↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/32

21 剣神陽炎の旅路

 21 剣神陽炎の旅路



 紆余曲折あり、二十五歳となった陽炎だが、見た目は十代半ばである。

 十分な静養を行い、すっかり体力が依然と同様に戻った陽炎は氷の居城を旅立った。

 折角、出会えた氷巫女と別れるのは名残惜しいが、これも自分と彼女の為だ。

 氷巫女の使徒として、身を粉にして彼女の役に立たなければならない。

 氷巫女は陽炎にある任務を託した。その任務とは、彼女が太古の昔、

 彼女が封印した本来は世界の中心として崇められる存在だった女神の使徒の一人を始末する事。

 女神が封印されているとはいえ、女神の使徒は依然としている。

 そう言った存在が彼女を脅かすのだと言う。二つ返事で陽炎は引き受けた。

 そして、氷の居城に別れを告げ、大地に広がる雪原を踏破する。

 気配感知能力で女神の使徒の居場所を割り出すことが出来る。これは陽炎の能力だ。

 陽炎はあの王国が滅亡した悪夢の日より、様々な力に目覚めた。

 その一つが気配感知能力。この力を使えば対象を割り出すのは造作もない。

 女神の使徒の名は鷲の眼(わしのめ)というらしく。鳥系の獣人族だと言う。

 雪原一帯に感知能力を張り巡らせる。一キロ先に反応が現れた。

 陽炎は、鷲の眼との決闘前に、念には念を入れ、配下の陽炎三人衆を呼ぶ事にした。

 陽炎三人衆とは、陽炎だけに仕える配下であり、好きな時に呼び出せることが出来る。


「我が最強の配下達よ、今ここに結集せよ!」


 陽炎は天に手を掲げて、三人衆の到来を今か今かと待っていた。

 そして三分後、瞬間移動のスキルで、陽炎三人衆は大雪原に降り立った。


「陽炎三人衆が一人、『最速の剣』ガリア参陣!」


 長髪で、研ぎ澄まされた体つきの剣士……何処か不真面目なガリア。


「陽炎三人衆、『雷神の剣』! ライウーン、推参!」


 金髪で筋肉隆々の大男、ライウーン。


「三人衆……『五月雨の剣』、スコールです」


 最後に最年少と思われる黒髪色白の美少年剣士が、最後に口上を述べた。

 陽炎三人衆が一堂に集うことなど、かつてあった事が無い。

 それ程、今回の得物は大きいと言う事だ。予てより超人的な陽炎は単独で攻めても良かったが、

 他でもない氷巫女からの依頼……手を抜くことはあってはならない。

 陽炎は全身全霊を掛けて、女神の使徒を始末する気なのだ。全ては氷巫女の為に。

 そして一堂に会した四人は意思疎通を図った後、真っ直ぐに目標に近づいた。

 女神の使徒は、陽炎を待ち構えていた。氷巫女が言っていた通り、鳥系の獣人のようだった。

 立派な翼を携え、爪牙を持ち合わせている。初めて見る獣人族に陽炎の心拍数は上昇する。


「氷の巫女の使徒どもか……雑魚の寄せ集めでないことを祈る」


 鷲の眼が、そう呟いた刹那――三人衆ライウーンの首が飛んでいた。

 切断された首が、陽炎の足元に転げ落ちた。ライウーンは戦闘開始早々にその生涯を閉じた。

 爪牙で、目にもとまらぬ速さで切断したのであろう。早くも陽炎は三人衆の一人を失ってしまう。

 だが、まだ配下は二人残っている。案ずることは無い。ライウーンは三人衆最弱……。

 三人衆の面汚しだ。陽炎は目線で、隣のガリアに指示をする。

 陽炎の意を汲み取ったガリアは何の迷いもなく死地へと向かう。

 それを泰然として鷲の眼は構えている。ガリアの超速の剣戟が、鷲の眼の首を刎ねようとする。


「むっ! 固い……!」


 ガリアの剣戟を以てしても鷲の眼の首を刎ねることは出来ない。


「所詮は人種……この程度か。がっかりしたぞ。もういい、死ね」


 鷲の眼は首に突き立てているガリアの得物であるAランク級の宝剣を掴み、粉々に粉砕する。

 そしてガリアの腹を爪牙で容赦なく貫く。辺りに鮮血が飛び散り、ガリアは呆気なく絶命する。

