15 フォレスト族と氷巫女の罪
15 フォレスト族と氷巫女の罪
フォレスト族の村に着いた陽炎は族長に面談し、サラを無事に引き渡した。
サラは感激した様子でお礼の言葉を並び立て感謝の礼をして族長に引き取られていった。
陽炎は暫く、この集落に滞在することにした。陽炎はフォレスト族の恩人なのだ。
無下にされる理由はない。陽炎は旅をいったん中止して小休止した。
宿屋に止まり、店主に金貨を数枚渡し、一番いい部屋に泊まった。
冷蔵庫完備でクーラーもある。中世的な異世界だと思っていたら、そうでもないらしい。
陽炎は王都でしか暮らしておらず世情に疎い。サラから何か聞いてみようとは思う。
この世界の成り立ちを陽炎は知りたかった。無論、氷巫女が悪なのか善なのかを追求する目的もある。
フォレスト族の村は深い森にある。新緑の民と異名が付かれていて外界とは隔絶されている。
そもそも通常の人族とは異なる容姿だ。長い耳に深い深緑の髪と眼。見目も良い者が多い。
転生した陽炎もイケメンだが、フォレスト族の男子と比べたらそこまで差異はない。
宿屋で一夜を明かした陽炎は集落の外れにある族長の家に尋ねた。無論、サラと会うためだ。
「よく来たな恩人……我が娘サラを助けてくれて礼を言うぞ」
「いえ、騎士として当然のことです。お気になさらず」
厳格な面持ちで族長のグリーンが、感謝の礼を述べた。陽炎は一礼し、礼儀正しくした。
最初の第一印象はとても大切なのだ。統計学的にも云々……いや、それはないか。
陽炎は族長を前にして緊張を催した。厳格な声音と皺の刻まれた壮年の族長は圧倒される。
やはり、サラと同じく深い緑色の髪と眼をしている。親子だと頷けるほど、彼女らは似ていた。
仲睦まじい父娘のようだ。二人して寄り添いあっている。無理もない、離れ離れの生活を送っていたのだ。
陽炎はいろんな思いを抱えながら、族長に視線を送る。族長は息を吐いて口を開いた。
「お前が、氷巫女の使徒だとの噂は本当か?」
「それは……確かに俺は氷巫女に好意を寄せて居ります。
しかしですね。氷巫女を毛嫌いする理由をサラから聞きましたが、荒唐無稽でね。
氷巫女は全知全能なる神だと考えております。彼女が大罪人だとは正直思えない……」
陽炎は思いの内を吐露した。彼女が悪者に仕立て上げられるのを見過ごすことは出来ない。
氷巫女はいつだって自分を見守ってくれた。それは今でも変わらず。
その為ならば族長のグリーンを論破することも厭わない。全ては氷巫女の為だ。
「氷巫女は悪の化身だ。女神様を封じて我が物顔で振る舞う悪女なのだ。
私の言葉が信じられないならば、祭壇の間に行くがいい。そこで氷巫女の悪行が知れ渡るのだ」
族長は怪訝な顔をして氷巫女の悪口を言った。陽炎は許せなかった。
だが、族長の言葉通り、祭壇の間へ行けば何か掴めるかもしれない。
陽炎は急ぎ足で集落の奥にある祭壇の間へと足を運んだ。祭壇の間は厳かな雰囲気に包まれていた。
何か儀式的なことがこの祭壇で執り行われているのは確かなようだ。
だが、それは詮無い事……氷巫女について探る為には祭壇の間の奥深くに行くしかない。
装飾が散りばめられ、厳かな祭壇の間へと上がった陽炎は意識が飛んだ。
そして意識が暗転し、場面が切り替わる。これは……昔のフォレスト族の集落。
――氷巫女の面影を残した女……あれが、過去の氷巫女?
氷巫女と思われる女は緑色の髪と眼をしている。やはりフォレスト族の娘だったのだ。
女はフォレスト族の他の面々から崇拝されている。異端な女だと蔑まれる様子はない。
むしろ、女神様の力に近づいた存在とされ、畏怖と尊敬を勝ち得、一族を率いていた。
しかし、彼女は祭壇の間で佇む女神様……現在の氷巫女にそっくりな少女。
女は虚を突いて女神様を怪しげな魔術で封印してしまった。
そして女の姿が現在の氷巫女と同じ姿に変貌した。それを確認して彼女は満足し、
フォレスト族を皆殺しにした。親兄弟までも手を掛けるその冷徹ぶりは想像できなかった。
再び意識が暗転し、陽炎は意識を取り戻した。見てしまった、氷巫女の大罪を……。




