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23 煌めく彗星と隣国の滅亡(陽氷)

 23 煌めく彗星と隣国の滅亡(陽氷)



 獣人族の国『ビーストキングダム』は東の大国『クナ王国』と隣接する小規模国家である。

 歴史は浅く、十代前の獣人族の長が、各部族を纏め、剛腕を持って建国した国。

 その国に何処からか、降って来た彗星のような煌めく眩い光の玉が、飛来する。

 それは夢の景色のような何とも言えないものだった。

 かつて滅びたフォレスト族特有の深い深緑の髪をした少年が、

 二つの国の国境付近に位置する村の外れで、その幻想的な光景を眺めていた。

 彼の名は陽氷(かげひょう)他でもない今代の剣神であり、氷巫女の使徒である陽炎の息子である。

 陽氷は今年で十歳になる。母はフォレスト族の族長が娘、サラ。

 陽氷はフォレスト神王国が滅んだ時、陽氷は母であるサラと共に、

 父の幼馴染であり、クナ王国が誇る大将軍、詩花に保護され、父の親族と共に暮らしてきた。

 父の生家である陽家は代々将軍を輩出する武の名門であり、父も一時的には守護騎士団長であった。

 直系である陽氷はそのことから、周囲の親族より、クナ王国貴族に恥じない器となれと教わって来た。

 父は……超人的であったと聞く。若くして剣神を継承し、王都の守護騎士団長として、

 Bランクモンスターでさえ、素手で完封できる程の武の力があったという。

 都での政争に嫌気が差し、王都を離れた。そして紆余曲折の末、フォレスト族の王となった。

 その後、父には統治能力が欠如していたようで、彼の建国した国は五年とたたずに滅亡してしまった。


 ――陽炎……僕はお前を許さない!


 静かな復讐の炎を心に灯す。母譲りの深緑の髪に、

 父の面影を残した端正な顔立ちの陽氷は皮肉にも陽炎を毛嫌いしていた。

 優れた力を持ちながら、成すことは何事も中途半端だ。

 挙句の果てには滅亡に瀕したフォレスト族を見捨てて自分だけ逃げた。

 何故、父はその超人的な力でフォレスト族を守らなかったのか。幼き頃より、陽氷は疑問に思い続けていた。

 そして陽氷も、貴族としての暮らしに耐えられなくて周囲の反対を押し切り、旅に出た。

 その旅の目的は父である陽炎をこの手で始末することである。

 そんなこんなで旅立った陽氷であったが、二つの国との境で幻想的な光景に出くわしたのである。

 その彗星が、獣人族の国に降り注いだ。降り注いだ刹那――凄まじい鳴動と震動が伝わるのを肌で感じた。


「これは……こんなことが……」


 凄まじい爆発音とともに大地が軋み、地揺れが巻き起こる。

 その数十秒後には、獣人族の国は跡形もなく見事に更地となったのである。

 陽氷は誰よりも賢く、それが自然災害の類ではないことに一早く気が付いた。


「もしや……陽炎が、氷巫女と示し合わせて何かしたのか?」


 賢い上に勘の良い陽氷は、誰よりも早くその見解に辿り着いた。

 だが、あくまで勘でしかない。しかし、氷巫女は伝承によると伝説級相応と言う。

 彼女の力ならば、容易であろう。伝説級相応とは人知を超える力を持つ。


「僕は勝てるだろうか……陽炎に、そして氷巫女に……」


 陽氷は更地となった獣人族の国であった場所を当てもなく進む。

 今の自分では陽炎の足元にも及ばないであろう。だが、最終的には陽炎も氷巫女も纏めて消す。

 そう固い決意を胸に抱いて道なき道を進んだ。全ては復讐の為に。

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