24 氷巫女VS鷲の眼(鷲の眼)
24 氷巫女VS鷲の眼(鷲の眼)
鷲の眼はフォレスト山の頂で、祖国の滅亡を知り、怒りで顔を歪めていた。
忘れもしない陽炎との戦いでの傷が完全に癒えた途端にこの悲劇である。
それなりに頭が良く勘の良い鷲の眼は氷巫女の仕業だと瞬時に見抜いた。
フォレスト山の頂からは、彼の祖国である獣人族の国『ビーストキングダム』が一望できる。
しかし、悲しきかな。彗星のような光弾が降り注ぎ、祖国は瞬く間に滅亡してしまった。
――氷巫女……我の故郷を良くも!
鷲の眼は静かに怒りと憤りを滾らせる。Aランク相応の彼の怒りのエネルギーは、
周囲に振動を伝わらせるほどであった。彼は無論、このまま泣き寝入りはしない。
完全に傷が癒えた彼はすぐさま行動を起こす。氷の居城へと襲撃を企てるつもりだ。
勿論、Aランク相応の彼が、伝説級レベルMAXの氷巫女に敵う道理はない。
だが、彼には勝算が少しあった。鷲の眼が腰に差している剣……灼熱の剣である。
伝説級-の宝剣だ。かつて獣人族の王から、直々に賜った剣。氷属性の氷巫女にダメージが通るのだ。
この剣さえあれば伝説級である氷巫女を相手取れるのだが、一つ気気がかりな存在があった。
それは彼が人種の強者と称えている陽炎の存在……彼は間違いなく立ちはだかるだろう。
それと、氷巫女の取り巻き共も侮れない。考えると尚更、絶望が過る。
AランクレベルMAXである彼でさえ、伝説級には程遠いのだ。
研鑽を積んできて天空王の称号を得たが、持ち得る才能の違いに辟易とする。
氷巫女……そして陽炎。自分より格上の強者は沢山いる。果てが見えない。
それでも女神の使徒として氷巫女と相対する運命は覆せないのだ。
鷲の眼は翼を広げて、氷の居城へと飛び去る。彼の飛行性能は素晴らしく、
圧倒言う間にコールドアースの中心へと飛来した。翼を畳んで、降り立つと、
取り巻き共が、警戒して無表情で構えている。氷巫女が使役するサイボーグだった。噂は聞き及んでいる。
仮面を被り漆黒のいで立ちで無機質な印象を受ける機械人間……鷲の眼はステータスを閲覧する。
ランク A-
種族 機械人間
レベル 67
アタック 850
ディフェンス 775
スピード 900
通常スキル
『破壊の太刀』『神速の太刀』『念動力』『ライフドレイン』
『パワードレイン』『ブラスターキャノン』『体力自動回復』『自己再生』
称号スキル
『氷巫女の下僕』『氷の居城の番人』『選ばれし民』
ステータスをざっと見て鷲の眼は絶句した。A-ランク……。
自分より、ステータスは幾らか低いが、それでも並の相手なら無双出来る数値だ。
だが、事ここに及んで鷲の眼は腹を括っている。迷いを捨て自慢の爪牙で一気に攻め立てた。
決死の覚悟を以てして臨む鷲の眼の渾身の一撃はA-モンスターである機械人間を容易く屠った。
本人でも自覚はしているが、怒りに燃える今は実力以上の力を発揮しているのが分かる。
この勢いで超越者の間へと駆け上がるのだ。鷲の眼は超速で氷巫女の取り巻きを蹴散らしていく。
氷の居城に存在する人種は、人種の概念で言えば、全員不気味な程、容姿が整っている。
獣人族である鷲の眼でも人種の美醜もある程度は分かる。氷巫女はイケメンが余程好きなのであろう。
そう言えば見事な戦いぶりを見せていた敬意を払うべき存在の陽炎も驚くほど、容姿が整っていた。
イケメンの人種を自慢の爪牙で八つ裂きにしながら、氷巫女のふざけた価値観に疑問を浮かべていた。
城門を突破し、城内へと足を踏み入れる。ここに至るまでに沢山のイケメンの人種を屠った。
城内でもイケメンの人種が、ワラワラと湧いて出る。全て、氷巫女の趣味なのであろう。
取りあえず、鷲の眼は氷巫女のコレクションであるイケメンの人種達のステータスを閲覧する。
名前 アーク
ランク B+
種族 人種
レベル 100
アタック 870
ディフェンス 906
スピード 680
通常スキル
『自己再生』『超回復』『ホーリー』『闇払う剣戟』
称号スキル
『氷巫女のコレクション』『超イケメン』『最終レベル到達者』
ステータスを見てまたもや絶句する。イケメンで腕の立つ者も中には入る。
B+のレベルMAX……中々の強さだが、Aランクの自分の敵ではない。
鷲の眼はB+の氷巫女のコレクションを軽々と爪牙で貫いた。先は長い。急がなければ。
螺旋階段を駆け上がり、真っ直ぐに最上階にある超越者の間へと辿り着いた。