 残った三人衆最後の一人、五月雨の剣のスコールを爪牙で豆腐の様に切り裂き、

 三人衆はあっと言う間に全滅した。三人衆は全員、人外クラスの達人達だった。

 それを軽々と相手取り、瞬く間に一瞬で仕留めた恐るべき力の神髄に、陽炎は驚愕の色を隠せない。

 この世界でも稀有な獣人族の鷲の眼……女神の使徒の獣人の余りの強さに陽炎は呆然とする。


「驚いたぞ……獣人種とは、ここまでの強さなのか」


 陽炎は部下全員倒されて、暫く、唖然呆然とする。後は自分一人……。

 初めて相対する獣人族の底力に陽炎は素直に賞賛し、驚嘆する。強者を尊ぶ陽炎の矜持だ。

 例え敵であろうと、素晴らしい所があれば、素直に褒める。陽炎の美徳であった。

 覚悟を決めた陽炎は、腰に差している剣を久方ぶりに抜く。黒い刀身の魔剣。

 氷巫女から旅立ちの時に貰った品だ。何でもこの世に一振りしか存在しない伝説の魔剣らしい。

 元々B+級モンスターを素手で粉砕する凄腕の達人である陽炎が、

 国宝級の伝説の魔剣を装備しているのだから、負ける道理が無い。


「ほう……人種の癖に素晴らしい剣を持っているじゃないか。

 欲しい! 貴様を屠り、その剣を貰い受けるぞ!」


 鷲の眼は目を爛々と輝かせ、陽炎の持つ煌びやかな伝説の魔剣を見つめている。

 無論、こんな獣人族如きに渡すつもりが無い。そもそも陽炎と相対する等自殺行為である。


「俺に挑むとは自殺志願者か? それとも相手の実力が分からぬ程、間抜けなのか?」


 陽炎は不敵に鷲の眼を言葉巧みに挑発する。鷲の眼は怒りを滾らせ陽炎に突進する。

 見える……鷲の眼の動きの全てがコマ送りに見えるのだ。陽炎の超人的な動体視力。

 陽炎はサッと鷲の眼の爪牙を軽々と躱し、一撃を叩き込む。

 鷲の眼は全く動じず、反撃の機会を伺う。成程、防御力の高さは獣人族故か。

 そこで一拍置いて、陽炎は新たに得たスキル、ステータス閲覧を行使した。



 名前 鷲の眼

 ランク A

 種族 獣人族

 レベル 100

 アタック 1200

 ディフェンス 1800

 スピード 2100


 通常スキル


『衝撃波』『地獄の爪牙』『飛行』『フィジカルUP』『体力自動回復』

『剛腕』『超再生』『オートバリアー』『自動修復』『超速』

『究極反応』『トルネード』『天空の光弾』『ストームレイン』


 称号スキル


『天空王』『猛禽類』『人外』『女神の代行者』『最終レベル到達者』



 ステータスを確認して陽炎は驚きの余り絶句した。何だ、このステータスは……。

 これが獣人族であることも考慮しても、初めて見る恐るべき数値だった。

 数値を眺めて成程、これならB+相応の三人衆では荷が重いのも頷ける。

 破壊の使徒以外で初めて目にするAランク相応に陽炎は驚愕した。ちなみに陽炎はA+ランク相応だ。

 一段階、陽炎の方が、ランク的に勝っているが、持っているスキルのアドバンテージが大きい。

 陽炎よりも良いスキル沢山抱えていらっしゃるようだ。だが、陽炎とて人外。

 負ける道理はない。一瞬で決める。陽炎は意気込んで、鋭い踏み込みで、鷲の眼の間合いに入る。


「剣神の剣戟『両断の太刀』!」


 陽炎は間合いに入った刹那――怒りを伴う気迫を込めて鷲の眼を一刀両断する。

 どれだけ防御性能に優れていても、A+ランクの陽炎の渾身の一撃を受けて無事で居られるはずがない。

 ランクの差は大いに意味を持つのだ。しかし、両断された身体が、間髪入れずに瞬時に再生していく。

 再生できないよう身体を縦に斬り割いたのに、再生機能が働くとは陽炎は大誤算であった。

 そして元通りに再生を果たす。『超再生』のスキルの賜物であろう。

 この修復機能は恐るべきものだった。だが、今まで息一つ乱れていなかったのに、

 再生を無事に終えた鷲の眼は肩で息を吐いて、荒々しく呼吸をする。体力まで戻すことは出来ないらしい。


