に威圧感がある。


 リナが小声で聞く。


「……料理人?」


「研究院専属料理長だ」


 ラウフェンが普通に答える。


「元宮廷料理人」


「なんで食堂にそんな人いるの!?」


 料理長はじっとカイを見ていた。


 その視線に、レオンが嫌な顔をする。


「……また始まるぞ」


「?」


 カイは分かっていない。


 料理長が静かに口を開いた。


「君が、“例の少年”か」


「またそれ?」


 リナが呟く。


 料理長は真顔だった。


「副学院長から連絡が来た」


「“絶対に食事環境を妥協するな”と」


 エルミナが目を閉じる。


「本当に徹底してますね……」


 ラウフェンは遠い目だった。


「国家中枢が睡眠と食事を最適化し始めている……」


 料理長は腕を組む。


「好き嫌いは?」


 カイは少し考える。


「不味いのは嫌」


「それは全員そうだ」


 即答だった。


 レオンが吹き出す。


 料理長は少しだけ笑った。


「なるほど」


「面白い子だ」


 そして。


「今日は特別に、研究院上位用コースを出そう」


 周囲が少しざわつく。


 エルミナが驚いた。


「えっ、あれですか?」


「ああ」


「普段は論文功績上位者しか食べられん」


 リナが引く。


「なんなのこの食堂……」


 カイは普通に聞く。


「美味しい?」


「保証する」


「ならいい」


 即答。


 そして数分後。


 料理が運ばれてきた。


 焼きたての白パン。


 香草スープ。


 魔獣肉の低温焼き。


 色鮮やかな温野菜。


 さらに、魔力回復を兼ねた特殊果実飲料。


 ティアが完全に目を輝かせる。


「すごいです……!」


 リナも普通に感動していた。


「え、なにこれ……本当に学院?」


 カイは静かに料理を見る。


 そして。


 一口。


 少し止まる。


 周囲が妙に静かになった。


 研究員たちまで見ている。


 レオンが呆れる。


「なんで全員見守ってんだよ」


 ラウフェンは真顔だった。


「重要案件だ」


「食レポが?」


「副学院長案件だ」


 その時。


 カイがぽつりと言った。


「……美味しい」


 空気が変わった。


 料理長が静かに拳を握る。


「よし」


 研究員たちがなぜか安堵する。


 リナが笑い始めた。


「なんでみんな安心してるのよ!」


 ラウフェンは真面目だった。


「居心地を損ねていない確認は重要だ」


「方向性がおかしいのよこの国!」

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