16 新国家建国
16 新国家建国
陽炎は知ってしまった氷巫女の悪逆非道を。最早、彼女は信頼に値しない。
これからは誰にも頼らないで生きていくのだ。氷巫女は自分を騙していたのだ。
そう思うと、氷巫女への憎悪が湧き上がっていく。彼女を許しては置けない。
祭壇の間を去り、族長の家に舞い戻った陽炎は自分の正体を明かした。
自分が、転生者である事。火を自在に操る人外であること、氷巫女と決別したことを報告した。
族長は陽炎の言葉に大いに驚いていた。だが、暫しの沈黙の後、族長はとんでもないことを言い出した。
「陽炎様、貴方様が火を自在に操ると聞いて天の啓示だと感じました。
フォレスト族の伝承で、火を操る英雄を国王に祭り上げ、
国家を建国すれば、フォレスト族の繁栄は永久に続くと。
陽炎様、今こそ建国の時です。陽炎様には私の娘を娶り、王位について頂く」
族長は捲し立てる。陽炎はその言葉を聞き、暫し考えを巡らす。
自分が……転生前は冴えないオタクだった自分が国王として君臨する。
夢物語だ……だが、それは甘美な魅力を秘めていた。堂々とサラを妻とすることも出来る。
実は陽炎は氷巫女に対する想いが覚めた直後、サラへと気持ちが移り変わるのを感じていた。
その気持ちは偽りではない。サラを妻とし、建国し国王として国を統治する。
正に王者の醍醐味だ。フォレスト族の者達は陽炎が国王となるのを盛大に歓迎していた。
「何故、火を操る者を尊ぶのですか?」
何気ない質問だ。見事な返答を期待する。何と答えるであろうか。
族長は毅然とした声音で口を開いて言葉を吐く。
「それは氷巫女の弱点が火だからです。陽炎様ならば氷巫女も怖くはない。
氷巫女を滅ぼす為の建国なのですから、陽炎様が全フォレスト族を束ねてください。
私は宰相として陽炎様の補佐をします。だから、国王として我らをお導きください」
「微力ながら、国王に就任させていただきます」
陽炎は集落の中央にある広場にて族長を始め、フォレスト族の全員に顔出しを行い、頭を下げた。
この日、全フォレスト族の面々が湧いた。新国家の建設に皆が浮足立つ。
東の大国から独立し、フォレスト山一帯を領土とする一大国家が、ここに誕生した。




