20 氷の居城
20 氷の居城
陽炎は真紅の竜の力の制御を覚えながら、氷の居城へと辿り着いた。
世界の中心まで竜の姿で、休まず飛び続けて世界の中心にある氷の居城に辿り着いた。
氷巫女とその使徒たちが大勢で出迎えてくれた。陽炎は心身ともに疲れ果て、
竜の姿から元の人間形態に戻った。ふら付いて倒れそうになったのを氷巫女に支えられた。
液体金属で出来ている氷巫女が陽炎に触れれば、ドロドロに溶けてしまう。
それでも構わず、氷巫女は懸命に陽炎を抱えながら、氷の居城に腰を下ろした。
陽炎をソファーに寝かせて、氷巫女は陽炎の前で佇んでいた。陽炎は意識が次第に鮮明になり、
横になりながら、出迎えてくれた氷巫女に感謝の礼を述べる。
「氷巫女……すまない。君には迷惑をかけてばかりだな」
謝罪し、陽炎は苦笑した。氷巫女は献身的な姿勢を崩さない。
陽炎は氷巫女の真実を知ってしまった。それでも彼女を無下にするつもりは毛頭ない。
氷巫女にも何かしらの事情があるに違いないと前向きに捉えつつあった。
「陽炎様は知ってしまったのですね。私の真実を……」
「ああ、だが、君にも理由があるのは分かる。何かしらの葛藤があったに違いない。
俺はそう思っている。この世には根っからの悪人など存在しない」
「有難う……」
陽炎の言葉に氷巫女は安堵した表情を造る。さて、これからどうするか……。
国も滅ぼされて、陽炎は追われる身だ。二度と故郷の土を踏めないのだ。
それは何とも悲しい現実だった。フォレスト族の口車に乗せられて王になったのが良くなかった。
陽炎自身も国王に成れと言われて、浮足立っていたのが悪かったのだ。
「陽炎様の今後について話しましょう。貴方様は最早追われる身。
なれど、この私の使徒に成れば、罪は帳消しに成ります。
私の使徒にお成りなさい。私の使徒として、活動する方針を固めて下さい」
氷巫女は追われる身となった陽炎に使徒になる提案を受けた。
陽炎は一瞬、戸惑いつつも、一考して氷巫女の使徒になることを決めた。
「……分かった。これからは使徒として生きよう」
陽炎は今後の方針を固め、暫しの休息に入った。途端に眠気に襲われて、目を閉じる。
完全な眠りに入る前に、陽炎は今までの出来事を走馬灯のようにコマ送りにして振り返る。
今思えば、色々な出来事があった。元服して守護騎士団長に成り、国王にまでなった。
我ながら激動の人生と言えよう。だが、陽炎の物語は、まだまだ終わりではないのだ。
転生した頃より憧れの存在である氷巫女……彼女に仕える人生も悪くないかもしれない。