「思ったより、中々やるではないか……。

 Aランク相応の我をここまで追い詰めたのは、お前が初めてだ。誇るが良い」


 鷲の眼が、息を荒くさせながら、陽炎の健闘を褒め称えたような口ぶりをする。

 まだまだ敵さんは余裕がおありの様だ。しかし、それは陽炎とて同じ。

 何を隠そう伝説級-である炎竜形態を温存しているからに他ならない。


「空中戦と地上戦……どちらがお好みだ?」


 陽炎は余裕綽々でAランク相応の戦士、鷲の眼を見据えて問いかけた。


「我は空中戦に置いては無敵。天空王の称号スキルを持っているからだ」


 鷲の眼は不敵に笑い、今まで閉じていた茶色い翼を広げ、空中に旋回し、陽炎を見下ろす。

 陽炎はニヤッと笑って、浮遊スキルで浮かび上がる。第二ラウンドが始まりを告げる。

 最初に仕掛けてきたのは天空王の称号スキルを冠する鷲の眼であった。

 茶色い翼を大きく広げて羽ばたいて、全てを飲み込む激しい竜巻を発生させる。竜巻が陽炎に迫る。

 恐らくトルネードのスキル……空を使った大規模なスキルは少々厄介だった。

 陽炎は咄嗟に火炎剣で竜巻を切り裂く。そして間髪入れず、鷲の眼に距離を詰める。


「我のトルネードを強引に切り裂くとは流石だな……。

 だが、我の最強の技を受けるがいい。『天空の光弾』!」


 鷲の眼の周囲に八つの光の玉が生み出される。それぞれ神々しい光を帯びて、陽炎に向かう。

 陽炎は初見で防ぐのは理と判断、敢えて無防備に全ての光弾を受ける。

 至近距離で被弾した陽炎の肉体はボロボロに崩れる。地上に激突して陽炎は瀕死に陥る。

 洒落にならない程、凄まじい威力だった。ランク的に格上の陽炎ならば耐えられたが、

 それ以外の者が受ければ致命傷となり、あの世行きであろう。流石は天空王、一筋縄ではいかない。

 空中戦においては伝説級と比類ない。鷲の眼……この獣人は下手したら、氷巫女に匹敵するでは。

 陽炎は大きく息を吐いて深呼吸をする。遂に陽炎は本気を出すことに決めた。

 大地を揺るがす凄まじい鳴動が、辺りの静寂を破る。陽炎の肉体は膨張していき、真紅の翼が悠々と生える。

 固い鱗が全身を覆い、竜の形を模していく。呆気なく変身を完了させた。伝説級-の炎竜形態である。


「……変身だと?」


 鷲の眼は目を丸くして驚愕の色を浮かべる。只でさえA+級の敵が、

 伝説級-モンスターである炎竜に突如として変身を遂げたのである。

 それは即ち、自らの敗北を意味する。見る見る内に余裕の色が消え失せ、鷲の眼は青ざめていく。

 だが、強者としての矜持か、恐れと共に楽しみを見出した表情で陽炎を見つめている。


「フン……! 面白い! 強者を屠るのは我の最大の喜び」


 鷲の眼は大空を滑空して、爪牙を炎竜と化した陽炎の鱗を突き刺そうとする。

 だが、爪牙は空を切る。巨体に似合わぬ俊敏性は異常とも言えた。

 陽炎は鷲の眼の右腕を握りつぶして粉砕した。そして翼を強引に引きちぎる。

 これで鷲の眼を空中戦から引きずり下ろした。相当なダメージを負っているので、

 すぐに翼を生やすことは出来ないだろう。陽炎は口から灼熱の息を吐き、鷲の眼を丸焼きにした。

 さながら、巨大な焼き鳥のように盛大に燃え盛る。大火傷を負った鷲の眼は遂に崩れ、事切れた。

 倒れた鷲の眼を確認して、陽炎は人間形態に戻り、とどめを刺そうとするも、

 天空王の称号の名に恥じない見事な戦いぶりに敬意を持った陽炎は命を奪う真似はしなかった。

 本末転倒だが、強者を尊ぶ陽炎の矜持が、それを許さなかったのだ。

 氷巫女……彼女の逆鱗に触れてしまうかもしれない。

 突如、悪寒が全身を蝕む……氷巫女は、この瞬間も陽炎の一挙手一投足を見ているのだ。

 彼女の深い怒りが、肌で伝わってくる。だが、迷いを振り切り、その場を飛び去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。