超越者の間は想定していたように彼女好みな様相となっている。
厳かでありつつも女性らしく華やかな様相……幾万の人々の頂点に君臨する氷巫女が、
怒りを滲ませた表情で玉座に座り、佇んでいた。その隣に敬意を払うべき好敵手……。
陽炎が氷巫女の凄まじい怒りを敏感に感じ取って、そわそわしていた。
「忌々しき女神の使徒……良くも私のイケメンコレクションをお釈迦にしてくれましたね。
長い時を掛けて集めたコレクションが、汚らわしい獣人族によって全滅。
私の怒りを感じ取れるでしょうか? 私は今、かつてない程、怒りで高ぶっています」
氷巫女が、静かに玉座から立ち上がる。かつてない程、怒りの様相を呈している。
初めて相対する、コールドアースの支配者。鷲の眼は、純白に輝く髪色の少女を見つめる。
純白の髪色は目を見張る程美しく、爛々と輝く鮮やかな赤い眼は人を傅けるものだった。
そして雪のように白い肌を紅潮させている。彼女の怒りを押して図ることが出来た。
これが……この弱そうな小娘が、あの氷巫女だと言うのが俄かには信じられなかった。
取りあえずステータスの確認を行う。きっと、ぶっ壊れステータスなのを予感させた。
名前 キサラ
ランク 伝説級
種族 フォレスト
レベル 100
アタック 9999
ディフェンス 9999
スピード 9999
通常スキル
『破壊』『超再生』『体力自動回復』『魔力自動回復』『超回復』『超速』『氷結』『究極反応』
『クリスタルレイン』『コールドレイン』『ショックウェーブバースト』『氷塊』『氷柱』
『転生の儀』『異世界移動』『異世界創造』『瞬間移動』『時空間移動』『衝撃波』
『武器生成』『洗脳』『ダークサモン』『ミラーバリアー』『念話』『未来予知』
『変身術』『不老の加護』『スキルコピー』『スキル付与』『万能感知』『氷分身』
称号スキル
『超越者』『聖女』『大魔王』『世界を制する者』『選ばれし者』『最終レベル到達者』
『預言者』『女神を封印せしもの』『フォレスト族の長』『一種のバグ』
『炎竜を従えしもの』『氷の支配者』『世界を滅亡せしもの』『液体金属』
氷巫女を睨んで、鷲の眼はステータスをチェックしたが、思ったより化け物だった。
生半可な火力では勝てないと悟った。伝説級のステータスを前に鷲の眼は怯えて震えていた。
余りにも格が違い過ぎる。伝説級-の陽炎を手下の様にできる力は凄まじかった。
そして名前と雰囲気が、遠い昔に出会ったフォレスト族の少女……サラと似ていた。
同じフォレスト族だからか、鷲の眼は硬直していた身体の緊張を解いて、言葉を放つ。
「氷巫女……その名前、あのフォレスト族のサラとどういう関係だ?」
「さっきから睨んでいると思ったら、あらあら……私のステータスを見たのですね?
良いでしょう……陽炎様の前ですし、この際、秘密を言いましょうか。
そうです。私の本当の名前はキサラ。何を隠そう、サラは私の子孫なのです。驚いた?」
氷巫女の衝撃的な発言が超越者の間に響き渡る。彼女の傍らにいる陽炎も驚いている。
「氷巫女、それは本当なのか? 俺の妻……サラは氷巫女の子孫」
陽炎は何処か、虚ろな表情をしていて氷巫女を見つめている。
彼の熱い視線を感じた氷巫女は、やれやれと言った表情を醸し出す。
「陽炎様……呆けるのは勝負が終わってからですよ。
目の前の汚らわしい獣人族にどのような苦痛を味合わせましょうか。
一思いに消滅させるのは容易いですが、この獣人族は私の自慢のコレクションをお釈迦にした。
それは許しがたき事です。そうだ! 私のスキル『変身術』で、虫けらに変えて差し上げましょう」
氷巫女は彼女からは想像もできない邪悪な笑みを浮かべ、左手をかざす。
対して、小馬鹿にされた鷲の眼は怒り心頭に達し、腰に差している灼熱の剣を抜き、
氷巫女に超速で迫る。しかし、遅かった。淡い光が彼女の手から、漏れ出し、
鷲の眼の全身を包んだ。鷲の眼は体に異変を感じ、身体が急速に縮んでいく。
鷲の眼は自分の身体を見つめて驚愕する。自分の身体が、小さなコバエに変えられている事に気付く。
馬鹿な……と声に出そうとしたが、声が出ないことに気付く。
――こんなことが……!
「貴方はこれから永久に羽虫として生きるのです。
私の魔力が途絶えない限り永遠です。私の前から失せなさい……虫けらさん」
氷巫女の邪悪な微笑み……鷲の眼は最早、抗うことは出来ない。
嵌められた。自分は永久に羽虫として生きるのだ。鷲の眼は絶望に目の前が真っ暗になった。




